水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第十話) 昆虫採集  <推敲版>

2010年02月22日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景

      
(第十話)昆虫採集 <推敲版>          

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

○ 子供部屋 朝
   机に向かい、夏休みの宿題をしている正也。蝉の声。手を止め、窓向こうの庭を見遣る正
也。
  正也M「まだ当分は残暑が続きそうだ。でも、僕はめげずに頑張っている。夏休みも、もう残り少な
い」
   畑から恭之介が帰ってくる。手に西瓜を持つ恭之介、麦わら帽子を頭から取り、木の枝に吊
るす。笑顔で西瓜を撫でる恭之介。出来の
   いい西瓜と恭之介の頭。双方ともに、太陽光線を
受けて、眩しく光る。思わず噴き出す正也。子供部屋に響く正也の大笑いの声。そう
   とは知
ずに西瓜の出来に満足そうな笑みを湛える恭之介。T 「0」→「09」→「09:」→「09:0」
→「09:00」(SE[タイプライター
   で打ち込む音])

○ メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第十話) 昆虫採集」

○ 洗い場 昼
   水浴びを終え、離れに向かう正也。

○ 離れ 昼
   洗い場から離れに入る正也。
  正也M「昼過ぎ、いつもの昼寝の時間がきた。この時間は決して両親や、じいちゃんに強制
されたものではない。自然と僕の習慣とな
       り、小さい頃から慣れのように続いてき
た。だが、この夏に限って、じいちゃんの部屋だから、我慢大会の様相を呈している
       
(◎に続けて読む)」
   恭之介の部屋へ入る正也。いつもの場所で眠り始める正也。T 「1」→「14」→「14:」→
「14:1」→「14:10」(SE[タイプライター
   で打ち込む音])
   
正也の寝顔。
   O.L

○ 離れ 昼
   O.L
   正也の寝顔。
   熟睡する正也の少し離れた所で熟睡する恭之介。T 「1」→「15」→「15:」→「15:0」→
「15:00」(SE[タイプライターで打ち込む
   音])
  正也M「今日は、どういう訳か、じいちゃんの小言ブツブツや団扇バタバタ、がなかったから、
割合、よく眠れた」
   O.L

○ 離れ 昼
   O.L
   目覚めて半身を起こす正也。両腕を伸ばし欠伸をする正也。少し離れた所で熟睡する恭之
介。T 「1」→「15」→「15:」→「15:4」
   →「15:40」(SE[タイプライターで打ち込む音])

○ 玄関 外 昼
   麦わら帽、水筒、長靴姿の正也。昆虫採集網を持って走り出る正也。聞こえてくる未知子の注
意を喚起する声。T 「1」→「16」→「1
   6:」→「16:1」→「16:10」(SE[タイプライターで
打ち込む音]) 
  [未知子] 「帽子かぶったぁ~! 熱中症に気をつけなさい!」
  正也  「はぁ~~い!(戸を閉めながら、可愛く)」
   やや離れた日陰の洗い場に見えるミケとポチが涼む姿。心地よく眠るミケ。身を伏せた姿勢
で目だけ開け、『このクソ暑い中を、どこ
   へ行かれる…』という目つきで、出かける正也を見
守る少しバテぎみのポチ。
  正也M「四時前に目覚めた僕は、朝から計画していたクワガタ採集をしようと外へ出た」

○ 雑木林 昼
   慣れたように雑木林に分け入る正也。数本のクルミの木。半ば朽ちたクルミの木の前で立
ち止まり、木を見上げる正也。T 「1」→
   「16」→「16:」→「16:3」→「16:30」(SE[タ
プライターで打ち込む音]) 
  正也M「虫の居場所は数年前から大よそ分かっていた。夜に懐中電灯を照らして採集するの
が最も効率がいいのだが、日中も薄暗い
       雑木林だから、昼の今頃でも大丈夫だろう
と判断していた」
   木を眺めながら、クワガタを探す正也。草むらがザワザワと動く。ギクッ! と驚いて草むら
を見遣る正也。姿を現す恭之介。
  正也  「じいちゃんか…。びっくりしたよぉ(安心して)」
  恭之介「ハハハ…驚いたか。いや、悪い悪い。母さんが虫除け忘れたからとな、云ったん
で、後(あと)を追って持ってきてやった。ホ
       レ、これ(虫除けを示し)」
   正也の首に外出用の虫除けを掛けてやる恭之介。
  恭之介「どうだ…、いそうか?」
  正也  「ほら、あそこに二匹いるだろ(木を指し示し)」
  恭之介「いるいる…。わしも小さい頃は、よく採ったもんだ」
   恭之介の話を無視して動き出す正也。
  正也M「じいちゃんには悪いが、昔話に付き合っている訳にもいかないから、僕は行動した」
   静かに木へ近づき、やんわりと虫を掴む正也。その虫を籠の中へポイッと入れる正也。
  恭之介「正也、その朽ちた木端(こっぱ)も取って入れな。そうそう…その蜜が出てるとこだ」
   恭之介の云う通り、樹液で半ば朽ちた木端を取り、虫籠へ入れる正也。雑木林に響く蝉し
ぐれ。

○ とある畔道 昼
   とある田園が広がる中の畔道を歩く帰宅途中の恭之介と正也。T 「1」→「17」→「17:」→
「17:0」→「17:00」(SE[タイプライタ
   ーで打ち込む音])
  恭之介「なあ正也、虫にも生活はある。お前だって、全く知らん所へポイッと遣られたらどうす
る。嫌だろ? だからな、採ったら大事に飼
       ってやれ。飼う気がなくなったら、元へ戻
してな…」
  正也M「じいちゃんの云うことは的(まと)を得ている」

○ 台所 夜
   食卓のテーブルを囲む四人。夕食中。T 「1」→「19」→「19:」→「19:0」→「19:00」(S
  
E[タイプライターで打ち込む音])
  恭之介「ははは…、正也も、なかなかやるぞぉ~」
  恭一  「そうでしたか…(小笑いし)」
  恭之介「お前の子供の頃より増しだ」
   しまった! と、口を噤(つぐ)んで下を向く恭一。
  正也M「じいちゃんは手厳しい。父さんは返せず、口を噤んで下を向いた。今年の夏が終わろ
うとしていた」
   SE[タイプライターのチーン!という音])

○ エンド・ロール
  湧水家の夜の全景。
  テーマ音楽
  キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第十話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第十一回

2010年02月22日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第十一回
「寂しくなりますね…」
「ははは…。今迄でも充分に寂しいではありませんか。それにな云い方ですが、各日いないということは、逆に考えれば各日は
いる、ということです」
「あっ! そうでした。それはそうです…」
 話が途切れ、二人は同時に笑い出した。久しくなかった笑声が厨房の中に響いて谺(こだま)した。鴨下も長谷川と同じく、それ上は深く訊かなかった。それも道理で、左馬介が道場から消えてしまう…とうことはないのだ。ただ、日々見られた顔が各日となるのは、どうしようもない。その程度なのだから、長谷川や鴨が深く追究しない訳である。当然、左馬介がいない日は、師範の長谷川も立って観ていることは出来ず、下手な鴨下組稽古をしな
ければならない。そのことは分かっている二人である。
 事も無げに梅見の宴も終わった。そして十日ばかりが瞬く間に流れ、幻妙斎の云った月初めが巡った。左馬介は二人に告げることなく早暁の暗闇に出立した。妙義山までは堀江道場から平坦路で五町ばかりだが、山の麓(ふもと)から登山道を歩めば、思いのほか時を要することを左馬介は知っている。以前、他意もなく漠然と登りたいと思え、そうしたこともあった。


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