千葉大学元名誉教授 清水馨八郎先生著 〔日本文明の真価〕より抜粋したものです。
言語学者によると世界には2794の言語があるという。
その中で日本語は、仲間を探すのが困難で、ひとり孤立した言語であるといわれている。
同じ漢字文化圏と言いながら、中国語とは文法、発音がまるで違う。日韓は文化同源といわれ、語順こそ共通点があるが、ヨーロッパの英独仏語間の類似性を、日本語と韓国語の間に見ることができない。
日本語は世界の言語地図の孤児である。だから他の言語にない様々の特徴がある。そのうち最も著しい違いを三つあげよう。
まず欧米語がアルファベットのわずか26文字を主体に表現されるのに、日本語は片仮名、平仮名、漢字と三種類の文字を持ち、さらにそれを自由に組み合わせて使用するきわめてまれな言語だ。
その二は、欧米語が表音文字の組み合わせ、中国語が表意文字の組み合わせなのに対して、日本語は仮名の表音と漢字の表意文字を組み合わせている。
第三にまったく同じ名詞や事柄に、少なくとも三通りの表現が使われていることである。それは和語(大和言葉)と漢語と洋語の三本立てである。
たとえば、和語で「うち」は漢語で「家庭」となり、洋語では「ホーム」となる。和語の「知らせ」は「報道」となり、「ニュース」となる。また、漢字には音読みと訓読みがあり、こんなわけで日本語は単語の数が世界一多い。
日本人は直感的に理解できる漢字の便利さになれているので、カナだけの文章やローマ字は煩わしくて読む気がしない。日本語がもし、英米語のように仮名だけで成り立っていたら、日本の文化は今日のようにな繁栄をきたしていただろうか。
否である。
日本文化と社会の発展や活力は、日本語によってもたらされたといって、過言ではない。
そして、言語は話す人の性格にどう影響するのか?
毎日毎日話す言葉は、世代を超えてその民族の性格、国民性を創る重要な要素である。
このことについて、台湾人で中国語と日本語を話せる女性について語っている。
彼女は中国語を話しているときは中国人になり、日本語を話すときは日本人になりきっている。
彼女は自分たち台湾人の中には二人の人格が共存しているのだという。
中国語で話しているときは自然と攻撃的な人間になっている。大声で話し、ジェスチャーも大袈裟になる。
両手を振り回し、口から泡を飛ばすほどの勢いで話す。さもないと相手に負けると思うからだという。
しかし、日本語で話すときは違う。声も自然と穏やかに、小さくなるし、身ぶりも控え目になるとのことです。
言葉は人を創る、日中両国の海洋性と大陸性の違いが言葉を決定する。日中の言語は同文同種どころか、アベコベであることが分かる。
今、世界では日本語教室で学ぶ人が増えている。学ぶきっかけはアニメや漫画であったり、カラオケであることも多いが、漢字をかっこいいと感じ、日本語を話すと落着き、癒されると言う。
これも、日本ブームの背景にあるのかも知れない。
---owari---
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