⑥今回のシリーズは、石田三成についてお伝えします。
三成は巨大な豊臣政権の実務を一手に担う、才気あふれる知的な武将です。
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石田三戌は、はじめて野望を持った。それは、
「秀吉にもし何かあった後は、秀頼公を擁して、織田信長公の志を継承して実現したい」ということであった。つまり、豊臣政権の継続性は願うが、しかし政治路線としては、
「秀吉のそれではなく、信長のそれを復活させる」
ということである。
石田三成は自ら言い出して、
「秀頼公への忠節の誓い」
ということを、しきりに口にするようになった。同志を語らって、誓紙を出した。そして、全大名にも、これを強要した。徳川家康は、
「石田、いったい何をはじめる気だ?」
と眉を寄せた。
しかし、この一連の行動に豊臣秀吉は気をよくした。
「佐吉の奴は、もう一度心を改めて、俺に犬のような忠誠心を発揮してくれる。可愛い奴だ」
と一時期の誤解とわだかまりを捨てて、三成にほとんどのことを託すようになった。まさかその三成が、自分の政治路線を放棄して、死んだ織田信長のそれを復活させようと思っているなどとは、微塵も考えなかった。
もう一つ、三成が心を決めたことがある。それは、
「この世の真実を、自分の手で掘り起こそう」
ということである。この世の真実を掘り起こそうということは、三成から見て、
・いまの世の中は、嘘で固められている。
・その嘘が事実や真実として通用し、罷(まか)り通っている。
・しかもその嘘を、事実や真実として世の中に伝えているのは、豊臣秀吉をはじめ徳川家康などの、野望のある大名だ。
ということだ。
(『歴史小説浪漫』作家・童門冬二より抜粋)
---owari---
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