山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

歌舞伎とスケートとの競演『氷艶』

2017-05-22 21:04:53 | アート・文化
 歌舞伎とスケートとの画期的なコラボが始まった。
 この企画に娘がしっかり関わっていた関係でチケットをひょっこり入手。
 生まれて初めてのスケートショーを直接見ることになる。

                               
 知り合いとともに会場の代々木体育館に行くが、歩く人の行き先が同じなのがすでに異次元の道。
 ここでオリンピック・内外のスポーツ大会・コンサートが行われてきた日本の世界の最前線に踏み込む。
 自分の立ち位置が土と雑草と汗にまみれた農的世界から突然バーチャルな魔界に転生してしまうことになる。

      
 開演直前にはぎっしり観客が位置につく。
 圧倒的に女性が多い。それも熱烈な高橋大輔フアン。
 高額なチケットからエンターテイメントの巨大な市場に動く金銭の迫力を想う。
 100円で野菜が売れるかどうか一喜一憂するミクロな世界ではない。

                               
 それだけにバーチャルな世界は、大枚をはたいた顧客を満足させるかどうかの厳しさがある。
 高橋大輔や荒川静香のスケーティングと初挑戦の演技はさすがに圧巻だった。
 そこにはメダリストのたゆまない努力の裏付けが表現されていた。
 また、体育館の天井から氷上までの空間をすべて駆使した市川染五郎の演出感覚の柔軟さも見逃せない。

      
 正面の幕は、定評のあるチーム「Lab」のプロジェクション演出の創造の舞台でもあった。
 それは登場人物の心象風景だったり、場面の変換だったり、それは氷上でさえも映し出された。
 しかも、世界的な和太鼓集団「DRUM TAO」の非日常的リズムが半球体を支える空間と呼気に炸裂する。

                                  
 そうしたこれでもかという染五郎のサービス精神と既成概念を破壊する創造力とが縦横に仕掛けられる。
 それによって、歌舞伎とスケート界との初めてのコラボが止揚されていく。

 現役を引退したスケーターたちもこのコラボをきっかけに新しい道を発見できたに違いない。
 十代が主流になってきたスケート界にとっては選手引退後の身の振り方が喫緊の課題でもあったのだ。
 観客を充分満足させた「氷艶」は、歌舞伎を変革してきた挑戦者たちと瞬間に生きてきた氷上の演者たちとの魂の賜物であり出発点でもあった。


    
コメント (2)
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