今回のシリーズは、毛利元就についてお伝えします。
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毛利元就は、よくこういうことを言った。
「トップが人を用いる時に、考えなければいけないことがある。それは、誰からも誉(ほ)められる者を、決して重い役につけてはならないということだ。その理由は、誰からも誉められる者は、断を下せないからだ。誰からもよく思われようとすると、たとえ悪事をした人間に対しても情け深くなる。そのために、評判はよくなる。
しかし、公平を求める人間からは批判される。したがって、真面目な者がしだいに仕事をしなくなる。こういうことを防ぐためには、やはり癖(くせ)があっても、あるいは一部で批判があっても、そういう時に断を下せる者を用いるべきだ」
現在のビジネス社会でも、よく″大過なくすごす″ということをモットーにしている人がいる。元就に言わせれば、
「そんな人間は、毒にも薬にもならない。いてもいなくてもいい」
ということになる。元就がもっとも嫌ったのが″家中無事″という言葉だった。元就は、「家中無事は、やがて家の乱れるはじまりだ」と戒(いまし)めていた。
(『歴史小説浪漫』作家・童門冬二より抜粋)
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