山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

「草の葉」精神のイノベーション

2016-12-13 20:44:03 | 読書
 尊敬する作家の高尾五郎さんからコンパクトなミニコミ誌が届いた。
 開けてみる『三百年かけて世界を転覆させんとする日記』という表題がついていた。
 奥付がないので発行者・発行日・作者などがわからないところから妖怪さがさらに迫ってくる。
 しかし、18日分の日記がエッセイ風だがみずみずしい言葉で綴られているのに驚く。

                            
 内容は、クリント・イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」の映画批評から始まる。
 東北大地震と原発の被害者に寄り添った叫び・怒り。
 オイラもちょっぴり話したことがある高畠町の星寛治さんの詩への賛辞。
 女流日本画家の秋野不矩(フク)が生み出した絵画の革新性。
 日本の英語教育への異議申し立て。
 イギリスのナショナルトラスト運動の歴史と意味。

          
 表題の「転覆」という過激な挑発で読者の注目を引かせ、「三百年かけて」という言葉で安心を与える。
 そのくらいの志で平和ボケした現代日本の現実と対峙していくという意思表明でもある。
 この日記に流れる精神は、宮沢賢治を彷彿とさせるホイットマンの「草の葉」の息づかいが伝わってくる。

                              
 さらには、有島武郎のもつ白樺派の芸術と自然と働く人への崇敬が思い出された。
 いやそれ以上に『農民哀史』の労作を上梓した百姓・渋谷定輔に近い大地の匂いが放たれる。

 最近の芥川賞・直木賞など奇をてらったテーマや文章が少なくないなか、大地に根付いたヒューマンな世界を拓いた作品がない。
 マスメディアや文学界も大地を忘れた楼閣で目先の出来事に追われている。
 手づくりのこのミニコミ誌に込められた叫びが300年かけなくても受け入られる社会が来ることを願わずにはいられない。
 
 
 

コメント
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