水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ(2) <推敲版>

2010年02月26日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景

       特別編
(下)怪談ウナギ(2) <推敲版>       

  登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]  
   その他   ・・猫のタマ、犬のポチ

○ C.I とある野原の道 早朝 
   ポチと散歩する正也。
  正也M「ポチを散歩させ、(①に続けて読む)」

○ C.I 玄関 外 早朝
   首から出席カードをぶら下げ、玄関から走り出る正也。
  正也M「(①)ラジオ体操へ行き、(②に続けて読む)」

○ C.I 玄関 内 朝
   ポチに餌をやる正也。
  正也M 「(②)帰って、ポチや(③に続けて読む)」

○ C.I 台所 朝
   小忙しく朝食の準備をする道子。タマに餌をやる正也。
  正也M「(③)タマに餌をやって、朝食となる」

○ 台所 朝
   食卓を囲み、食事をする四人。
  恭一  「父さんに聞いたんだが、悪い夢を見たんだってな、正也」
  正也  「んっ? まあね…」
   沈黙して食べる四人。
  正也M「夢の話は既に、じいちゃんから父さん、母さんへと伝わっていた。ここは云わザルだな…と思え、単に一語で片付けることにし
       た」
  恭一  「ふ~ん、そうか。寝苦しかったからな…」
   箸で胡瓜のお新香を摘み、バリバリっと噛る恭一。

○ C.I 玄関 外 朝
   背広姿の恭一が出勤していく。見送る未知子。
  正也M「父さんが出勤し、(③に続けて読む)」

○ C.I 子供部屋 朝
   机で夏休みの宿題をする正也。
  正也M「(③)僕は宿題を済ます(④に続けて読む)」

○ C.I 玄関 外 朝
   畑の見回りに出る恭之介。
  正也M「(④)じいちゃんは家の前の畑の見回りだ」

○ 台所 朝
   炊事場で雑用を熟(こな)す未知子。テーブル椅子に座り、道子の様子を見遣る正也。
  正也M「母さんは? と見ると、家の雑用をしている。僕は、夢で見た小川へ早速、行ってみることにした」
   椅子を立つ正也。下にいたミケが美声でニャ~と鳴く。玄関へ向かう正也。

○ 玄関 内 朝
   靴を履く正也。台所から道子の声。
  [道子] 「暑くならないうちに戻るのよぉ~!」 
  正也  「は~~い!(可愛く)」
   戸を開ける正也。ポチがクゥ~ンと鳴く。戸を閉める正也。
  正也M「目敏(ざと)い母さんは、レーダーで僕を見ているようだった」

○ とある小川 朝
   子鰻(うなぎ)を探す正也。干上がりかけた水溜りにいる子鰻。気づく正也。両手で掬(すく)い本流へと逃がしてやる正也。泳ぎ去る
   子鰻。
  正也M「夢に現れた小川へ行くと、確かに…お告げのように一匹の子鰻が、干上がりかけた水溜りにいた。僕は急いで本流の方へと、
       その子鰻を両手で掬うと逃がしてやった。勢いよく子鰻は泳ぎ始め、そのうち、、どこかへ姿を消した」

○ 台所 朝
   食卓テーブルの椅子に座る恭之介と正也。話す二人。
  恭之介「そうか…、まあ、いいことをした訳だな。正夢だったか、ワハハハハハ…(豪快に笑い飛ばして)」
  正也  「それはいいけどさ、枕元が濡れてたのが…」
   今朝、起きた時の超常現象について語る正也。近くで洗濯機を回す未知子の声。
  [未知子] 「あらっ! それ、私なの。うっかり、掃除をした時、バケツをね…慌てて…」
  恭之介「そうでしたか…(大笑いして)」
   釣られて笑う正也と道子。道子の携帯が鳴り、出る未知子。電話の恭一と話す道子。笑って電話を切る未知子。  
  恭之介「恭一からでしたか…」
  未知子『なんだ、そうだったか…』って、笑ってましたわ」
   笑う恭之介、未知子、正也。三人の続く雑談。
  正也M「これが、この夏、起きた我が家の怪談ウナギである。ただ一つ、夢の子鰻は確かに小川にいた…」
○ エンド・ロール
   炎天下の青空。湧水家の遠景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

   
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「夏の風景 特別編(下) 怪談ウナギ」 をお読みさい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第十五回

2010年02月26日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第十五回
「おおっ! 受けおったのう…。流石は儂(わし)が見込んだたけの
ことはある、見事じゃ! 早う上へ参れ…」
 幻妙斎はそう掠れ声で云うと、微かに笑った。実のところ左馬介は木刀を手にしている自分に驚いていた。秘められた自らの腕前を初めて自身で知ったからである。予期せぬ幻妙斎の行動に、それを受け止めた俊敏さは、左馬介が今迄に体感していない己が能
力であった。
 左馬介は漸く平坦な上部まで登りきった。するといつの間にか、幻妙斎はふたたび杖を傍らへ置き、静かに座していた。左馬介が幻妙斎のほん手前まで近づいて立ち止まる。束の間の静寂(しじま)が二人を包み込んだ。焚かれる朽ちた木枝のみがパチパチと弾(はじ)けて唯一の音を奏でている。左馬介の内心は、恐れ多いとい
う気持で、とても自分から声は掛けられないのだ。
「上がったと見えるのう。…まあ、そこへ腰を下ろし、暖を取るがよ
かろう」
 瞼を閉じたまま不動の姿勢で座し、幻妙斎は白髭をモゾっと動かせながら告げた。恰(あたか)も、全て見えるが如きであった。左馬介は云われるままに操り木偶(でく)のように座した。自らの意思ではなく、身体が勝手に動かされたのである。


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