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イスラエル真の目的~なぜ彼らは戦線を拡大するのか?

2024年10月18日 | 政治・経済
今日も国際関係アナリスト・北野 幸伯さんのメルマガからお伝えします。

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全世界のRPE読者の皆さま、こんにちは! 北野です。

中東が荒れています。
最近の動きを見ると、
・9月17日、ヒズボラ戦闘員が持っていたポケベルが一斉に爆発
・9月18日、ヒズボラ戦闘員のトランシーバーが爆発
・9月23日、イスラエル、レバノンの武装勢力ヒズボラへの空爆を開始
・10月1日、イスラエル、ヒズボラを潰すためにレバノンに侵攻、地上作戦開始
・10月1日、イランは、イスラエルに約200発のミサイルを発射
となります。

もう少し前にさかのぼると、
・2023年10月7日、ハマスがイスラエルに侵入し、約1200人を大虐殺
・イスラエルが反撃し、イスラエルーハマス戦争がはじまる
・レバノンの武装勢力ヒズボラは、イスラエルへのミサイル攻撃を開始
・イエメンのフーシ派も、イスラエルへのミサイル攻撃を開始

つまり、2023年10月7日以降、イスラエルは、ガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、3勢力から攻撃を受けている。
この3勢力のボスは、イランです。

イスラエル軍は「3正面作戦になる危機」に立ったのですが、「3正面」にしませんでした。
ここ1年、「ハマス勢力を殲滅すること」に集中してきたのです。

ヒズボラに関しては、レバノンと接するイスラエル北部の住民を大量に避難させることで、事実上放置してきました。

イエメン・フーシ派については、イスラエルとイエメンの間に巨大なサウジアラビアがある。
だから、ミサイルを撃たれても、防空システムで撃ち落とすだけでいいのです。

イスラエルは、国際社会から「やりすぎだ!」と批判されながらも、ハマス殲滅作戦に取り組んできました。
それで、「もうヒズボラ殲滅作戦に移ってもいい頃だ」となったのでしょう。

(イスラエル真の目的は?)
私が、有料講座「パワーゲーム」で、「近い将来中東で戦争がはじまりますよ」といったのは、2023年8月です。
メルマガRPEでも、2023年9月9日号で、「次の戦争が近づいている」と書きました。
その主体は、イスラエルとイランです。

そして、実際の戦争がはじまったのは、2023年10月7日でした。
なぜ私は、戦争がはじまる2カ月前から、そのことを予測できたのでしょうか?
日本のメディアでは、「全然」といっていいほど報じられていない裏事情を知ったからです。

それは何でしょうか?
RPE2023年9月9日号は、『まぐまぐニュース』2023年9月20日号で転載されています。
当時はまったく注目されず、「いいね!」2、「シェア」1という、なさけない状況でした。
何が書かれていたのか、そのまま転載させていただきます。

【 転載ここから▼ 】
<<<★イランの核兵器保有と次の戦争が近づいている?
イランがIAEAの査察を拒否しました。「日経新聞」9月17日付。
〈国際原子力機関(IAEA)は16日の声明で、イランからIAEAの一部査察官の受け入れを拒否すると通告があったことを明らかにした。

査察官はウラン濃縮などを検証している。
グロッシ事務局長は「強く非難する」と述べ、査察に深刻な影響が出るとして再考を求めた。国際社会の懸念が一層強まるのは必至だ。〉
――

この問題、少し振り返ってみましょう。
アメリカは、ウソの理由でイラク戦争をはじめた2003年頃から、「イランは核兵器を開発している!」と非難していました。

ネオコン・ブッシュ政権のアメリカは当時、「2016年までにアメリカ国内の石油が枯渇する」と信じていた。
それで、資源がたっぷりある中東支配に動いていたのです。

「イラクの次は、イランだ!」と(しかしその後、「シェール革命」が起こり、アメリカは世界一の産油国、産ガス国に浮上。中東の資源を確保する必要はなくなり、この地域への熱意は減りました)。

はっきりいってネオコン・ブッシュ政権の主張は、イラク戦争の開戦理由同様「大ウソ」でした。
証拠もあります。

「毎日新聞」2007年12月4日付。
〈イラン核〉米が機密報告の一部公表 「脅威」を下方修正
[ワシントン笠原敏彦]マコネル米国家情報長官は3日、イラン核開発に関する最新の機密報告書「国家情報評価」(NIE)の一部を公表し、イランが03年秋に核兵器開発計画を停止させたとの分析結果を明らかにした。
――

さらに、「ロイター」2009年7月4日付。
〈イランが核開発目指している証拠ない=IAEA次期事務局長
[ウィーン 3日 ロイター] 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥次期事務局長は3日、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示した。ロイターに対して述べた。天野氏は、イランが核兵器開発能力を持とうとしていると確信しているかとの問いに対し「IAEAの公的文書にはいかなる証拠もみられない」と答えた。〉
――

ここからわかることは何でしょうか?
ブッシュ政権が2000年代、「イランは核兵器保有を目指している!」と非難していたのは、「ウソだった」ということです。

それで、リベラルなオバマが2015年7月、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国を巻き込んで「イラン核合意」を成立させました。
これで、イランは制裁が解除され、石油が輸出できるようになった。

