水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第五話) アイス・キャンデー事件 <推敲版>

2010年02月17日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第五話)アイス・キャンデー事件 <推敲版>      
 
   登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 洗い場 昼
   ポチが、水が湧く洗い場から流れ落ちる水を利用して水浴びしている。タマも日陰で涼んで
いる。うだるような炎天下。五月蠅いほど
   の蝉の集き。快晴の蒼い空。湧き立つ雲。

○ 離れ 昼
   団扇をバタバタやるが、咽返る暑気に、おっつかず、萎え気味の恭之介。その傍で昼寝する
正也。外戸は開け放たれているが、風が
   全くない。
  正也M「今日は、朝から気温がグングン昇り、昼過ぎには、なんと、36度を突破した。いつもは
気丈なじいちゃんでさえ、流石に萎えて
      いる」
   灼熱の太陽。湧き上る入道雲。

○メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第五話) アイス・キャンデー事件」

○  同  昼
   外戸のある廊下側へ移動して座る恭之介。
 恭之介「地球温暖化だなぁ…。わしらの子供の頃にゃ考えられん暑さだ。ふぅ~、暑い暑い…」
   声で目覚め、恭之介の方へ寝返りをうって薄目を開ける正也。
 正也M「隣で昼寝をしていた僕は、じいちゃんのひとり言に、安眠を妨害され目覚めた。声がし
た方へ首を振ると、じいちゃんは団扇をパ
      タパタやっている。じいちゃんが電気モノが
嫌いなので、僕はいい迷惑をしている」
 恭之介「こりゃかなわん。水を浴びるか…。真夏日、いや、猛暑日だとかテレビが云っとったな
(呟いて)」
   ヨッコラショと立ち上がる恭之介。一瞬、足元の正也を見る恭之介。二人の目と目が偶然、
合う。
 恭之介「なんだぁ正也、寝てなかったのか?」
 正也  「…でもないけど(小声で可愛く)」
 正也M「そんなことを云われても、暑さに加えて団扇パタパタ小言ブツブツでは、眠れる方が怪
(おか)しい」
   一瞬の無言の間合い。
 正也  「じいちゃん、冷蔵庫にアイス・キャンデーがあるよ。朝、二本買っといたから、一本やる
よ」
 恭之介「ほう…気前がいいな。正也は金持ちだ…。じゃあ、浴びてから戴くとするかな(笑っ
て)」
   母屋の方へ遠ざかる、廊下を歩く恭之介。
   O.L

○ 離れ 昼
   O.L
   母屋の方から近づく、廊下を歩く恭之介。
 正也M「しばらくして、僕がまた眠りかけた頃、シャワーを終えたじいちゃんが、また戻ってき
た」
   寝ている正也を覗き込む恭之介。
 恭之介「おい、正也。キャンデー一本しかなかったぞ」
 正也  「えぇーっ! そんなことないよ。ちゃんと二本、買っておいたんだからっ(少し驚いて)」
 恭之介「いや、確かになかった…」
   跳ね起きる正也。冷蔵庫のある母屋へと廊下を走り去る正也。
   O.L

○ 離れ 昼
   O.L
   冷蔵庫のある母屋から、廊下を走って近づく正也。手にキャンデーを持つ正也。    
 正也  「じいちゃんの云う通りだった…」
 恭之介「だろ?」
   無言で首を縦に振り、頷く正也。しぶしぶ手に持つキャンデーを恭之介に手渡す正也。受け取る恭之介。
 恭之介「いいのか? 悪いなぁ…(小笑いして)」
 正也M「僕は云った手前、仕方ないな…と諦めて、残りの一本をじいちゃんにやった。消えたア
イス・キャンデー。犯人は誰なのか…、僕
      は刑事として捜査を開始した」

○ 台所 夕方
   食事時の団欒。食卓のテーブルを囲む四人。
  恭一「なんだぁ、食っちゃいけなかったのか? つい、手が出たんだが…。すまんな」
   談笑する四人。
  正也M「夕方、呆気なく犯人が判明した。犯人は父さんだった。今日は日曜で、一日中、書斎
へ籠りパソコンと格闘していたのだ。僕
       は、まず母さんを疑っていた。あとは母さん
だけと思い、父さんを忘れていたのだから、まあ、父さんもその程度のものだ」
  恭一  「ハハハ…、今回は父さんが悪かったな。しか
       し正也、買った食い物は早く食べんとな」
  恭之介「そうだ、それは父さんの云う通りだぞ、正也」
   機嫌よく笑う恭之介。唐突に話しだす未知子。
  未知子「今日はゴキブリ出ないわねぇ(恭一を見て)」
  恭一  「そりゃそうさ。昨日、仕掛けといたからなぁ(自慢げに)」
   得意そうに解説する恭一。仕方なく聞く三人。
  正也M「罠にかかったゴキブリが、『馬鹿馬鹿しい…』と云った。…これは飽く迄も想像だ
が…」

○ エンド・ロール
   台所の片隅で大きな欠伸をするタマ。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第五話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第六回

2010年02月17日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第六回
そんなことで、長谷川を一応の旗頭にして三人は出かける予定を
していた。
 梅見に浮かれる程度はいい…と左馬介は思っている。問題は肝心の剣技がその後、どうなのかである。実のところ、新技を編み出す努力は日々の隠れ稽古の中で絶えず考案されていた。そうした取り組みは何も今、始まったことではない。既に一年以上も前から続いていたのである。だが、今に至っても閃きが左馬介の脳裡には浮かばないのだ。堀江一刀流の形(かた)は伝統として継承さるものである以上、それを崩す訳にはいかない。形は形として、新技は新技として別個に考慮に及ぶ必要があった。ところが、日々の心労がそれを阻むのである。やはり、鴨下以降の新入りが無いことが、その要因の最も大なるものであった。それでも左馬介は決して諦めることはなかった。そんな折り、左介がで眠っている夜半、幻妙斎が夢枕に立った。いや、恐らくそれは夢に違いない…と、後になって左馬介に思えた出来事だったの
だが。それは、梅見の宴が開かれる数日前であった。
 左馬介は常とは違い、その夜に限って妙に身体が、けだるく、早めに寝ることにした。だが、床に入ると何故か熟睡出来ず、微睡(まどろ)みが続いた。


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