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「世界大学ランキング」にまどわされるな!

2017年02月03日 | 新聞・テレビ

「世界大学ランキング」として、上海交通大学作成の「世界学術ランキング(以下ARWU)」、イギリスの高等教育専門週刊誌『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』が公表している「THE世界大学ランキング」、そして、イギリスの大学評価機関「クアクアレリ・シモンズ社(Quacquarelli Symonds :QS)」が公表している「QS世界大学ランキング」の3つが広く知られている。

 

その他に、フランスやオランダなど各国も「世界大学ランキング」を公表していますが、そのランキングは上記3つのランキングと大きな差異があるのです。フランスやオランダのランキングでは、トップ10に東京大学や京都大学、早稲田大学が入っています。

 

代表とされる3つのランキングのうち、上海交通大学の「ARWU」は大学規模に比例するよう定義されており、ランキングとして参照すべきでないと考える。例えば、仮に旧七帝大が合併して一つの大学となっただけでおそらく「世界一」の大学となってしまうといった不思議な性格を有するからです。

 

残るTHEおよびQSのランキングについても、最大のスコア構成要素である「評判」が規模に依存するという点で、程度はARWUほどではないものの同様に異論がある。THEとQSのランキング作成手法はよく似ており、2つのランキングの結果も似たような傾向を示している。

 

しかし、2015年上位100位に入った日本の大学数はTHEランキングで2大学、QSランキングで5大学であるなど、それなりに違いもある。また、QSランキングで順位を上げている日本の大学が、THEランキングでは順位を大きく下げているなど、奇妙な現象も出ている。

 

算出手法が似ているとはいうものの、両者が独自の観点でランキングを作成するのだから、異なる結果を示すのも当然ではあると言えるが、それでもなお釈然としないものがある。

 

そもそも、これらの評価項目はどうなっているのだろうか。日本のメディアがいつも取り上げる「QS世界大学ランキング」で見てみよう。

 

QSの評価指標は6項目あり、それぞれに評価配分がなされている。

➀各国学者のピア・レビュー・・・40%

②雇用者の評価・・・10%

③学生一人あたり教員比率・・・20%

④教員一人あたり論文引用数・・・20%

⑤外国人教員比率・・・5%

⑥留学生比率・・・5%

 

このような学者・雇用者の個人的な評価や論文引用数など数値化や検証が難しい指標でランキングしていることに問題がある。作為的な評価が可能だという点が問題だと思うのです。その評価結果を「権威あるもの」として絶対視して対応することに疑問があります。

 

日本では、このランキングを影響力の強い指標とメディアが取り上げ、日本の大学のランク低下による凋落ぶりを嘆いているのです。そして、日本政府は2015年11月に「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上を入れる」——。こんな国家目標まで掲げたのです。

 

はたして、その数値目標は正しいものなのか。順位の算出方法をよく知る専門家は「大学ランキングに一喜一憂、右往左往すべきでない」と指摘するのです。

 

それは、昨年11月にOECD(経済協力開発機構)が発表した「成人の読み書き能力」のランキングでは日本が1位に輝いているからです。この能力テストは加盟24カ国の16~65才、約15万7000人を対象に実施されました。

 

調査項目は社会生活において成人に求められる能力のうち、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力の3分野のスキルの習熟度を調査したものです。

 

「世界大学ランキング」の欠陥は、「大学で学んできた学生たちの能力」を真っ当に評価していないことです。これをOECDは調査したのです。OECDは、さまざまな国の成人の「能力」を比較するため試験を行い、結果を明らかにしたのでした。

 

その評価は数値化された客観的な指標です。その結果、日本がランキングトップとなったのです。これはたまたまではありません。初めて調査した2013年も日本がトップでした。

 

OECDが発表した「成人の読み書き能力」のランキングは以下のとおりです。

1位 日本

2位 フィンランド

3位 オランダ

4位 スウェーデン

5位 オーストラリア

6位 ノルウェイ

7位 ベルギー

8位 ニュージーランド

9位 イギリス

10位 アメリカ

 

英インディペンデント紙は、「英国は日本や他のヨーロッパ諸国よりも下位だった」と、この結果を懸念した内容で報じています。同紙は、この結果を踏まえた上で、アメリカやイギリスは世界大学ランキングの上位を占めているのに、OECDのテスト結果ではなぜ上位ではないのか、といった疑問を投げかけていました。

 

こちらが、イギリスの大学評価機関が毎年発表している「QS世界大学ランキング」です。

1位 マサチューセッツ工科大学 (アメリカ)

2位 スタンフォード大学 (アメリカ)

3位 ハーバード大学 (アメリカ)

4位 ケンブリッジ大学(イギリス)

5位 カルフォルニア工科大学 (アメリカ)

6位 オックスフォード大学(イギリス)

7位 ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)

8位 チューリッチ工科大学(スイス)

9位 インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス)

10位 シカゴ大学 (アメリカ)

 

ご覧の通り、ランキングを見てみると、アメリカやイギリスの名門校が上位を独占しています。しかし、OECDのランキングに名を連ねる国は、トップの日本を含め1つもありません。

日本の大学はというと、東大が39位、京大が91位。アジアではトップのシンガポール国立大が24位、北京大が29位でした。

 

国際的な指標として知られるこの2つのランキングの違いは何でしょうか?

 

根本的には対象者やランキングの評価基準が違いますが、どちらかというと、OECDはテスト結果に基づいているので、各国の学力をフェアに比較することができます。

 

インディペンデント紙は、OECDのトップ35カ国の中で、日本は高学歴者が最も多く、2位のフィンランドも同じ状況で、どちらの国も15歳の生徒を対象にした「国際学力調査(PISA)」でも上位を占めていることを指摘したのです(このランキングでは日本は4位)。

 

つまり、日本やフィンランドは子供も大人も国際的に学力が高いということが言えます。一方、「大学ランキング」のトップを占めているアメリカはどうでしょう。

 

BBCの記事で、「アメリカは大学レベルの二極化が激しいから順位が低くなった」と説明している。でも、それは日本でもFランク大学(ほぼ合格率100%の大学)もあるので言い訳に過ぎない。2013年、初回の調査結果が発表された際に、ワシントンポスト紙は他国と比べて、アメリカ人の大人の学力が低いことを深刻な問題として報じていました。

 

今回のOECDの調査結果で、まだ凄いところがありました。それは、最終学歴が「中学卒業」の日本人の「読解力」は、アメリカやドイツなどの「高校卒業」の人たちよりも高かったのです。もちろん、日本の中卒のランキングは1位でした(高卒はオランダ、フィンランドに続き3位)。

日本は学歴や職業による得点差が小さく、全体的に高い能力を持っていると分析されたのです。

 

「世界大学ランキング」とは違ったOECDの調査結果をみると、日本の学力の高さが改めて分かったということではないでしょうか。この結果だけで、日本が天狗になることはありませんが、自信を持って世界に挑戦してもよいのではないでしょうか。

 

アメリカやイギリスが発表する世界の大学を順位付けした「世界大学ランキング」は、留学生を呼び込んで稼ぐ為の指標としか私には見えないのです。そこには日本の大学を低く抑えている偽ニュースに感じるのですが、みなさんはどのように感じられましたか。

 

---owari---

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