≪脚色≫
夏の風景
(第二話)馬鹿騒ぎ <推敲版>
登場人物
湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
湧水恭一 ・・父 (会社員)[38]
湧水未知子・・母 (主 婦)[32]
湧水正也 ・・長男(小学生)[8]
○ 庭 早朝
庭の樹木で鳴く蝉。早朝の陽射し。
○ 子供部屋 早朝
布団で眠る正也。蝉の鳴き声に薄眼を開ける正也。徐(おもむろ)に枕元の目覚ましを眠そうに見る正也。なんだ、こんな時間か…も
う少し眠っていよう・・と、また布団を被る正也。が、辺りの明るさに半身を起こして両手を広げ、欠伸をする正也。蝉の鳴き声。窓か
ら入る陽射しの明るさ。
正也M「蝉が唄っている。それも暗いうちからだから、寝坊の僕だって流石に目覚める。それに五時頃ともなれば冬とは違って外は明
るいから尚更だ」
○ メインタイトル
「夏の風景」
○ サブタイトル
「(第二話) 馬鹿騒ぎ」
○ 庭 早朝
半身裸の着物姿で木刀を振るい、剣道の稽古をする恭之介。恭之介の周りを元気に駆け巡るポチ。
○ 渡り廊下 早朝
歯を磨き終え、ラジオ体操に出ようと廊下を歩く正也。ガラス越しに見える恭之介。聞こえる恭之介の掛け声。立ち止まり、稽古の模
様を窺う正也。
[恭之介]「エィ! ヤァー!(竹刀を振るいながら)」
正也に気づく恭之介。
[恭之介]「どうだ、正也も振ってみるか!」
正也 「僕はいいよっ! ラジオ体操があるから!…」
稽古を中断し、足継ぎ石に近づく恭之介。ガラス戸を開け放つ恭之介。
恭之介「まっ、そう云うな、気持いいぞぉ、ほれっ!(正也の眼前へ竹刀をサッっと突き出し)」
恭之介の勢いに押され、竹刀を手にする正也。
正也M「こういう主体性がないところは、父さんの子なんだから仕方がない」
恭之介の指導通り、何回か竹刀を振るう正也。
正也 「もう行くよ。遅れると、子供会で怒られるから…(急いでいる、と云いたげに)」
恭之介「そうか…。じゃあ、行きなさい(素直に)」
解放されたかのように、竹刀を置くと駆けだす正也。
正也の後ろ姿に声を投げる恭之介。
恭之介「帰ったら飯が美味いぞぉ~」
○ 台所 朝
ラジオ体操を終えて台所へ入る正也。恭之介の腕を揉む未知子。傍らには、起きたパジャマ姿のまま見守る恭一。恭之介の横へ座
る正也。
恭一 「年寄りの冷や水なんですよ、父さん…」
恭之介「なにを云うか! (激昂して)ちょいと、捻っただけだっ」
正也M「じいちゃんが気丈なのはいいが、父さんも、もう少し話し方を工夫した方がいいだろう。僕の方が、じいちゃんの気性を知り尽く
しているように思える」
未知子「でもね、お父さんも、もうお歳なんですから、気をつけて下さい…(揉みながら)」
急に、顔が柔和になる恭之介。
恭之介「ハハハ…、お二人にそう云われちゃなぁ。まあ、これからは考えます、未知子さん…」
三人の様子を、椅子に座って見遣る正也。
恭之介「さあ、飯にしましょう、未知子さん」
隣に座る正也に気づく恭之介。
恭之介「おぅ! 正也も帰ってたか…。虫に刺されなかったか?」
正也 「うん、虫除け持ってったし」
恭之介「ああ…、アレはよく効くからなぁ」
台所の片隅で四人を窺うタマが、馬鹿な話はやめて夕飯にしませんか? とばかりに、ニャ~と鳴く。
恭之介「さあ、飯にしよう。飯だ飯だ、飯…飯(立ちながら)」
呆れたように恭之介を見遣る三人。
正也M「何かに憑かれたように、じいちゃんは母さんの手を振り解(ほど)いて、勢いよく立ち上がった」
○ エンド・ロール
夕食風景。
テーマ音楽
キャスト、スタッフなど
F.O
※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第二話」 をお読み下さ い。