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日本を「わが国」と思う一体感のない人たち

2020年10月10日 | 日本
もう一つ、被災三県の瓦礫(がれき)処理の問題を取り上げよう。東京都が東北の自治体以外で初めて処理受け入れ表明したのは2011年9月末だが、直後から実際に岩手県宮古市の瓦礫の第一便30トンが到着し、処理を開始した11月3日までのあいだに、都には3328件のメールや電話が寄せられ、うち2874件が反対や苦情で、賛成などの声は200件だったという。

石原知事は11月4日の会見で、「みんなで協力しなければしようがない。自分のことしか考えないのは、日本人がダメになった証拠の一つだ。(放射線量などを)測って、なんでもないものをもってくるだから『黙れ』といえばいい」と語った。同感である。いまの日本人の「我欲」を嘆(なげ)いた石原氏ならではの言葉だといえる。

環境省によると、2011年11月の時点で瓦礫処理の受け入れを実施している市町村は東京都と山形県内6カ所、検討中は48カ所だという。震災直後の4月の段階で受け入れを表明していた572市町村から激減したわけだが、一度は受け入れに挙げた手を下ろさせたのは、主に住民の反対だという。

「放射能をばらまくな」「汚い」といった声に議会などが反応したのである。まさに「民意」がそこに向かえば、それを説き伏せる指導者はいないということを表している。石原氏と同じ決断がなぜ他の首長にできないのか。

もちろん、震災発生以後の政府の度重なる不手際による国民の不安や不信感もあるだろう。だがその根底にあるのはやはり「災前派=戦後派」の「我欲」である。彼らは、運命の過酷さがいつ何時自分に降りかかってくるかもしれないという想像力のない人たちで、日本を「わが国」と思う一体感のない人たちである。

(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)

---owari---
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