水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第二話) 馬鹿騒ぎ  <推敲版>

2010年02月14日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第二話)馬鹿騒ぎ <推敲版>        
    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 庭 早朝
   庭の樹木で鳴く蝉。早朝の陽射し。

○ 子供部屋 早朝
   布団で眠る正也。蝉の鳴き声に薄眼を開ける正也。徐(おもむろ)に枕元の目覚ましを眠そ
うに見る正也。なんだ、こんな時間か…も
   う少し眠っていよう・・と、また布団を被る正也。
が、辺りの明るさに半身を起こして両手を広げ、欠伸をする正也。蝉の鳴き声。窓か
   ら入る
陽射しの明るさ。
  正也M「蝉が唄っている。それも暗いうちからだから、寝坊の僕だって流石に目覚める。それ
に五時頃ともなれば冬とは違って外は明
       るいから尚更だ」

○ メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第二話) 馬鹿騒ぎ」

○ 庭 早朝
   半身裸の着物姿で木刀を振るい、剣道の稽古をする恭之介。恭之介の周りを元気に駆け
巡るポチ。

○ 渡り廊下 早朝
   歯を磨き終え、ラジオ体操に出ようと廊下を歩く正也。ガラス越しに見える恭之介。聞こえる
恭之介の掛け声。立ち止まり、稽古の模
   様を窺う正也。
  [恭之介]「エィ! ヤァー!(竹刀を振るいながら)」
   正也に気づく恭之介。
  [恭之介]「どうだ、正也も振ってみるか!」
  正也  「僕はいいよっ! ラジオ体操があるから!…」
   稽古を中断し、足継ぎ石に近づく恭之介。ガラス戸を開け放つ恭之介。
  恭之介「まっ、そう云うな、気持いいぞぉ、ほれっ!(正也の眼前へ竹刀をサッっと突き出
し)」
   恭之介の勢いに押され、竹刀を手にする正也。
  正也M「こういう主体性がないところは、父さんの子なんだから仕方がない」
   恭之介の指導通り、何回か竹刀を振るう正也。
  正也  「もう行くよ。遅れると、子供会で怒られるから…(急いでいる、と云いたげに)」
  恭之介「そうか…。じゃあ、行きなさい(素直に)」
   解放されたかのように、竹刀を置くと駆けだす正也。
   正也の後ろ姿に声を投げる恭之介。
  恭之介「帰ったら飯が美味いぞぉ~」

○ 台所 朝
   ラジオ体操を終えて台所へ入る正也。恭之介の腕を揉む未知子。傍らには、起きたパジャマ
姿のまま見守る恭一。恭之介の横へ座
   る正也。
  恭一  「年寄りの冷や水なんですよ、父さん…」
  恭之介「なにを云うか! (激昂して)ちょいと、捻っただけだっ」
  正也M「じいちゃんが気丈なのはいいが、父さんも、もう少し話し方を工夫した方がいいだろ
う。僕の方が、じいちゃんの気性を知り尽く
       しているように思える」
  未知子「でもね、お父さんも、もうお歳なんですから、気をつけて下さい…(揉みながら)」
   急に、顔が柔和になる恭之介。
  恭之介「ハハハ…、お二人にそう云われちゃなぁ。まあ、これからは考えます、未知子さん…」
   三人の様子を、椅子に座って見遣る正也。
  恭之介「さあ、飯にしましょう、未知子さん」
   隣に座る正也に気づく恭之介。
  恭之介「おぅ! 正也も帰ってたか…。虫に刺されなかったか?」
  正也  「うん、虫除け持ってったし」
  恭之介「ああ…、アレはよく効くからなぁ」
   台所の片隅で四人を窺うタマが、馬鹿な話はやめて夕飯にしませんか? とばかりに、ニ
ャ~と鳴く。
  恭之介「さあ、飯にしよう。飯だ飯だ、飯…飯(立ちながら)」
   呆れたように恭之介を見遣る三人。
  正也M「何かに憑かれたように、じいちゃんは母さんの手を振り解(ほど)いて、勢いよく立ち
上がった」

○ エンド・ロール
   夕食風景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第二話」 をお読み下さ い。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第三回

2010年02月14日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第三回
こうしたことは幻妙斎が躾けたものでも何でもない。自然と備った主と弟子の眼に見えぬ意思の疎通のようなものであった。子童子が漸く重い腰を上げた時、左馬介は師が遠退いたことを察知した。その見透かした心の境地は、やはり左馬介が上達したことを意味するもので、以前には感知しない気配のであった。気の所為(せい)か…とまでも感じられれば大したものだが、左馬介の境地は、もはやそれ以上に感応する域にまで高められていたのである。それは矢張り、長く続けてきた隠れ稽古の成果と捉えることが出来た。幻妙斎の気配が消えた後、暫くして三人はふたたび
稽古を続けた。
 厨房の賄い番は相も変わらず左馬介と鴨下に委ねられていた。それも当然で、新入りが全くない上に多くの者達が客人身分となった今、長谷川を除けば自分達以外に準備をする者がいない。三膳で済むようになったのだから随分、簡単になった。それ故、賄いでの気苦労は、かなり軽減されていた。しかし逆に食材の調達が難しくなってきたという悪い事情も加味されていた。以前は度々、現れた葛西の地百姓、権十も、最近はとんと顔を出さない。
来る度に野菜や川魚を届けてくれたのだが、今はそれがなくなっていた。


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