水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 春の風景(第十話) 小さな幸せ  <推敲版>

2010年02月08日 00時00分01秒 | #小説

  ≪脚色≫

 

      春の風景

      
(第十話)小さな幸せ <推敲版>                    

    登場人物 
                           
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   その他  ・・猫のタマ、犬のポチ

○ とある田園風景 早朝
   晴れた空。水田の田植え作業の風景。
  正也M「今年も、あちこちで田植えが始まっている。まずは田の中に水が張られ、耕運機がコネクリ回して水田化し、秘密レシピの肥
       料等も播(ま)かれる。それが終わると、暫くは水稲苗の到着を待つ。勿論、苗は苗で、苗作り作業がある。昔は手作業で一株
       ずつ植えられたようだが、昨今は機械で瞬く間だ」
   田植えの終った水田。春風に戦(そよ)ぐ苗。

○ メインタイトル
   「春の風景」

○ 
サブタイトル
   「
(第十話) 小さな幸せ」

○ 洗い場 早朝
   木刀片手に、湧き水で身体を拭く恭之介。ポチの散歩へ出る前の正也。
  恭之介「賑やかな音がし出したな。もう、こんな時期になったか…。一年は早い(独り言)」
   バタバタして玄関を飛び出してきた恭一。
  恭一  「お父さん、行ってきます!(忙しなく)」
   後ろ姿の恭一へ言葉を投げ掛ける恭之介。
  恭之介「おっ、恭一。今朝は偉く早いじゃないか。何かあったのか?! 飯、食ったか?!」
  恭一  「はいっ! 会社の急用でして…!(玄関戸を開けて)」
   息を切らしながら言葉を返す恭一。玄関戸を閉め、家外に消える恭一。
  恭之介「なんだ、あいつは…(呆れて)。正也、それにしても珍しいな、恭一の奴がこんな早く出るとは」
  正也「そうだね…(ポチのリールを持ったまま、可愛く)」
   ポチの散歩で、家を出る正也。
  正也M「僕も学校があるから、そう長くはじいちゃんの話に付き合ってられない(◎に続けて読む)」

 ○ C.I 玄関 内 朝 
   ポチのリードを犬小屋へ繋いだ後、餌をやる散歩帰りの正也。美味そうに食べるポチ。クゥ~ンとひと声、正也を見て鳴く。ニンマリし
   て靴を脱ぎ、玄関を上がる正也。
  正也M「(◎)ポチの散歩を終え、小屋へ繋いだ後、餌をやる(△)に続けて読む」

○ C.I 台所 朝
   片隅に置かれた猫食器に餌を入れる正也。タマが食器を見遣り、ニャ~と鳴く。ニンマリする正也。
  正也M「(△)当然、タマにも餌をやる。餌代はお年玉とお小遣等の収益で賄われている。歳入歳出の決算や監査がない、云わば勝手
       気儘(まま)なものだ」

○ 台所 朝
   食卓を囲む恭一を除く三人。朝食を食べている三人。
  恭之介「未知子さん、珍しいですな。恭一が、こんな時間から…(手を止め、斜向かいに座る道子を見て)」
  未知子「ええ、…よくは分からないんですけど、社内旅行の幹事の打ち合わせだとか…」
  恭之介「えっ! 仕事じゃないんですか? …このご時世に、結構なことだ!(半分、あきれ顔で)」
  未知子「はい。でも、あの人、会社での人望は厚く、評判は、いいようですよ」
  恭之介「そりゃ、そうでしょう。旅行部長、歓送迎会の宴会部長と、偉いお方なんですから…」
   苦笑いして話題を変える未知子。
  未知子「田植えのようですね…」
  恭之介「はい、今年も始まったようです」
   急に、対面の正也をギラッ! と見る未知子。
  未知子「正也! 急がないと遅刻するでしょ!」
   急いて食べ終え、立つと食器を炊事場へ運ぶ正也。炊事場から恭之介の後ろを通り、子供部屋へ向かう正也。正也を見て、無言で
   ニタリと笑う恭之介。
  正也M「僕に、とばっちりが飛んできたので、緊急避難を余儀なくされた。じいちゃんの頭の照りは今朝も健在で、少しオーバーぎみの
       表現だが、光り輝いて眩いばかりだ。何気ない、春の朝の小さな幸せと、輝く頭…。そんな情景が僕の春を祝福している」

○ エンド・ロール
   春の湧水家の遠景。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O


※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「春の風景(第十話) 小さな幸せ」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖③》第二十五回

2010年02月08日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖③》第二十五回
安全と同時に、抜け出せる困難さも含んでいるのだ。賊は匕首(あいくち)を片手に握り、前方からの侵入に備えて威嚇(いかく)
する。
 その時、左馬介、鴨下、長沼、そして賊の四人へ何処かからか
声が響いた。
「ははは…。御事ら、つまらぬことで騒いでおるのう。恰(あたか)も
独楽(こま)鼠の如きじゃて…」
 四人の顔が声のする方向へと一斉に動く。土塀の上には、悠然と杖を突いて立つ幻妙斎の姿があった。いつ現れたというのか…。誰しも知らぬ、ほんの束の間の出来事であった。神の降臨とは正にこれだ…と、
左馬介は瞬時に思った。
「そこのお方、峰三郎の部屋に目ぼしい物はござったかな? この道場に住まい致す者で金目ごときを隠し持つ者は恐らくいない筈
じゃがのう…」
 そう云うと、幻妙斎はふたたび声高に笑いながら話を続けた。
「裏門を開けておいた故、そこより逃げらるるがよかろう。皆の者、
手出しは一切無用!」
 言葉が途切れると同時に幻妙斎の姿は土塀から消滅していた。現れた時と同じく、疾風の如き身軽さであった。


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