水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景(第八話) ♪ 鯉のぼり ♪  <推敲版>

2010年02月06日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      春の風景

      
(第八話)♪ 鯉のぼり ♪ <推敲版>          

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


 湧水家の外景 朝
   風に靡いて泳ぐ鯉のぼり。
  正也M「宙天にヒラヒラと泳いでいるのは僕の家の鯉のぼりだ。勿論、鯉のぼりは僕の
家だけでなく、ご近所のあちこちでも泳いでい
       
るのだが…」

○ メインタイトル
   「春の風景」

○ サブタイトル
   「
(第八話)♪ 鯉のぼり♪」

○ 離れ 朝
   宙天高く翻る、庭に立てられた鯉のぼり。渡り廊下に座りガラス戸から眺める恭之介と正
也。
  正也  「じいちゃん、この鯉のぼりは、いつ頃からあるの?(単に、鯉のぼりを見上げて)」
  恭之介「ああ、これなあ…(鯉のぼりを、しみじみと見上げて感慨深そうに)。そう、あれは正也が、まだ二つの時だっ
たなあ、確か…」
  正也  「フ~ン…(興味なさそうに)」
   云った後、チマキを美味そうに頬張る正也。
  正也M「最近の都会ではチマキなどというものは食べないのだろうが、僕達の田舎では普通
に作られ、普通に食す。よ~く考えれば、
       自然の息づく田舎で人間は育てられてきた
ように思える」
   恭一が庭で吹く、下手なハーモニカの音がする。
  正也M「父さんが上手いと自負して吹くハーモニカの音が、♪ 鯉のぼり ♪の小学唱歌を奏
でて庭から流れてくる」
  恭之介「あいつは、ちっとも上達せんなあ。アレ、ばっかりだ!」
   離れと母屋の取り合い廊下の方から聞こえる未知子の声。
  [未知子] 「お父様! お茶、置いときます…」
  恭之介「ああ…、未知子さん、すみません!(声高に)」
  正也M「じいちゃんは母さんに星目風鈴・中四目を置いている。一目、置く…とは、よく云うが、
これだけ置く人はそうざらにはいないだろ
        うと思える。伊達に蛸頭を照からせている
訳ではないな…と、敬いつつ見上げた」
   ハーモニカの音が止む。未知子が廊下に置いた茶盆を持って離れへ入り、渡り廊下に座る恭
一。
  恭之介「おお、恭一か…」
  恭一  「バスで行ったのが正解でした。出歩いた日中は多少、暑かったですがね。渋滞とか
詰め込みは関係なかったですから…」
  恭之介「ほお、そりゃよかったな。たまには、夫婦水入らずも、いいもんだろう」
  正也M「今日のじいちゃんはチマキが効いて機嫌がいい。これなら、じいちゃんにチマキを毎
日、食わせておきゃ…とも考えられるが、
       とても実現はしないだろう」
   恭一が運んだ茶をフゥーフゥーと冷ましつつ飲む恭之介。真似てフゥーフゥーと飲む正也。
得意満面にポケットからハーモニカを取り
   出す恭一。それに気づく恭之介。
  恭之介「恭一、もういいから、やめてくれ!」
   真顔に戻り、ハーモニカをポケットに入れる恭一。
  正也M「懇願するようなじいちゃんのひと言に、父さんは真顔に戻り、テンションを下げた」

○ エンド・ロール
   はためく鯉のぼり。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景(第八話) ♪鯉のぼり♪」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖③》第二十三回

2010年02月06日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖③》第二十三回
何か訳があるんですか?」 
「はあ…。それはその内、あなたにも分かると思います
よ」
 いつか一馬に云われたことを、今は自分が鴨下へ話している。左馬介は月日の流れを肌で感じていた。
「では、これにて…」
 二人は小部屋の前廊下で別れた。
 その直後、異変が起きた。馬介の小部屋から少し離れた長沼の小部屋から見知らぬ男一人、疾駆して通り過ぎた。続けて、小部屋より長沼が飛び出し、叫んで後を追う。
「盗賊だぁ~! 誰か、捕まえてくれぇ~」
 道場入口の門は堅く閉ざされているのだから、並大抵では賊が侵入出来る筈がない…と、咄嗟に左馬介は思った。しかし、長沼がそう叫んで追っているからには事実なんだろうとも思える。
 小部屋へ一端は入った鴨下も、障子戸を開けて、また顔をかせた。
「行ってみましょう、秋月さん!」
「ええ…」
 二人は長沼が走り去った方向へと駆けだした。


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