桂離宮。初めてここを訪ねたのは、いまから十九年前の秋のことでした。年月をへて、自ら変わって、これを再見するとき、いかにこの名園の、無意識に根を下ろして生彩を放ちつづけているかに驚かされます。
一季節から他の季節へと、庭園変わって、また変わらず。諸々の点景を結びつけている調和は不変なのです。そのように、人は、その胸中を占める種々(くさぐさ)の思いも面影もすべて消えはてて、そののちに、心底に不易のものありということに気づくのでありましょう。
絶えざる変貌という点において、桂離宮は、我々自身の内なる生命の反映といえます。我が心のなかで、それは、死の観念の鎮めとなってくれました。
またも二十年後に還りきたし。
――この章は終わりです。
---owari---
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