(民主主義社会におけるマスコミ本来の役割とは)
民主主義社会においてマスコミが果たす機能としては、前述の内容と逆になる部分もありますが、悪い権力者や、不当に利得を得ている者、法の抜け道を使っている者など、こういう者について告発する記事を書くことです。
その場合、名誉毀損等について、よく争いになったりするわけですが、告発記事によって、「腐敗した部門や、独裁的な傾向がある者を排除する」という機能があるのです。あるいは、「そういう“怖い部門”があることによって、自制させる」という機能もないわけではありません。
ところが、日本では、昨今の消費税増税の流れが起きているなかで、ある週刊誌に、「日本の大金持ちと言われる、ニュービジネスの旗手たちなど十人ほどの財産に、一律、九十パーセントの財産税をかければ、五兆円ぐらい取れるので、これ以上消費税を上げる必要がなくなる」というような記事が出ていました。
確かに、「十人が不幸になっても、残りの一億二千万人に何も影響がないならば、こちらのほうがよほど得ではないか」と言われた場合、数の原理からは、そう思う人が圧倒的に多いでしょう。
その“狙い撃ち”された人たちも「一人一票」なので、政治的には、投票行為によって戦うことはできません。「個人的に、支配階級と何らかのパイプがある」ということでしか、おそらく対応はできないでしょう。
いずれにしても、そういうこともありえるわけですから、流動する社会のなかで、何を「理想」とし、何を「よくないもの」と考えるかは、実に微妙なところだと思います。―この章は終りです。
---owari---
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