(相手をほめるときの注意点)
ただ、これについては、もう一歩、踏み込んで述べておかねばならないことがあります。
それは、「相手の長所を見て、それをほめてあげることは大事だが、その心のなかに、『相手を利用しよう』という気持ちが入っていると、しばらくの間はうまくいったとしても、いつか必ず人間関係が破綻(はたん)し、失敗する」ということです。
相手をほめれば、向こうはとても喜ぶため、その人と仲良くなっていけるのですが、相手を何かに利用するつもりでほめている場合には、あとで必ず滝(たき)からダーンと落ちるように失敗するのです。
要するに、「相手をほめる」といっても、それが不正直なものや虚偽(きょぎ)に当たるようなものになってはいけないわけです。あるいは、相手から自分がよく思われたいがために、おべっかを使うのも、間違いに当たります。それを知っていただきたいと思います。
例えば、「〇〇原理」とよく言われる、ある新宗教の信者は、話をすると、よくこちらをほめてくるのですが、その言葉のなかに嘘(うそ)が入っている場合があります。つまり、「信者にしたくて、ほめているだけ」ということもあるのです。そのため、あとから、ほころびが出てくることもよくあります。
このように、別の目的があってほめている場合や、相手を利用しようとする気持ちがあってほめている場合には、あとで失敗することがあるので、気をつけなければいけません。
最初は、ほめ言葉でもって誰かを引っ掛けることができたとしても、やはり、どこかで、「この人は、何か違う目的があって、あるいは、私を利用しようとして、ほめていたのだな」ということが、ばれてしまい、最後には人の心が離(はな)れていきます。このあたりの加減(かげん)については気をつけなければいけないでしょう。
したがって、本心からほめなければいけません。「ここが素晴らしい。ここがよいところだ」と思う部分については、本心からほめることが大事であり、相手を利用しようとして、ほめすぎてはいけないのです。ここを理解(りかい)して押(お)さえておかないと、人間関係で間違いを生み、あとで苦しむことになります。
ほめた相手から、「最初は、あれだけほめてくれたのに、その後の対応が全然違うではないか。どうしてくれるのだ!」というように開き直られ、その人との仲がすごく悪くなることがよくあるわけです。
やはり、相手をほめるときには、うわべでほめるのではなく、本心から思ったことを言うべきです。「相手を利用しようと思わないことが大事である」と述べておきたいと思います。これも人間関係をよくするための方法の一つです。――この章は終わりです。
---owari---
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