イランは、そもそも核兵器を開発する気がなかったので、大いに喜びました。
ところが2018年5月、トランプが、イラン核合意から一方的に離脱。
2018年8月、トランプ政権は、イラン制裁を復活させます。

これは、何でしょうか?
イスラエルは、「イランが核兵器開発を目指している」と確信している。
トランプは、親イスラエルなので、核合意から離脱したのです。

再び苦しくなったイラン。
そもそも核兵器を開発する気はなかったのですが、追い詰められ、ある時点で気がかわったようです。
徐々にウラン濃縮度をあげていきました。

ここから、今年のお話。
「時事」(2023年)3月5日。
〈イランを訪問した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は4日、ウィーンの空港で記者会見し、イラン中部フォルドゥの核施設で核兵器級に近い濃縮度83.7%のウラン粒子が検出された問題について「その水準の濃縮ウランは蓄積されていない」と述べた。〉
―――

「核兵器開発には濃縮度90%以上が必要」とされている。
伊藤貫先生によると、イランは、年内(2023年中)に核兵器を保有する可能性が高い。
そして、イスラエルは、「イランが核兵器保有する前に攻撃する」と公言している。

イスラエルがイランと戦争を始めると、アメリカもイスラエルを助けざるを得ない。
冒頭の「イランIEAEの査察拒否」について、日経新聞9月17日付は、
〈核合意の当事国である英国、フランス、ドイツは14日、イランが合意を守っていないとして、10月中旬に緩和するはずだった制裁の一部を継続するとの共同声明を出した。イラン外務省は14日の声明で「挑発的で悪意がある。適切な反応をする」と反発していた。〉
――

つまり、制裁延長を決めた欧州への反発が原因だと。
しかし、「いよいよ核兵器保有が近づいている。そのことがバレないようにIAEAの査察を拒否している」とも考えられます。

そうであれば、伊藤貫先生が予測されているとおりに、
イスラエルがイランを先制攻撃
イスラエル─イラン戦争勃発
アメリカがイスラエル側にたって参戦
といった事態に発展する可能性も出てきます。

そうなると、「二正面作戦」を嫌がるアメリカは、ゼレンスキーに「現状維持で停戦しろ!」という圧力をかけてくる可能性が高まります。
どうなるか、注目していきましょう。>>>

【 転載ここまで ▲ 】
@@記事全文はこちら。↓

これが、2023年9月9日(まぐまぐニュース転載は2023年9月20日)に配信したメルマガの内容です。

実際には、2023年10月7日、ハマスがイスラエルを奇襲する形で、戦争が始まりました。
これは、イランがハマスに、「攻撃される前に攻めてしまえ!」ということでやらせたのでしょう。
あれから1年が経ち、イスラエルは、レバノンの武装勢力ヒズボラ殲滅に動き始めました。
そして、イランは、イスラエルにミサイル約200発を撃ち込んだ。

イスラエルは、何を目指しているのでしょうか?
これ、日本では全然報じられていませんが、これまでの経緯を知れば明らかでしょう。

イスラエルは、イランの核施設を破壊したいのです。
できれば、アメリカを巻き込んで。
正直者のトランプさんは、このことを大きな声で言ってしまいました。

「CNN.co.jp」2024年10月5日。
〈イスラエルはイランの核施設を攻撃すべき トランプ氏示唆
トランプ前米大統領は4日、イスラエルはイランによる今週の弾道ミサイル攻撃への報復として、イランの核施設を攻撃すべきだとの認識を示唆した。

イスラエルに釣り合いの取れた対応を講じ、核施設攻撃を避けるよう助言しているバイデン大統領の立場に賛同しない考えも示した。
トランプ氏はノースカロライナ州ファイエットビルで開かれた対話集会で、バイデン氏は「イランについてどう思うか。あなたなら攻撃するか」と聞かれ、「核施設を攻撃しないなら」と答えたと指摘。
「攻撃したいのはそこだろう。バイデン氏は間違っている。核施設こそ攻撃対象ではないか」との見解を示した。〉
――

正直です。
ここまでの流れを振り返ってみましょう。
・2023年3月の段階で、イランのウラン濃縮度は83.7%に達していた。
(核兵器製造には、90%以上が必要。)

・2023年9月、イランはIAEAの査察を拒否した。
このことは、「イランが核兵器保有一歩手前まで来ている」と受け取られた。

・イスラエルは、「イランが核兵器を保有する前に攻撃する」と公言しており、イランは「イスラエルからの攻撃が近い」と予見できた。

・そこでイランは2023年10月7日、手下のハマスにイスラエル奇襲作戦を行わせた。
・結果、イスラエル―ハマス戦争がはじまった。

・イスラエルは今年10月1日、ヒズボラ殲滅のために地上作戦を開始。
・イランは10月1日、イスラエルにむけて約200発のミサイルを発射。

これからどうなっていくのでしょうか?
プロセスはどうあれ、イスラエルの目標は、
【 イランの核施設を破壊し、核兵器保有を阻止すること 】
でしょう。
願わくは「アメリカも巻き込んで」ということですね。

どうなるか注目していきましょう。

---owari---
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