水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景(第六話) ブロンズ・ウイーク  <推敲版>

2010年02月04日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      春の風景

      
(第五話) ブロンゼン・ウイーク <推敲版>                     

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 居間 昼
   日曜の昼。長椅子に座りゴルフのクラブを磨く恭一。台所で料理をする未知子。
  正也M「毎年のことながら、ゴールデン・ウイークが近づいた。この場合のゴールデンは、僕達
子供に対してではなく、サラリーマンの一
       部大人に限ってのみ有効な、云わば、贔屓
(ひいき)言葉ではあるまいか。夏休みのような連続ではなく、祝祭日と日曜の休
       み
が多い…だけで、金には届かないブロンズぐらいに思える」

○ メインタイトル
   「春の風景」

○ サブタイトル
   「
(第六話) ブロンゼン・ウイーク」

○  同  昼   
   クラブにワックスを塗って磨き続けるゴルフの腕前が今一の恭一。グリップを握って光が射す庭側へ透かし、照り具合を見ながら、
  恭一  「去年は渋滞で難儀したからなあ…。今年は遠出は控えるか…。ETCの値引きで、
恐らく高速は滅茶、混むんじゃないか?
       (台所の方へ首を向け)」

○ 台所 昼
   炊事場で料理をする未知子。食卓テーブルの椅子に座って新聞を読む正也。
  未知子「ええ…。私もそう思うわ(居間を見て)」
   恭之介が離れから台所へ入る。
  恭之介「なんだ? 偉く賑やかじゃないか。何か、いいことでもあったのか? 恭一(居間を見
て)」

○ 居間 昼   
   怖いものを見た…という目つきで恭之介をチラッ! と見る恭一。出来るだけ怒らせまいと、ゴルフのクラブを一心に磨き、やんわりと、
  恭一  「いえ、そうじゃないんです、お父さん。連休の遠出はやめようか…と、未知子と話してた
んですよ」

○ 台所 昼
   食卓テーブルの椅子に座って新聞を読む正也。正也の隣の席へ座る恭之介。
  恭之介「ほぉ…。儂(わし)とは関係ない世界の話か…(卑屈になって)」
  正也M「僕は、何とかその場の雰囲気を和らげようと、健気(けなげ)にも画策した」
  正也  「僕は、どうだっていいよ…。じいちゃんと遊ぶから」
  恭之介「そうだな、正也! じいちゃんと遊ぼう(不機嫌な顔から俄かに笑顔となり)」
  正也M「僕のひと言はクリーン・ヒットとなり、センター前へ転がった。じいちゃんが俄かに元
気を取り戻したのだ」
  恭之介「よし、正也。じいちゃんの離れへ来い! 美味い菓子をやろう(笑顔で、機嫌よく)」
  正也  「うん!(愛想よく、釣られた振りをして)」
   椅子を立つ二人。離れへ向かう二人。

○ 離れ 昼
   広間(道場仕立ての間)へ入る二人。中央祭壇の刀掛けに飾られた大小二刀。側板の上
に飾られた『銃砲刀剣類登録証』の額(が
   く)。警察の表彰状の額。剣道師範免許状の額。
部屋隅に置かれた菓子折りから菓子を取り出す恭之介。菓子を正也に手渡す恭之
   介。
  恭之介「なっ! 武士に二言はないだろうが(笑って)」
  正也  「…(意味が分からず、笑って無言で受け取り)」
   刀に打ち粉をする作務衣、袴姿の恭之介。菓子を頬張り、その様子を傍らに座って観る正
也。
  正也M「じいちゃんは微笑みながら刀に打ち粉をして紙で拭く。これこそ武士のゴールデン作
法だ…と思いつつ僕は見ていた。じいち
       ゃんの禿げ頭が蛍光灯の光を浴びて金色に
輝く。じいちゃんとの休みは、正しくゴールデン・ウイークとなりそうで、決してブロ
       ン
ズではないだろう」

○ エンド・ロール
   道場仕立ての部屋に飾られた表彰状等の額。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景(第六話) ブロンゼン・ウイーク」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖③》第二十一回

2010年02月04日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖③》第二十一回
更にもう一つ、神前で打つ柏手の音の響きが少し変化したのだが、これも一斉に行われる集団の中では、各自が自らの挙動に懸命で、誰も気づく、いや、気づける訳がなかった。
 そして、そういった日々が続いていった。
 幻妙斎からの沙汰を伝えるべく、影番役を仰せつかっている樋が井上にその旨を話している。厨房で賄いの準備をする左馬介へ、偶然、その話が聞こえてきた。それによれば、今年はどうも新入りがいないらしい。そのことは、後日、左馬介以外の者にも報告された。今年だけという限られたものならいいのだが、こうした状況が続けば、数年後には門弟が消え去る可能性を示唆した。事実、鴨下を最後として左馬介が堀川を旅立つ頃に道場は閉ざされるのだが、それは扠置き、新入りが来ないのだから今年も鴨下との組稽古か…と、左馬介は意気消沈していた。だが反面、そうした心を咎(とが)める心が有った。実は、その心が左馬介の新たな技を育む原動力になるものであった。左馬介は、そのことに未だ気づてはいない。
「そうか…。ということは、今年も鴨葱と左馬介だな」
「ああ…まあ、そうなる」
 井上と樋口の話が続いている。


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