「忍耐力という成功の資源」はつくり出すことができる

今回のシリーズでは「忍耐力」について、さまざまな角度から話をお伝えしました。

とにかく、頭のよし悪しや才能のあるなしだけで、人生の成功や幸運などが決まると思っている人が多いでしょうし、確かに、短い時間で見れば、そういうことがあるかもしれません。ただ、長い時間で見た場合には、才能がありすぎたり、能力がありすぎたりしても、失敗することはあるのです。人間関係で失敗したり、お金の感覚がなくて失敗したりするような人もいます。

したがって、どんなことがあっても転(ころ)がりながら大きくなっていくような、「雪だるま型」の努力をしていくことが大事です。

「忍耐力」というのは、自分の才能や能力などが、まだまだ十分に開花していないか、あるいは、そうしたものを持っていないと思われるような人たちが成功するための、本当に大事な大事な資源なのです

この資源は、生まれつき待っていなかったとしても、「自己鍛錬(たんれん)」や「訓練」を通してつくれる資源であるということを知ってください。そういう心掛けを持って、毎日毎日を積み重ねていくことによって、できてくる資源なのです。

いくら水をかき回したところで石油にはなりません。しかし、人の心というのは、目標を持って一生懸命に鍛錬していると、変わっていくところがあるのです。

そして、「今はとても難しいことのように思っていることがあっても、やがて、楽々とできるようになる」ということを知ってほしいと思います。

例えば、昔、ナイアガラの滝かどこかにワイヤーを架け、その上を渡った綱渡りの名人がいました。それを見ていた人たちは拍手喝采(はくしゅかっさい)をし、「あなただったら、乳母車(うばぐるま)に人を乗せて押しながらでも、その上を歩けるのではありませんか」「あなたのような信念があれば、それができるのではありませんか」と言いました。すると、彼は、「では、あなたがその乳母車に乗ってくれますか。そうしたら、私がそれを押してワイヤーを渡ってみせますから」というようなことを言ったそうです。

結局、「いや、それは結構です」ということになりました。やはり怖(こわ)いわけです。「そんなに言ってくださるのなら、どうぞ乗ってください」と言われても、ナイアガラの滝に落ちないという自信はないのです。

そのように、名人の押す車に乗るだけでもできないことであり、ましてや、渡る本人というのは、それほど大変な仕事をしているわけです。

普通ではできないことをやっているうちに、他人(ひと)は、「さらにもっとできるのではないか」と期待するものですが、「では、あなたなら、それをやれますか」と言われて考えてみると、「できない」ということが急に分かったりするようなことがあります。

自分に対し、いろいろな人がさまざまなことを言うでしょう。しかしながら、自分の力の限界を知りつつも、その限界を超(こ)えていくための努力を、知能的にも肉体的にも、あるいは人生学的にも、さらに積み重ねていくことがとても大事だと思います。

以上が、簡単ではありますが、「忍耐力」についての心の教えです。

今回のシリーズはこの章で終わります。

（あとがき：クリエイティブな人は、「心の力」を知っている）

仕事の生産性は「原因あって結果あり」だが、そのプロセス（過程）の大切さは、いわくいいがたいものがある。

たとえば、本を年二千冊以上読めば、いくらでも著書が書けるわけではない。読めば読むほどに、頭の中身が混乱し、収拾(しゅうしゅう)がつかなくなるのが、九十数パーセントの人たちだろう。また、あまり早く学生時代から雑学をやりすぎると、クイズ型人間や週刊誌型人間にしかならないだろう。

幹と枝葉を見分け、本質をスパッと見抜く力は、才能と天恵(てんけい)と忍耐力に裏づけられている。

常に砂の中に砂金を見つけ出す努力や、ダイヤモンドの原石を磨き続ける努力が必要だ。

創造的人間になるためには、「愛」が必要である。世の中の人々のお役に立とうと思えばこそ、時間を絞り出し、智慧(ちえ)を結晶させ、努力を継続し続ける気概(きがい)が湧(わ)いてくる。お金で時間も本も買えるが、お金持ちが皆、知的で創造的な人間になるわけではない。むしろ逆に堕落(だらく)するケースの方が多かろう。

それでも、創造的人間になることは、人生の密度を高める秘術(ひじゅつ)につながることだろう。だから今回のシリーズはあなたの未来を変える力になると思う。読者の未来が拓(ひら)かれることを祈っている。

---owari---