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『安倍晋三回顧録』にみる官僚との「暗闘」(後編)

2023年07月14日 | 政治・経済
政治家は省益しか考えない官僚とも闘わねばならない。民意の支持が最大の援軍。

(財務官僚の注射が効いていた民主党政権)
一方、省内一丸となって抵抗勢力となっていたのが、財務省でした。アベノミクスは財務省との戦いでした。

2012年の野田政権下において民主、自民、公明の三党間において取り決められた三党合意によって、「社会保障と税の一体改革」の一部として、従来5%の消費税率を、2014年4月1日から8%、2015年10月1日から10%とすることが定められていました。

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社会保障と税の一体改革は、財務省が描いたものです。当時は、永田町が財務省一色でしたね。財務省の力は大したものですよ。

時の政権に、核となる政策がないと、財務省が近づいてきて、政権もどっぷりと頼っています。菅直人首相は、消費増税をして景気を良くする、といった訳の分からない論理を展開しました。民主党政権は、あえて痛みを伴う政策を主張することが、格好いいと酔いしれていた。財務官僚の注射がそれだけ効いていたということです。
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(再増税延期のための衆院選挙)
「民主党政権の間違いは数多いが、決定的なのは、東日本大震災後の増税だと思います。震災のダメージがあるのに、増税するというのは、明らかに間違っている」

この思いで、浜田宏一エール大学名誉教授などと何度も議論し、日銀の金融政策や財務省の増税路線が間違っていると確信していきます。これによりアベノミクスの骨格が固まっていきました。

第二次安倍政権は、2012年12月にスタートしましたが、14年4月1日の消費税8%への引き上げは、3党合意通り、実施しました。谷垣禎一前自民党総裁など3党合意の自民党当事者たちが閣内でいる状況では、既定路線でいくしかないと安倍元総理は諦めていたのです。

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財務省はこの時、「いったん景気は下がってもすぐに回復する、谷が深ければ、それだけ戻ります」と説明していたのです。だけど、14年4~6月期のGDP(国内総生産)は年率で6.8%減となって、なかなか戻らなかった。財務省不信は一層強まりました。
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15年10月1日からの10%への再増税は何としても延期したいと考えました。

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増税を延期するためにはどうすればいいか、悩んだのです。デフレをまだ脱却できていないのに、消費税を上げたら一気に景気が冷え込んでしまう。だから何とか増税を回避したかった。・・・

増税論者を黙らせるためには、解散に打って出るしかないと思ったわけです。これは奇襲でやらないと、党内の反発を受けるので、今井尚哉秘書官に相談し、秘密裡に段取りを進めたのです。
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こうして消費増税延期を掲げ、衆院選で大勝することにより、民意の力で、財政再建を急ごうとする財務省や自民党の増税派を封じ込めることができたのです。

(国民が主権を行使するための基本姿勢)
安倍元総理は自民党総裁として、12年、14年、17年の衆院選、13年、16年、19年の参院選と、国政選挙で6連勝しました。この結果、首相として憲政史上最長の在任日数を記録しました。

この間、「安倍叩き」を社是のように行ってきた朝日新聞などの左翼メディアの攻撃にも関わらず、世論は安倍政権を支持してきました。朝日自体が行った世論調査でも、第2次安倍政権の7年8ヶ月を「大いに」17%、「ある程度」54%を合わせて、71%が「評価する」と答えました。

財務省を黙らせて第二次消費増税を延期できたのは、国政選挙での勝利でした。また、内閣法制局の憲法解釈を打破して部分的ではあっても、集団安全保障を認める解釈変更にこぎ着けたのも、国民の高い支持があったからです。逆に、厚労省のアビガン不承認なども、国民の側からの強い批判が噴出すれば、安倍政権を後押しして、圧力をかけられたでしょう。

安倍政権には保守側からも、靖国の参拝問題、韓国との慰安婦合意、延期させたとはいえ消費増税をしてしまった事に対する根強い批判がありました。しかし、80点の政権を20点足りない、という理由で支持しなかったら、政権が弱くなって、60点しかとれなくなってしまうのです。

政治家は常に諸外国との国益をかけた外交でぶつかりあい、国内では野党やマスコミの批判を乗り越え、さらには背後から弾を撃ってくる官僚とも闘わねばならないのです。そうした政治家の戦いに最大の力を与えるのが「民意」です。

安倍政権が、こうした内外背後からの攻撃によく耐えて、相当な政治的業績をあげたのは、民意の支持があったからでした。それは安倍晋三という一人の政治家の業績というだけでなく、左翼マスコミに操られずに主体的に安倍政権を支持した民意の勝利でもありました。これこそが「国民主権」の正道です。

我々有権者は、100点でないから政治家を見離すという姿勢は改めるべきです。60点の政権で、民意の後押しがなければ40点になってしまいます。民意の後押しがあれば、80点になるかもしれません。これが国民が主権を行使するための基本姿勢なのです。
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

---owari---
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