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童謡・唱歌は心に深く響く

2017年01月21日 | 音楽

日本の童謡・唱歌には季節や四季折々の行事にあった様々な歌があります。それらの歌は郷愁をさそうものもあり、また人それぞれの人生で心にしみるものがあります。わが国では明治以来近代化を進める上で国民教育に力を入れてきました。その中で唱歌教育を採り入れたのでした。

 

日本の童謡・唱歌は数百曲以上あると思われます。ネットで調べても明確な数値がつかめませんでしたが、書籍として「みんなの童謡200」や「日本の童謡200選」が出版されているので、それ以上あると推定しています。

 

童謡は子供に歌われることを目的に作られた創作歌曲で、童心を表現した、子供のための歌や詩です。唱歌は明治時代から大正、昭和にかけて小中学校での音楽の授業で教えるために作られた歌ということです。

 

唱歌は、♪春高楼の花の宴……など子供にとって意味が取りずらい、難しい歌が多かったので、そこで子供にも分かる詩で歌を作ろうと、童謡運動がはじまったわけです。

 

それでは、童謡・唱歌の人気ランキングはどのようになっているのでしょうか。

このランキングはアンケートの対象者や収集した時期によって変わってきますので、あくまでもご参考として見てください。

 

少し古いランキングとなりますが、2003年に「歌い継ぎたい日本の愛唱歌」が海竜社から出版されました。歌い継ぎたい日本の歌は何か、という素朴な疑問から行なったアンケートがきっかけとなって出来たものですが、その集計結果をご紹介します。

 

アンケートの対象者は、詩人、作家、作曲家、声楽家、音楽指導者などの専門家を中心に、教育学・福祉論・社会学などの学者や専門家、国際政治学者、ジャーナリスト、団体関係者など650人に10曲の推薦を依頼したものです。「ベスト100」が選ばれていますが、今日はベスト10をご紹介します。

 

①    故郷

②    荒城の月

③    あかとんぼ

④    花

⑤    朧月夜

⑥    さくら

⑦    雪の降る町を

⑧    早春賦

⑨    椰子の実

⑩    浜辺の歌

 

ベスト10にはランクインはしませんでしたが、11位以下も有名な曲が続きます。

⑪    夕焼小焼  ⑫ 川の流れのように  ⑬ この道  ⑭ 里の秋  ⑮ 春の小川

 

恐縮ですが、私の好きな曲をご紹介します。名曲が多すぎるので選択が大変難しかったのですが、一番は「故郷」です。この曲以外に四季それぞれを代表して選んでみました。

春・・・「早春賦」

夏・・・「われは海の子」

秋・・・「紅葉」

冬・・・「冬景色」

これ以外では、「仰げば尊し」「冬の星座」がとても好きな歌となります。

 

「早春賦」は作詞者の吉丸一昌さんが、大正の初期に長野県安曇野を訪れ、穂高町あたりの雪解け風景に感銘を受けて「早春賦」の詩を書き上げたとされています。題名に譜面の「譜」でなく、「賦」という漢字を使っていますが、「賦」は美文韻の詩文に使われる文体の一つとされています。とても美しい歌詞です。

 

「われは海の子」はなかなか元気の出る明るい曲だと思います。周囲を海に囲まれた日本は「海の国」を感じるのです。

 

「紅葉」は作詞者の高野辰之さんが、碓氷峠にある信越本線熊ノ平駅(現在は廃線)から紅葉を眺め、その美しさに惹かれてこの詞を作ったといいます。今の子ども達にも充分理解ができる歌詞表現となっています。

 

「冬景色」は真冬の歌ではなく、霜が降りてこれから厳しい冬を迎える初冬の情景をよくあらわしたものです。作詞作曲者が不詳のため、景色の場所が特定できませんが、「湊江」となっているので、入江か湖畔の風景を感じるのです。水辺の朝、田園の昼、里の夕方が描写されており、美しい日本の国土を謳い上げています。

 

ここで、童謡・唱歌にまつわる謎(?)について、少しご紹介します。

「アルプス一万尺」の原曲はイギリス民謡ですが、スイスやフランスの「アルプスの少女・ハイジ」の世界だと思っておられませんか。実はこのアルプスは、日本のアルプスのことです。日本アルプスの中の飛騨山脈を有する北アルプスを歌ったものだということが判ったのです。その鍵が、“こやり(小槍)”にあったのです。

 

“小槍”とは、北アルプスの槍ヶ岳の隣にそびえる、槍のようにとがった山です。その小槍、高さが3030メートル。なんとこの長さは、ズバリ! 一万尺なのです。小槍は14〜15階のビルに匹敵するロッククライミングな「壁」になりますので、気軽には登れません。この小槍に登りついた登山者が、うれしさのあまりに歌に出てくる「アルペン踊り」を踊ったと言うことなのです。

 

それから、「どんぐりころころ」の出だしを唄ってみてください。「♪どんぐりころころ どんぐりこ……」と歌う人が多いのですが、間違っています。答えは“お池にはまってしまう”ので、「♪どんぐりころころ どんぶりこ……」でなくてはいけないのです。

 

最後にもう一つ、「この道」の作詞をした北原白秋さんは、九州福岡の出身です。きっと幼い日に通った福岡の道だと、想像していたのですが、なんと「この道」は札幌北一条通の歌だったのです。白秋が晩年に旅行した北海道の情景が歌い込まれています。確かに歌詩に、「♪白い時計台だよ……」というくだりがあるのです。時計台は札幌のシンボルです。一方で、母の実家である福岡県南関町から柳川までの道の情景も歌い込まれているともいわれています。

 

童謡・唱歌には知られざる意味が隠されていることがあります。童謡・唱歌の謎や勘違いはまだまだあるのですが、これ以上は割愛いたします。

 

日本の童謡・唱歌が何度聞いても飽きないのは、日本の原風景というべき四季折々の情景を歌が持っているからでしょうか。歌詞のなかの情景が大いに癒しを与えてくれるのです。

 

今残っている歌は、言葉とメロディが一体化していて、自然と歌の背景が浮かんでくるものばかりです。詩の言葉や、うたわれている具体的な風景を知らなくても、歌に込められたものを深く感じることができるのです。

 

この国の季節の移り変わりや時代背景、そして作者の思いなど、様々なエピソードを持つ童謡・唱歌。

伝え続けたい童謡・唱歌の心、それは立派な日本の伝統文化です。そこには懐かしい日本の原風景が見えてくるのです。

 

「故郷」のメロディは端正で清らかです。この歌がある限り、歌い続けている限り、日本人の心から「思いやり」が消えることはないでしょう。

 

歌詞にある「かの山」や「かの川」はどこの風景か特定されない表現になっていますが、歌う人それぞれが自分の故郷を思い浮かべ、感情移入することができるのです。

 

日本のどこで歌われても郷愁を呼び起こす「故郷」は日本人一人ひとりの心に響き続けています。

 

このような精神性豊かな言葉とメロディを残してくれた明治・大正・昭和(戦前)の作詞・作曲家に対し、私たちは敬意を払わなければならないのです。

 

---owari---

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1 コメント

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納得です。 (グミちゃん)
2017-08-16 23:28:56
涙が出てくるです。
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