「今の時代に生きる武士には、やはり情報を集めることが大切だ。それをどう分析し判断するかも大事だ」
という思いがあった。その意味で一豊は、
「おれほど情報をゆたかに持っている者はいない」
という自信がある。それは、今、大坂にいる千代が例によってせっせと手紙をよこすからだ。
決して、
「あなたを愛しています」
とか、
「ダレダレの奥様がどうなさいました」
というようなきまり文句は書いてこない。必ず、
「近ごろの大坂の状況」
を告げてくる。
それによって、たとえ九州にいても、一豊は中央の出来事が手に取るようにわかった。その中で必要なものは秀吉に伝える。秀吉は、
「おう、大坂ではそんなことが起こっているのか」
と目を細めて感嘆する。
そして、
「千代殿は筆まめでいいな。うちのねねはあまり手紙をよこさない」
とボヤく。
「山内一豊の女房は筆まめだ。それも必要な情報を絶えず伝える」
ということは、すでに武将たちの間でも有名だった。
---owari---
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