水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第一話) 夕涼み  <推敲版>

2010年02月13日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景

      
(第一話)夕涼み <推敲版>           

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 庭先 夕方
   風呂から上がり、庭先の縁台で涼む恭一。団扇で手足の蚊を払う浴衣姿の恭一。
  正也M「今年も暑い夏がやってきた。父さんは、のんびり縁台で涼んでいる。時折り、手や足
をパチリパチリとやるのは、蚊のせいだ
       (◎に続けて読む)」

○ 子供部屋 夕方
   勉強机から、窓の網戸越しに恭一を眺める正也。
  正也M「(◎)僕は、その姿を勉強机から見ている(△に続けて読む)」

○ 台所 夕方
   夕食準備のため、炊事場で小忙しく動く未知子。
  正也M「(△)母さんは、と云うと、先ほどから台所付近を夕餉の支度で、小忙しく動き回って
いる (◇に続けて読む)」

○ 庭 夕方
   軒(のき)に吊るされた風鈴が楚々と鳴る。ビールを縁台で飲む恭一。
  正也M「(◇)父さんは風呂上りの生ビールを枝豆を肴(さかな)に味わっているから上機嫌である。
庭の風鈴がチリン…チリリンと、
        夕暮れの庭に涼しさを撒く」

○ メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第一話) 夕涼み」

○ (フラッシュ) 庭 昼
   麦わら帽子を被り、ランニングシャツ姿の恭一。首に手拭いを巻き、高枝バサミで樹木の選
定をする恭一。 
  正也M「今日は土曜だったので、父さんは庭の手入れ、正確に云えば剪定作業をやっていた
(* に続けて読む)」

○ もとの庭 夕方
   ビールを縁台で飲む恭一。

○ 子供部屋 夕方
   勉強机から窓の網戸越しに、庭の恭一を眺める正也。
  正也M「(*)だから一汗かいたあとのビールなんだろうが、実に美味そうにグビリとやる。そ
の喉越しの音が、机まで聞こえてきそう
       だ」
   開いた戸から、突然、、風呂上がりの恭之介が入り、正也の背後に立って机上を覗き込
む。
  恭之介「おう! 頑張っとるじゃないか…(云いながら正也の頭を撫でつけ、笑顔で)」
   驚いて、振り返る正也。
  正也M「急に後ろから頭を撫でつけた無礼者がいる。振り返れば、じいちゃんが風呂上りの
赤く茹であがった蛸になり、笑顔で立って
       いた」
  正也  「なんだ、じいちゃんか…(笑顔で、可愛く)」
  恭之介「正也殿に、なんだと申されては、埒(らち)もない」
  正也  「…(意味が分からず、無言の笑顔)」
   そのまま、ただ笑いながら居間へ立ち去る恭之介。

○ 居間 夕方
   居間へ入る恭之介。庭先の足継ぎ石へ下りる恭之介。
  正也M「僕の家には風呂番という一ヶ条があり、今日は、じいちゃんが二番風呂だった。この
順はひと月ごとに巡ぐるシステムになって
       いる。提案したのは僕だが、母さんにはす
まないと思っている。終いの湯があるから…と、母さんは笑いながら僕の提案を抜け
       
ると宣言したのだ。男女同権の御時世からすれば、時代遅れも甚だしいことは、小
学生の僕にだって分かる」

○ 庭 夕方
   徐(おもむろ)に縁台へ座る恭之介。二人の間に置かれている将棋盤と駒箱。
  恭之介「恭一、また…どうだ」
  恭一  「お父さん、もう夕飯ですから…(やや迷惑顔で、遠慮しながら、残ったビールを飲み
干し)」
  恭之介「いいじゃないか。お前…確かこの前も負けたな。もう勝てんと音をあげたか?(フフフ
ッ・・・と笑いながら、縁台上の殺虫剤をブ
       シューっとやり)」
  恭一「違いますよ!」
  恭之介「なら、いいじゃないか(即座に返し)」
  恭一「分かりました。受けて立ちましょう(やや依怙地になり、即座に返し)」
   慣れた手つきで、瞬く間に駒を並べ終え、盤上に視線を集中させる二人。

○ 子供部屋 夕方
   勉強机から、窓の網戸越しに二人を眺める正也。突然、未知子が現れ、正也の背後に立つ。
机上に置かれた蚊取り線香から流れる
   煙。
  未知子「正也!…早く入ってしまいなさい (やや強く)」
  正也M「母さんの声が背後から飛んできた。僕は勉強をやめ、風呂へ入ることにした。蚊が
机の上へ無念そうにポトリと落ちた」

○ エンド・ロール
   将棋を指す恭之介と恭一。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は 「短編小説 夏の風景☆第一話」  をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第二回

2010年02月13日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第二回
 いつもなら、べったりと座布団に伏す形で寝入っている筈の獅子童子が、その日に限って、きちんとした風体で身形(みなり)を正し、人を眺めているではないか。一瞬、左馬介の目線と細目で見る猫の目線が合った。左馬介はその涼しげな獅子童子の目線に、久しく会っていない師の幻妙斎を見る心地がした。勿論、獅子童子がいるということは、近辺に幻妙斎が存在していることを意味するのだが、かといって、師が現れるのかと云えば、百のうち九十九までもが否(いな)なのである。それ故、左馬介は次の瞬間には目線を反らし、馬鹿げた師の幻覚を拭おうと、長谷川や鴨下と話を始めていた。しかし、それは左馬介の幻覚などではなかった。三人の様を密かに屋外より観望する幻妙斎、正しくその人がいたのである。三人はそのようなことは当然、知らない。幻妙斎は左馬介の剣を見分
する為に現れたのである。
 妙義山の洞窟を下り、麓の村で左馬介の風聞に触れた幻妙斎が、その腕を眼で確かめようと道場へ戻ったのだった。無論、そうしたことも左馬介は知らない。暫く稽古の様子を観望していた幻妙斎は、丁度、左馬介が二人と語りだした折り、その姿を霞の如く消した。場内の獅子童子は幻妙斎後を直ぐに追うようなはせず、少し遅れて間合いを取る。


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