私の考えだが、<増税は官僚を楽にさせる。税率を上げてしまえば、しめたもの。予算は確保済で、したい放題、自省の権益も拡張できるし、給与カット、人員削減圧力を受けることもない>という批判に同感である。
産経新聞編集委員の田村秀男氏は「財務省にだまされるな」といったが、いまや国民の5割以上が消費税の引き上げはやむを得ない、と思い込んでいる。財務省の“宣伝”が効果を上げているようである。
端的にいえば、財務省は国民や国のために増税路線を進めているのではない。「予算配分」と「税金を取る」という彼らの最大の権力を離したくないからである。その権力を握っているかぎり、自分たちの利権を守るだけでなく、さらに大きくすることもできる。
こうした行政のあり方については、小さな政府にして行政を自由化すればいい。具体的にいえば、1980年代の「土光臨調」から始まった行財政改革を推し進めることである。
近年、こうした議論をほとんど聞かなくなった。規制緩和と行政の効率化の議論がアメリカからの構造改革要求の問題と重なって複雑化したことが原因だろうが、そもそも<予算は確保済みで、したい放題、自省の権益を拡張できるし、給与カット、人員削減圧力を受けることもない>行政組織を改革するのは自国の問題である。
消費税増税の前にすべきことがある。野田総理(旧民主党)は国会議員定数や国家公務員給与の削減を改めて挙げたが、2011年の臨時国会中に国家公務員給与削減のための協議がまとまりかけていたにもかかわらず、会期を延長せず協議を打ち切ったのは民主党ではなかったか。
民主党が政権公約に掲げた「国家公務員総人件費の2割削減」はどこかへ消えてしまった。いずれも“身内”である自治労などの意向を優先したからだろう。官僚と組合の双方に顔を向けて国民のほうは向いていないとすれば、いくら「大義」といったところで国民はついていかない。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
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