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シリーズ・トランプ革命➀「トランプ大統領は、なぜTPPを離脱したのか?」

2017年05月25日 | 政治・経済

今日から3回に分けて、トランプ大統領が目指す「トランプ革命」についてお話します。

 

現在、トランプ大統領はコミーFBI長官の解任をめぐり、第二のウォーター・ゲート事件だとメディアから騒ぎ立てられ、窮地に陥っています。しかし、具体的な”ロシア疑惑“はまだ出てきていません。

 

ウォーター・ゲート事件というのは、5人の男が民主党本部のあった「ウォーター・ゲート・ビル」に忍び込んでスパイ行為を働いた、その理由は大統領が選挙で負けることを恐れたためという、ある意味では「セコい」犯罪だったわけです。

 

ウォーター・ゲート事件のニクソン元大統領は解任する権限のない特別検察官を辞めさせるために権限のある司法長官に命じたのですが、司法長官も司法副長官も拒否した上で、抗議の辞任を行ったものです。

 

今回のコミーFBI長官の解任は、大統領に直接の権限があり、問題はありません。また、今回は司法長官や司法副長官から「解任を提案」してきたものをトランプ大統領が承諾したもので、ウォーター・ゲート事件とは少し違います。

 

トランプ大統領から「フェイクニュース」とバカにされているマスコミ(主にCNN、ABC、ニューヨーク・タイムズなど)、CIAなど諜報機関、ナショナリスト、トランプを嫌う国際金融資本などが、「第二のウォーター・ゲート事件」として持ち上げて、大統領を辞任に追い込みたいと考えているのだと思うのです。それを望む敵はいまだ多いということなのでしょう。

 

昨年のアメリカ大統領選でアメリカのメディアはおろか日本のメディアやジャーナリスト、政治評論家の多くがヒラリー・クリントン氏の勝利を疑わなかったのです。

 

それで、トランプ氏が当選すると、「トランプ・ショック」だと騒ぎ立てたのでした。この状況はイギリスがEUを離脱したときも同様に彼らは見誤っていたのです。世界のメディアは世界の人びとの真意を理解できていなかったのです。

 

トランプ新大統領の当選は「トランプ・ショック」ではなく、「トランプ革命」だったのですが、メディアはアメリカ国民の真意を読めなかったのでした。

 

前置きが長くなりました。本題のTPP離脱の理由についてお話します。

 

TPPは、中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を中心とする経済網をつくり、「金を貸し付ける」と称して、自国のシーレーンを護ろうとしていることへの対抗策でもありました。

 

しかし、トランプ氏は、「TPPによって環太平洋諸国が連合したところで、強くはならない」というように見たのでしょう。これは、経済的なばらつきやモチベーション、社会的インフラ、道徳律、いろいろなもので落差がありすぎるため、うまくいかないということなのです。

 

確かに、「環太平洋の国々で自由貿易をやる」という考え方は、非常に理想的で、よいことように聞こえるかもしれません。

 

しかし、実際上は、TPP参加国の経済力にはそうとうの差があるわけです。そのため、全部で12カ国が入ったとしても、GDPで比べると、そのなかでアメリカのシェアは60パーセントもあります。ちなみに、日本は18パーセントぐらいでしょう。

 

これは、アメリカの富が自動的にほかの国に分配されていくことを意味します。自由貿易の結果、そのようになっていくと思われるので、その流れから護らなければいけないということでしょう。

 

それぞれの国の発展度に差があるので、完全な意味でのフリートレード(自由貿易)はなかなか成り立たない面があるように感じます。

 

アメリカ発信の「グローバリズム」がアメリカや日本の経済を衰退させました。

アメリカ人自身のなかにも、「グローバリズムによって利を食める」と考えた人たちはいたのだと思います。ただ、実際上は国内産業が壊滅していきました。自動車産業も壊滅し、石炭産業も壊滅し、大勢の人が失業のなかに置かれて、さまざまなものが人件費の安い国に奪われています。

 

そして、そうした人件費のやすいところでつくられた商品がアメリカになだれ込むように輸入され、「もし、それが無関税状態で入ってくるようになれば、国内の雇用はいっそう悪化していくだろう」ということが、トランプ氏の考えたことでしょう。

 

トランプ氏はTPP離脱により、ずばり、中国の利益体質のところを減らそうとしていると見てよいでしょうし、それは軍事にもつながるものであると考えます。すなわち、「戦わずして勝つためには、そうせざるをえない」という考えではないかと思うのです。

 

これがオバマ大統領の戦い方であれば、中国の覇権拡大を止められず、本当にハワイまで取られる恐れがあります。それでは、すでに第一列島線、第二列島線のところまで完全支配に入っていこうとしている動きを止められません。したがって、「ここで中国の資金の元を止め、中国を利している部分を抑えなければならない」ということです。

 

