水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景(第六話) 肩叩き  <推敲版>

2010年02月18日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景

      
(第六話)肩叩き <推敲版>           

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]


○ 庭 夕方
   庭に打ち水をしている正也。縁台に座って肩を摩(さす)る恭之介。縁側の床板の上で心地よく寝
ているタマ。その横で二人を見つめ
   るポチ。ひと息、入れる正也。
  正也M「じいちゃんが、珍しく肩を摩っている。じっと見ていると、今度は首を右や左に振り始めた。縁
台に座るじいちゃんと庭の風情
       が、実によくマッチしていて、どこか、哀愁を感じさせる」
   西山へ帰っていく鴉の鳴き声。オレンジと朱色に染まった空。白色に近い煌めきの光線を放ち、西
山へ近づく夕陽。

○ メインタイトル
   「夏の風景」

○ サブタイトル
   「
(第六話) 肩叩き」

○ 庭 夕方
   バケツを片づけ、恭之介に近づく正也。
  正也  「じいちゃん、肩を叩いてやろうか?」
  恭之介「ん? ああ…正也か。ひとつ頼むとするかな。ハハハ…わしも歳だな(少し気弱に云い、小
笑いして)」
  正也M「気丈なじいちゃんの声が、幾らか小さかった」
   恭之介の後ろに回り、肩を叩き始める正也。
  恭之介「ん…よく効く…効く(気持よさそう)」
   暫(しばら)く叩く正也。
  恭之介「すまんが今度は軽く揉んでくれ(優しい声で)」
   素直に、叩きから揉みへと動作を移行する正也。
  恭之介「ああ…、うぅ…。お前、上手いなぁ…」
  正也  「へへっ…(照れて、可愛く)」
   揉み続ける正也。心地よさそうな表情の恭之介。
  正也M「僕の下心を既に見抜いているなら、じいちゃんは大物に違いない。案の定、ひと通り終えた
頃、じいちゃんの方から仕掛けてき
       た。これには参った」
  恭之介「え~正也、何か欲しい物でもあるのか?」
   ギクッ! として、動作を止める正也。
  正也  「うん、まあ…(可愛く、暈し口調で)」
  恭之介「男らしくはっきり云え。買ってやるから…」
  正也M「僕は遂に本心を露(あらわ)にして、玩具が欲しいと云った」
  恭之介「では、明日にでも一緒に店へ行ってみるか…」
  正也  「ほんと?(可愛く)」
  恭之介「武士に二言はない!(厳しく)」
   廊下のガラス戸を開け、呼ぶ未知子。
  未知子「夕飯ですよ~、お父さん。正也も早く手を洗いなさい」
   すぐに窓を閉め、引っ込む道子。
  恭之介「さあ飯だ、飯だ」
   縁台を勢いよく立つ恭之介。恭之介の頭に止まる一匹の蚊。
  恭之介「コイツ!」
   自分の頭をピシャリと叩く恭之介。スゥ~っと飛び去る蚊。
  恭之介「殺虫剤を撒かないと、このザマだ、ハハハ…(声高に笑い)」
   山へ沈む夕陽と、夕陽を受けて輝く恭之介の頭。
  正也M「僕は光る蛸の頭をじっと見ていた。夕陽とじいちゃんの頭が、輝いて眩(まぶ)しかった」

○ エンド・ロール 
   庭の夕景とオレンジ、朱色に染まる夕空。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 夏の風景☆第六話」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第七回

2010年02月18日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第七回
 幻妙斎が枕辺に現れたれたのは、左馬介が幾度か目覚めた深夜った。夜は深々と更け、時は既に丁夜(ていや)・四更、丑の刻
である。
 魘(うな)されつつも、左馬介は浅い眠りについていた。その枕辺に、
ふと声がした。
「左馬介…眠っておるのか?」
 過去に耳にしたことのある声であった。左馬介が薄目を開けると、真上から覗き込む幻妙斎の白髪の姿があった。返答しようとするが、何故か口が動かない。それに似た状況を左馬介は以前、体験したことがあった。それは幻妙斎が幾度(いくたび)か左馬介の前へ出現した内の一度(ひとたび)であった。朧気ではあるが、左馬介
の視覚は明確に師の姿を捉えていた。
「御事に云っておきたいことが有る故、斯(か)く罷り越した」
 大仰な物云いではあるが、その云い回しこそ紛れもなく幻妙斎であると左馬介を確信させた。しかし、姿と言葉から師と理解した筈が、左馬介は幻妙斎へ返せない。それどころか、臥した状態から上半身を起こせない。どういう訳か身体が金縛りにあったようで、動こうとしても動けないのだった。これが起きて後に、あの出来事夢だったのか…と、左馬介に思わしめた所以(ゆえん)である。


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