―― 日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載します ――
目下のところ、日本と最も敵対している国と言えば中国です。しかし日本は中国と自然に戦って、自然に勝っているというのが現状だと思います。
わかりやすい例を言えば、中国外交は日本を相手にして失敗続きです。
近年になって中国は尖閣諸島に来て、さんざん領海侵犯や領空侵犯を繰り返していましたが、2010年には中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりする映像が公開され、「やはり中国はそんな国なんだ」と日本人が目を覚ますことになりました。
そして2014年には中国漁船が小笠原諸島と伊豆諸島周辺の日本の領海と排他的経済水域(EEZ)に大挙してやってきて、サンゴを密漁しました。
そのとき日本はすぐに国内法を改正するなど毅然とした姿勢で対処し、中国政府は「違法な赤サンゴの採取を禁止している」としたうえで、「関係者を教育、指導し、厳しく取り締まっている」とコメントせざるを得なくなりました。
そうした動きと並行して、中国は「アジア太平洋における抑止力を強化する」と屁理屈を並べ立てて南シナ海に進出し、岩礁(がんしょう)を埋め立てて要塞化を進めていますが、それもまた、世界中から非難され、これまで以上に孤立を深めています。
それは中国国内で貧富の差が広がることで、爆発寸前になっている庶民の不満を抑えるためのパフォーマンスだと解説する人もいます。
しかし、いくら中国が反日を煽(あお)っても無駄なことです。
そもそも中国の若者たちは日本のアニメで育ち、日本製品が大好きです。だから、引きも切らず日本に爆買いツアーにやってきています。
それに、インターネットの普及でいくらでも海外の情報に触れられるようになっていますから、自国の政府(=中国共産党)の言うことのほとんどが嘘だということに気づいています。もちろん中国政府の言うままを信じる良い子の中国人も大勢いますがね。
ほんとうのことを言えば、中国は経済が著しく停滞する中、日本の安倍首相が主導する「自由と繁栄の弧」の仲間入りをしたいところなのでしょう。
しかし、中国にはそもそもその前提となる「民主主義」「言論の自由」など一切ないのですからどうしようもありませんし、今からつくりたいと思っても、それは中国共産党による一党支配体制を崩壊させることに直結しますから、とても中国政府が主導してできることではありません。
結局、日本を貶(おとし)めようとする中国の対日外交は失敗続きになるのです。
なぜこんなに外交面で失敗するのかというと、世界情勢をちゃんと分析していないからです。
そもそも外交するからには目的があるはずですが、習近平国家主席の対日外交の目的は、日本人に謝ってもらうという一点に尽きます。
とにかく日本人を凹(へこ)ませて、中国共産党は偉いと認めてもらいたい。それで自分の権力基盤を固めたい一心なのです。しかし、それはことごとく失敗しています。
だいたい中国人自身は「自分たちは外交の天才だ」と思っているようですが、それは大きな誤解です。
中国人が外交上手なら、19世紀末から20世紀にかけて、欧米にあれだけ好き勝手にやられて領土をむしり取られたりするわけがありません。
さらに言えば、中国は外交の延長である戦争においても実績を上げたことがありません。朝鮮戦争も中越戦争も当初の目的を達成できずに終わりました。中国が勝ったのはチベットなどの少数民族を相手にしたときだけです。
そうした事実を糊塗(こと:一時しのぎにごまかすこと)し、国民の目から隠すために中国共産党は歴史の改竄(かいざん)を平気でやっています。
自分たちは日本軍と戦って祖国と国民を守ったと盛んに宣伝していますが、それも真っ赤な嘘です。
日本と戦ったのは蒋介石率いる中華民国の軍隊であり、そのとき毛沢東は中国国内における蒋介石との戦い(国共内戦)に備えて戦力を温存していました。
失敗する外交しかできない中国の根幹には、彼らが頑(かたく)なに信じている「華夷(かい)秩序意識」があると言っていいでしょう。
自分たちは優れた文明を持つ世界の中心(中華)で、周囲はみんな未開の野蛮人(夷)であるという考え方から抜け切れず、他国に対する外交でも、とにかく威圧的に振る舞えばいいと考えています。
そのため対等な外交交渉をやった経験がありません。まずは強気に出て、それから相手の反応を見てあとのことを考えればいいと思っているのです。
王毅(おうき)外交部長や華春瑩(かしゅんえい)報道官の言動を見れば一目瞭然です。それでは外交交渉がうまく行くはずがないのは言うまでもないでしょう。
---owari---
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