要するに、中国製品がいくら安くても、関税をかければ高くなるわけです。もちろん、一時期、国民の不満は出るでしょうけれども、アメリカ国内のほうは、タンカーの片側から水が入ってきて傾いていたところを、排水することでバランスを元に戻す力はあるということでしょう。

 

自由貿易だけで富むわけではないのです。そのなかに、経済的強者と経済的弱者がある場合、「自由貿易」と称して垣根を外していくと、実際は、富が一方的に流れていくかたちになることがあります。ここのところの調整は非常に難しいのです。

 

この問題について、嫌われることを覚悟で言い出したトランプ氏は、ある意味で、とても頭のいい人でしょう。

 

トランプ氏が考えていることは、「この貿易構造を変えないかぎり、中国にお金が貯まり、アメリカの財政赤字や貿易赤字等が続いていく流れを止められないので、国内をもう少し富まさなければいけない」ということでしょう。

 

そこで、「国内の従業員を増やして失業率を減らしつつ、納税者を増やしていくことで国を充実させる」、また、「違法移民や犯罪者等を国内にたくさん溜めないようにする」といったことで、国の立て直しを図ろうと考えていると思います。

 

要するに、”沈没しかかっているタンカー“をもう一回浮かせようとしているわけです。これでもって、自由に意見を言えるようにしよう、政治的な意見も言えるようにしようという流れだと思います。

 

今、一つの考え方として、トランプ氏からは、原点に戻って、「二国間の貿易において著しい不均衡があった場合、これを調整する方法としては、やはり、国の関税自主権でもって調整すべきだ」という考え方が出てきたと思われるのです。

 

片方の国のみが一方的に儲けているような状況であるのは、やはり、おかしいと言わざるをえません。また、そうした状況でもって儲けたお金が、よいことのためだけに使われるならばともかく、軍事的拡張主義や核兵器の増大のために使われていくのであれば、たまりません。

 

そこで、「原点に戻り、もう一回、国対国における採算を見直そうではないか」というわけです。

 

「米国の企業は、あっさりと海外展開するのではなく、戻ってこい。海外で安くつくったものだから、アメリカで安売りができると思うなら大間違いだ。それを輸入するときに関税をかけてやる。海外に行ったら、35パーセントかけるぞ。一方、国内でつくるのは、国に奉仕しているから構わない」というようなことで、今、具体的に目に見えるかたちでの雇用をつくろうとしているわけです。

 

これは、経済面における「トランプ革命」の一つであると言えます。ただ、これが成功するかどうかについては、現時点では、分からない状態でしょうが、「実験する価値は十分にある」と思っています。

 

そのように、発想は経営者でありながら、「軍人としての発想」もしっかりと持っていると思われます。「まずは兵糧攻めからする」というのは、戦わずして勝つ方法の一つです。

 

要するに、「アメリカとの関係が悪くなると、中国が赤字になることだってありえる」という状態に持っていくことで、もう少し交渉ができるようになったり、言うことをきくようになったり、あるいは、「人権外交」などと言っても内容が通じる国になる、というような考えなのでしょう。

 

これは、「コロンブスの卵」的なものかもしれません。国家のよりいっそう発展したかたちと思われた「グループ的な国家の経営」については、EUのほうも破綻しつつありますし、太平洋圏でもそういうものをつくろうとしましたけれども、「これを弱いリーダーが引っ張っていくと、破綻する傾向が出てくる」というように見たということでしょうか。

 

おそらく、今後、「トランプ革命」によるメッセージ性には、そうとう強いものが出てくるでしょう。

 

アメリカが国内へ企業の呼び戻しに入り、雇用を生んで、税金も国内で払わせるということにすると、どうなるでしょうか。海外でいくら安くつくったところで、「輸入関税をかける」という強い方針を出せば、これは必ず波及するしかないので、やはり、ある程度、優位に立っていた国が、もう一段、経済的に内容をよくすることはできると思います。

 

その後、そうした経済的な力をどのように使うかというところについては、やはり、智慧でもって考えていくということでしょう。

したがって、「中国の一人勝ちを止める」ということであれば、TPPも一つの案ではあったけれども、「もう一回、関税の自主権を取り戻し、国対国の採算を点検していく」というトランプ型の考え方も一つの方法としてはあるでしょう。

 

元のレートもずっと“緩い”ままなので、これを”締め上げ“ていくことによって「適正なレベル」にまでしなければいけないわけです。そうすることによって、中国もそのようなことをできなくなってくるのではないでしょうか。

 

この考え方のなかにあるのは、「平等」ではなく、「公正とは何か」という考えだと思うのです。

こうした考えは、世界全体で共通認識を得るところまではまだ行っていないでしょうが、トランプ氏が狂っているわけではありません。彼の考え方のなかには、何らかの天才的なものがあるのではないかと感じています。

 

---owari---

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