水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第九話) ナス  <推敲版>

2010年02月21日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景                       
      
(第九話) ナス <推敲版>                                  
    登場人物

   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]
 
  その他   ・・大工の留吉

○ 離れ 昼
   恭之介の部屋で昼寝する正也。蝉しぐれ。屋外は猛暑。
  正也M「僕はじいちゃんの部屋で昼寝を余儀なくされている。その訳は、家の母屋が改造中なのだ。
今でいうリフォームってや
       つで、請負った同じ町内に住む大工の留吉さんが、四六時中、出入りをし
ている(◎に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 改造中の子供部屋 昼
    金槌で釘を打つ留吉。かなり散らかった子供部屋。
  正也M「(◎)離れで寝ている訳は、工事の騒音で安眠できないからだ(◇に続けて読む)」

○ (フラッシュ) 母屋の各部屋 昼
   湧水家の台所、居間、奥の間、浴室、洗面所…などの光景。どの部屋でも聞こえる釘を打つ音。
  正也M「(◇)僕の家は昔に建てられた平屋家屋だから、まず母屋の、どの場所に寝ても、騒音は
防ぎようがないのだ(△に続
       けて読む)」

○ もとの離れ 昼
   恭之介の部屋で昼寝する正也。蝉しぐれ。
  正也M「(△)そんなことで、別棟の離れで昼寝となった訳だが、じいちゃんが扇風機やクーラーを使
わないものだから、大層、
       迷惑していた」

○ メインタイトル
   「夏の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第九話) ナス」

○ 台所の裏口 朝
   裏口の戸を開け、作業着姿の留吉が元気に入って来る。スリッパに履き換え、台所へ上がる留
吉。 
  留吉  「今日も暑くなりそうですなぁ、奥さん」
  未知子「…ええ、倒れるくらい暑いから困るわ(笑って)」  
  留吉  「ほんとに…。我々、職人泣かせですよ、この暑さは…」
   台所を通り過ぎ、子供部屋に向かう留吉。

○ 改造中の子供部屋 朝
   子供部屋へ入る留吉。直ぐに鉋(かんな)を手にして、横木を削り始める。ポットのお茶と湯呑み、
茶菓子が乗った盆を運ぶ
   未知子。未知子の尻について入る正也。
  未知子「ここへお茶、置いときますから…」
  留吉  「いつも、すいませんなぁ…(削りながら)」
  未知子「あと、どのくらいかかりますの?」
  留吉  「そうですなぁ…。まあ、秋小口には仕上げるつも
       りでおりますが…(手を止め)」
  未知子「そうですか…。なにぶん、よろしく…(頭を下げ)」
   台所へ去る未知子。そのまま留吉の作業を見遣る正也。正也を見遣る留吉。
  留吉  「正ちゃん、ほうれ…、この木屑をやろう。何か作りな(正也の手に渡し)」
  正也  「どうも、ありがとう…(留吉から受け取って)」
   渡された木屑を大事そうに持ち、部屋を走り去る正也。

○ 台所 朝
   畑から帰ってきた恭之介が道子と話している。台所へ入る正也。
  恭之介「未知子さん、今年もほら、こんなに成績がいい…(汗をタオルで拭きながら)」
   籠に入った収穫したてのトマト、ナス、キュウリなどを自慢して未知子に見せる恭之介。籠の中を見
遣る正也。
  未知子「お義父さま、助かりますわ。最近はお野菜も結構しますから…(少し、持ち上げて)」
   正也を見て、笑顔から真顔に戻る未知子。
  未知子「正也、勉強しなきゃ駄目でしょ(やや強く)」
  恭之介「そうだぞ正也。こういうふうに、いい成績をな、ワハハ…(賑やかに笑って)」
   収穫した紫色に光るナスを片手にして、示す恭之介。ふと、何か思い出したように、離れへ向かう
恭之介。
  恭之介「それにしても、あの虫除けは、よく効くなあ。全然、刺されなかった…」
   恭之介の頭とナスを交互に見る正也。
  正也M「じいちゃんの頭とナスの光沢がよく似ている…、と僕は束の間、思った。台所には、じいちゃ
んの頭ナスが、たくさんあ
       り、僕を見ていた」

○ エンド・ロール
   つやつやとしたナスの山。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、 「短編小説 夏の風景☆第九話」  をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第十回

2010年02月21日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第十回
そうなれば長谷川の一人相撲である。口を閉ざさざるを得ない。左馬介は堂所へと歩き出し、長谷川もその後に続いた。
 堂所には鴨下がいて、丁度、三人の膳を調えたところだった。三人になってからというもの、厨房より堂所へ運ぶ膳の移動は左馬介と鴨下が一日交代で行っていた。詰まるところ、三膳のみだからである。準備は今迄どおり二人だが、人数が減った分、そうバタつくことも無くなった為である。今迄の喧騒が嘘のように、三人の朝餉は実に静穏である。陽気な鴨下も敢えて語ろうとはせず、左馬介もこの日は無言であった。長谷川は、ただ箸を無造作に動かせるのみだが、矢張り、つい今し方の左馬介との会話が尾を引いているようであった。来月といえば残り十日ばかりなのだが、左馬介には幻妙斎が待つ刻限などは分からない。しかし、一応の心積もりとして辰の上刻には妙義山の洞窟に着くように出よう…。それに木刀を一本持って行くか…などと心を巡らせていた。ただ、左馬介にも迷う事柄はあった。出で立ちである。道場の稽古着で出るのか、或いは山中の冷えも考慮に入れ厚着で出て、稽古着は木刀に結わえて行こうか…といった事柄であった。
 食後、左馬介が口を噤んで膳を片付けていると、左隣へ寄り添うように近づいた鴨下が小言で語り掛けた。


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