水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 秋の風景(第一話)キノコ採り <推敲版>

2010年02月27日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      秋の風景
 
     
(第一話)キノコ採り <推敲版>           

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

○ とある山道 朝   
   蒼々と澄み渡った青空。黄橙に色ずく山の遠景。心地よい朝の陽射し。山道を歩く正也、恭之介の遠景。山道を長閑に歩く二人の
   近景。    
  正也M「今日は天気がよいので、裏山へキノコ採りに出かけた」
  正也 「よく晴れたね、じいちゃん!(ウキウキした口調)」
  恭之介「ん? そうだな…(青空を見上げて)」
  正也 「僕、初めてだよ、山は…」
  恭之介「ほお、そうだったか? 儂(わし)が元気なうちに、正也に、いろいろ教えておいてやろうと思おてな…」
  正也M「何を? と訊くと、じいちゃんはキノコのことを語りだした」
   笑って歩く二人の近景。笑って歩く二人の遠景。
   朝日を浴びる山の木立。小鳥の囀り。広がる青空。

○ メインタイトル
   「秋の風景」

○ サブタイトル
   「
(第一話) キノコ採り」

○   同  朝
   蒼々と澄み渡った青空。黄橙色に色ずく山の遠景。心地よい朝の陽射し。緩やかな山道の傾斜を登る二人。
  恭之介「この辺りは、シメジだ。ずっと登った向うの赤松の一帯はマツタケがよく出るな…」
  正也 「そうか! なるほど…」
   真剣に聞く正也。講釈する恭之介。
  正也M「一生懸命、さも、専門家きどりで得意満面なじいちゃんの鼻を、へし折るのも如何かと思え、僕は、そ知らぬ態で聞き上手に
       なった」
   足を止める二人。辺りを見渡す恭之介。
  恭之介「どれ、ここから入るか・・」 
  正也 「うん!」
   山道から木々の茂みに分け入る恭之介。後方に従う正也。

○ 山中・木々の茂み 昼
   キノコを散策する二人。なかなか見つからない正也。すぐ見つけ、収穫する恭之介。それを見て、恭之介に駆け寄る正也。楽しそうに
   話す二人。
  正也M「僕達は、快晴の蒼々と広がる空と澄みきった空気を満喫しつつ散策を楽しんだ」

○ 山中・平坦地 昼
   下界の展望が利く山の平坦地に座り、弁当に舌鼓を打つ
   二人の姿。青空にポッカリ浮かぶ秋の雲。
   O.L

○ 家の洗い場 昼下がり
   O.L 
   青空にポッカリ浮かぶ秋の雲。洗い場でキノコを洗う正也。
 正也M  隣りで身体を冷水で拭く恭之介。
  「じいちゃんは年の功というやつで、キノコ採りの名人と思えた。収穫量は、まずまずだった」
   部屋の外窓を突然、開ける恭一。正也か洗う下の洗い場を見下ろす恭一。
  恭一 「おお…、随分、採れたじゃないか!」
   手を止め振り返り、見上げる正也。
  正也 「松茸に黄シメジ、…ナメコもあるよ」
  恭之介「お前も来りゃよかったんだ…(身体を冷水で拭きながら)」
  恭一 「今日は生憎(あいにく)、会社から持って帰った仕事がありましたから、ははは…又(また)。又、この次に…(軽い笑いを交え
       て)」
  恭之介「お前のは、いったいどういう又なんだ?又、又、又、又と、又の安売りみたいに…(少し怒り顔で)」
   洗いながら、二人の遣り取りを眺める正也。
  正也M「上手いこと云うが、じいちゃんは相変わらず父さんには手厳しい。父さんも只者ではなく、馴れもあって、そうは気に留めてい
       ない」
  恭一 「安売りと云やあ、この不況で私の会社の製品、値下げなんですよ」
  恭之介「そんなこたぁ、誰も訊いとりゃせん!(怒って)」
   返せず、沈黙する恭一。台所の戸を開けて出てくる未知子。
  未知子「ナメコとシメジは汁物にして、松茸は炊き込み御飯と土瓶蒸しにでも…(キノコを眺めながら)」
  恭一 「偉く豪勢じゃないか…(未知子に向って)」
  未知子「あなたの給料じゃ、手が出ないわ(窓を見上げて、嫌味っぽく)」
  正也M「母さんは珍しく嫌味を云った」
  恭之介「…その通りだ、恭一。未知子さん、上手いこと云いました。これはタダですからな」
   しくじったか…という態で、窓を少しずつ閉じる恭一。

○ 台所 夜
   四人の食事風景。賑やかに語らう恭之介、未知子、正也の三人。テレビを見つつ、一人、黙々と箸を動かせる恭一。
  正也M「その晩は賑やかにキノコ料理を堪能した。でも、父さんだけは一人、黙々と箸を動かせていた」

○ エンド・ロール
   テーブルに並べられたキノコ料理を食べながら談笑す
   る家族四人。
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど
   F.O

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「短編小説 秋の風景☆第一話」をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《教示①》第十六回

2010年02月27日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《教示①》第十六回
 その証拠に、先に投げ落とされて摑んだ木刀が、しっかと手に握られ金縛りに遭遇したかのように離れない。これが、左馬介自らの
意志ではないことを如実に物語っていた。
━ このお方は、人の動きまでも自由に操れるのだろうか… ━
 そんな素朴な疑問が、ふと左馬介の脳裡を過った。焚き木は相
変わらずパチパチと音をたて勢いよく燃え続けている。
「一太刀、相手をしようと思うがのう…。その前に云っておくことが
ある」
 幻妙斎の白髭が、ふたたびモゾっと動いた。左馬介は一瞬、ギ
クッ! とした。
「この世に長居致したが、この儂(わし)もそう長くはない。何れは、この妙義山に朽ち果てるであろう。故にのう、汝にはそれ迄に堀川の
流儀を全て伝えたいと、ここに呼んだ次第じゃ」
 左馬介は耳を欹(そばだ)てて幻妙斎の声に全神経を集中した。
「今日はこれ迄にする。もう山を降りい。明後日より今、遣わした木刀を持ち、ここへ来るがよい。一日に付き、一(ひと)太刀を遣
す」
 左馬介は言葉が出ず、黙って頭(こうべ)を垂れ一礼した。そして、ゆったりと腰を上げると一目散に岩場を駆け下りていった。


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