水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第三話) 疑惑  <推敲版>

2010年02月15日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      
(第三話)疑惑 <推敲版>           

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 子供部屋 夕方
   椅子に座り、机上で絵日記を書く正也。蝉が集く声。開けられた窓から入る夕映えの陽射し。目を細める正也。
  正也M「夏休みは僕たち子供に与えられた長期の休暇である。ただ、多くの宿題を熟(こな)さねばならないから、大人のバカンスとは
       異質のものだ、と解釈している」
   一通り、書き終え、両腕を上へ広げて背伸びする正也。
  正也M「今日の絵日記には、父さんと母さんの他愛もない喧嘩の様子を描いた。まあ、個人情報保護の観点から、詳細な内容は書か
       なかったのだが、先生に知られたくなかった…ということもある」
   絵日記を閉じる正也。遠くで未知子が呼ぶ声。
 [未知子] 「正也~! 御飯よぉ~!」
 正也  「はぁ~い!(可愛く)」
   席を立ち、部屋を出ようとする正也。ふと、窓を閉め忘れたことに気づき、戻って閉め、溜息をつくと、また椅子に座る正也。

○メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第三話) 疑惑」


○  同  夕方
  正也M「二人の他愛もない喧嘩の経緯を辿れば、既に三日ほど前に前兆らしき異変は起きていた」

○ 玄関 夕方
   誰もいない玄関。
   O.L

○(回想) 玄関 夕方
   O.L
   誰もいない玄関。T 「三日前」
   玄関戸を開け、バットにグラブを通して肩に担いだ正也が帰ってくる。正也が戸を閉めた途端、ふたたび戸が開き、恭一がハンカチで
   汗を拭きながら入ってくる。
  恭一  「ふぅ~、今日も暑かったな…」
  正也  「うん!(可愛く)」
   靴を乱雑に脱いで上がる恭一。バットにグラブを通して肩に担いだまま、恭一に続いて上がる野球服姿の正也。一瞬、立ち止まり、
   正也の顔を見る恭一。
  恭一  「ほぉ~、正也も随分、焼けたなぁ! (ニコリと笑い)」
  正也  「まあね…(可愛く)」
  恭一  「今月は俺が一番だったな、助かる助かる…(ネクタイを緩めながら)」
   ふたたび慌ただしく歩きだし、正也に目もくれず、足早に奥へと消える恭一。

○ (回想) 居間 夕方
   居間へ入った途端、乱雑に衣類を脱ぎ捨てる恭一。浴室へと消える恭一。
  正也M「帰ったのは僕の方が早かったのに、逆転された格好だ。父さんは乱雑に衣類を脱ぎ散らかして浴室へと消えていた」
   居間へ入る正也。台所から居間へ入る未知子。
  未知子「あらまあ、こんなに散らかして…。ほんとに困った人ねぇ(衣類を片づけながら)」
   片づけ中、ふと、ズボン横に落ちた一枚の名刺らしきものに気づく未知子。クーラーで涼みながら、その様子を見ている正也。
  正也M「落ちていた紙片がどういうものなのかは子供の僕には分からないが、どうも二人の関係を阻害する、よからぬもののようだっ
       た」
   浴室から出て居間へ入ってくる恭一。クーラーで涼む正也。恭一に詰め寄る未知子。
  未知子「あなた、コレ、なによ!(膨れ面で)」
  恭一  「ん  いやぁ…(正也に気づいて、曖昧に濁し)」
   正也の顔を垣間見る恭一。道子もチラッ! と、正也を見る。押し黙る二人。よからぬ雰囲気を察して、居間から退去し、子供部屋へ
   向かう正也。

○(回想) 子供部屋 夕方
   子供部屋へ入る正也。机椅子に座った正也。
   O.L

○もとの子供部屋 夕方
   O.L
   机椅子に座った正也。
  正也M「その後、夫婦の間にどういう会話の遣り取りがあったか迄は定かでない。三日が経った今も、二人の会話は途絶えている。
       息子の僕を心配させるんだから、余りいい親じゃないように思う」
   突然、子供部屋へ入ってきた恭之介。
  恭之介「正也~、すまんがな…わしの部屋へコレをセットしといてくれ」
   蚊取り線香を正也に手渡す恭之介。
  正也  「じいちゃん、電気式の方がいいよ(蚊取り線香を受け取り)」
  恭之介「それは、わしも知っとる。だが、こいつの方がいいんだ(小笑いして)」
  正也  「ふぅ~ん…(何故かが、よく、分からず)」
   話題を変え、徐に(おもむろ)に訊く恭之介。
  恭之介「父さんと母さん、その後はどうなんだ?」
  正也  「えっ? …(恭之介の顔を見上げて)」
   沈黙する正也。それ以上は訊かない恭之介。   
  正也M「僕はスパイじゃないぞ…と思った」

○ エンド・ロール
   暮れ泥む夏の夕景。湧水家の全景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第三話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第四回

2010年02月15日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第四回
 食材の必要量は賄う人数が減ったのだから、当然ながら少なくなっていた。それはいいとしても、やはり権十が寄らなくなった影響はあった。不足を解消する為に、月に二度の閉門日には態々(わざわざ)、その食材を買い求めに葛西の街筋へと出向くことを余儀なくされた。所謂(いわゆる)、自由に過ごせる時が減ったのだ。これが、多くの門弟が客人身分となり抜けたことによっ
て生じた悪い事情であった。だが、その事情は如何とも、し難い。
 こうした中、幻妙斎が道場の行く末を如何に考えているのか…という疑問は、沸々と左馬介の胸中に滾(たぎ)っていた。最近は頓(とみ)にそうした心持ちに曇る日々が増えている。
 勿論、客人身分である門弟達や長谷川、鴨下とて少なからずそう思っているに違いなかった。だが、互いにそのことに触れることが禁句であるかのように、話題には上らなかった。黙していれば自ずと道場の未来が開けると、全員が頑(かたく)なに思い込もうとしている節があった。門弟の大多数が影のような存在になったのは、既に無きに等しいのだから、左馬介としては今や全く当てには出来ない。春先までは道場に居るという今年、道場を去る神代を含めて五人の客人身分の者達から一応は月に一朱ずつ、締めて一分一朱を長谷川は受け取っている。


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