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「日々の暮らしの中から感動や発見を伝えたい」

「日本て、どんな国?」と聞かれたら(後編)

2022年12月13日 | 日本
外国人に日本を説明するとっておきの方法。

(「身分や地域を超えた国民的歌集」)
世界最大と言えば、「万葉集」も世界最大の歌集と言えるようだ。しかも、7、8世紀の歌を集めた、世界最古の歌集とも言われる。最古、最大というだけでなく、その性格がまた日本の国柄を表している。

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歌の作者は、天皇から農民や防人(さきもり)、貧しい人々にまでおよぶ。年齢や地域も様々であり、男女の差別もない。
内容も、国を見渡すようなものから、恋の歌や日々の生活を述べたものまであり、当時では世界に類例を見ないほど多彩である。身分や地域を超えた国民的歌集が完成していたということは、そのころの人々が、共通の言葉を使い、感動を共有することができたことを示している。
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日本以外の国では、詩は専門詩人が作り、国民の中のごく一部の教養階級がそれを味わうものだ。ところが日本では、農民や兵士に至るまで、和歌を作っている。そして良い和歌を作るには、作歌の技術よりも良き真心が大切だ、と考えられていた。

良い歌なら身分や貧富、男女を問わず集めたという事は、人間の外形的な違いよりも、真心を重視する、という文化的伝統の現れなのである。

これに続いて、同書ではもう一つ大事な点を指摘している。

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すぐれた歌をつくれば、立場に関係なく歌集に採用されるという伝統は、今日にも引き継がれている。たとえば、毎年、新年に皇居で行われる「歌会始(うたかいはじめ)の儀 」には、すぐれた歌をつくった中学生や高校生が招待されることも珍しくない。
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皇室が125代も続いているのと同様、国民の歌を通じて真心を通わせるという伝統は、万葉集以来、今も歌会始で続いている。この伝統の継続性は、世界でも類を見ないものであろう。

(「古くからのものと新しいものがたくみに共存」)
伝統の継続性のもう一つの表れは、老舗企業が多いということだ。
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日本には創業200年以上の企業が3500社ほどあると言われている。この数は2位以下のドイツ、フランス、イギリスなどを大きく引き離している。創業100年以上の企業となると、製造業だけでも4万5000社ほどあり、さらに創業1000年以上の会社もある。これほど老舗の多い国は他にはない。
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この点も、なぜかと問えば、わが国の国柄に行き着く。

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これは日本人が、外部環境の変化に対する柔軟な適応力と進取の気性を発揮して、歴史の荒波を乗り越えてきたことの証(あかし)ともいえる。内乱や外国との戦争もあったが、異なる民族が入り乱れての動乱は起こらなかった。日本は、外国の植民地になったこともない。日本人の精神のありかたが今日まで変わることなく続いている。

老舗に限らず、日本は古くからのものと新しいものがたくみに共存している。古いものが否定されることなく、新しいものとたくみに融合しているのが、わが国の歴史の特色ということができる。
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最先端の現代文明が、神話地代からの伝統文化と共存している事は、世界でも珍しい現象であって、これに魅了される外国人訪問客も少なくない。世界の多くの国々は、現代文明と伝統文化の両立をいかに図るかという難題に苦しんでいる。日本社会は、それが不可能でない事を示しているのである。

(なぜ天皇は125代も続いてきたのか)
伝統の継続性の根幹は、やはり皇室に行き着く。同書は「日本人と天皇」の項で、次のように述べる。

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現在、君主制を敷く20数か国のうちで、日本はその歴史が最も古い。天皇をさかのぼれば神話に行き着く。実年代は今も不明だが、始まったのはおよそ2000年前と言われている。19世紀には「エンペラー」(emperor) と呼ばれる統治者が世界に10人ほどいたが、次々に失われ、現在は日本の天皇ただ一人となった。
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人類史上の奇跡とも言うべき事実だが、同書はその理由を次のように簡潔に説明している。

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しかし天皇は歴史上、強大な権力を誇ったのは一時期のことで、そのほとんどは権力を持たず、権威のみを有してきた。実力を有した貴族や武将たちが天皇に取って代わることはかつて一度もなく、彼らは天皇から統治の正統性を与えられる地位を選んできた。

このような立場で天皇が存続し得たのは、存続を願う多くの国民によって支えられてきたからである。天皇は自ら神々を祭り、常に民の幸福と国家の平安を祈ることを務めとしてきた。その結果、人々の尊敬を失うことなく古代から現代にまで至ったのである。
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「天皇は自ら神々を祭り、常に民の幸福と国家の平安を祈ることを務めとしてきた」という点は、拙著第5弾『日本人として知っておきたい 皇室の祈り』で、歴代天皇の事績を踏まえて論じているので、参照いただきたい。

皇室が125代も続いてきたこと、言い換えれば代々の国民が皇室を護持してきたこと。その史実自体が日本の伝統の継続性の象徴であるとともに、巨大古墳や寺社、万葉集などの、世界にも稀な文化遺産を築き、守ってきた原動力でもあるのである。

この点を踏まえれば、「日本でどんな国?」との質問に対する答えは やはり一つしかない。「125代の天皇が続いてきた国」である。もうすぐ126代となるが。
(2018年1月 文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)

---owari---
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