水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景(第七話) 美味いもの  <推敲版>

2010年02月05日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      春の風景
      
(第七話)美味いもの <推敲版>         
 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 玄関 内 朝
   晴れた日。旅行に出る恭一と未知子。テンションが上がる恭一。旅行の服装で鞄を持つ玄関下の二人。玄関上で見送る恭之介と正
   也。無頓着に犬小屋の中で寝ているポチ。
  恭一  「じゃあ、行ってきまぁ~す!(テンション高く)」
   恭一を横目で見る、迷惑顔の未知子。
  恭之介「気をつけてなっ!(笑顔で)」
   無言の笑顔で見送る正也。玄関戸を開ける恭一。外へ出る二人。はしゃぐ恭一。
  正也M「夫婦、水入らずで一泊二日の観光旅行に出かける父さんは、出がけから偉くテンシ
ョンを上げている。まるで小学生の僕のよ
       うな、はしゃぎようで、とても見られたもの
ではない」

○ 玄関 外 朝 
   玄関を出る二人。遠ざかる二人。

○ 湧水家 門外 朝
   湧水家の外景。晴天の清々しい田園風景。会話をしながら歩く恭一と未知子。次第に遠ざかる二人。野道のタンポポ。

                                   
○ メインタイトル
   「春の風景」

○ サブタイトル
   「
(第七話) 美味いもの」

○ 居間 朝
   見送りから居間へ入った恭之介と正也。静まり返った居間。話すこともないまま無言で長椅
子に座っている二人。新聞を読み始める
   正也。庭へ下り、盆栽弄りを始める恭之介。開け
放たれた、庭と居間の間のガラス戸。庭から声を掛ける恭之介。渡り廊下の陽だま
   りで、心地よく眠る
タマ。
  正也M「じいちゃんは剪定鋏を取り出すと、盆栽を弄りだした。僕はじいちゃん役になって、そ
のまま居間で新聞を読んでいた。じいち
       ゃんの盆栽弄りは年相応だが、新聞を老人
のように読む僕…。これはもう、はっきり云って末恐ろしい未来を予感させる」
  恭之介「正也! 今日は久しぶりに、美味いものでも食いに行くか?」
  正也  「いいよっ!(喜び勇んで即答し)」
  恭之介「そうか…。じゃあ、戸締まりをするから、出られる格好をしてきなさい」
  正也  「じいちゃんは?」
  恭之介「儂(わし)か? 儂はこの格好で充分じゃ」
  正也M「じいちゃんは時折り、僕に食事を奢ってくれる有難いスポンサーなのだ。最近は出歩
く機会に恵まれていなかった。その矢先
       である」
   新聞を乱雑に畳むと子供部屋へ駆けだす正也。

○ (フラッシュ) バスの中 昼
   座席に座る恭之介と正也。賑やかに楽しく話し合う二人。バスの窓から流れる外景。
  正也M「それから二人してバスに乗り、隣の町まで出た。バスに乗れば、しめたもので、既に
僕の頭の中には予定表が出来上がってい
       る(◎に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 名店街 昼
   食べもの店が軒を連ねる街を楽しそうに歩く恭之介と正也。うららかな陽気。

○ (フラッシュ) とある食べもの店 昼
   豪華な御馳走。客席に座り、美味そうに料理を食べる恭之介と正也。
  正也M「(◎)・・事実、その通りのコースを辿って僕達は春の味覚を堪能した」

○ 湧水家 外 夕方 
   暮れ泥む空。家に戻ってきた恭之介と正也。家門を潜り家に入る二人。
  恭之介「美味かったなあ…(笑顔で正也を見ながら)」
  正也  「うん!(相好を崩し)」

○ 台所 夜
   風呂上がり後の恭之介と正也。食卓テーブルの椅子に座って食事する二人。未知子が作った
手料理の皿が並ぶ食卓。テレビの音。
  正也M「この日は陽気も麗らかで幸せな一日となった。じいちゃんの機嫌を損なわないように
単に発した僕の言葉から、この連休は両
       親の水入らずの旅行となり、更に僕には美
味いものを食べられる結果となったのだ。だから、世の中が、ひょんなことで良くも
       悪
くもなる不安定なものだということだ。変わらず有り続けるのは、じいちゃんの光る頭
だけだろうか…」

○  エンド・ロール
   食事をする団欒風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「秋の風景(第七話) 美味いもの」 をお読み下さい。 


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残月剣 -秘抄- 《剣聖③》第二十二回

2010年02月05日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖③》第二十二回
どうも賄い番のことを云っているようだ…とは、左馬介にも理解
出来た。
「では、俺はこれで戻る…」
「そうか…。いつもながら御苦労なことだな」
 樋口は軽く会釈をすると井上の前から消えた。左馬介と鴨下は夕餉の仕度を整え終わり、手抜かりがないか確認する。確認しながら、樋口さんが去ったな…と、会話の途絶えより感知する左馬介であった。一方の鴨下は手抜かりがないかの一事
だけで余裕などない。
「今年も秋月さんと二人のようですね」
 漸く確認を終え、溜息を一つ吐いて鴨下が切り出した。
「そのようです…」
 鴨下にも井上と樋口の会話は聞こえていたようだ。自分のことを鴨葱と云われていたことには、取り分けて腹を立てている風にも見えない。鴨下の性格からなのか、或いは慣れの所為(せい)か…、その辺りのところが左
馬介には分からなかった。
「以前から樋口さんはあのように勝手気儘(きまま)です
か?」
「えっ? …ああ、樋口さんですか。はい、あの方は別格なのです」


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