カナダから帰国し、一家そろって北海道で農業を始めた人がいる。ゼロから始めて年収1000万円に達したが、振り返ると「年収500万円の頃は、家族が心を一つにして楽しく暮らしていたのが、それ以上になると家族に揉(も)め事が起きるようになった」という。
そこで彼は年収が500万円に戻ってもいいから一家団欒(だんらん)を大切にすることにした。人の暮らしは、高収入になるほど幸福に近づくわけではない。経済学の土台には個人主義はあっても家族主義はなかったから、一家団欒は消える可能性がある。
「年収500万円以上には毒がある」と、その彼はいった。
今後は先進国では右肩上がりの経済成長は見込めない。従来の循環型経済モデルの時代は終わりつつある。高度経済成長はある条件下で成り立ったもので、もとになる条件が失われてしまえば経済のあり方が変わるのは当たり前である。これから高度経済成長が可能なのは、一部の新興国だけである。
(日下公人著書「『超先進国』日本が世界を導く」より転載)
---owari---
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