(「組織全体としてプラスか、マイナスか」の判断ができるか?)
こうしたことに関して、よくやる失敗の一つとしては、能力のある人を、「自分の立場を脅(おびや)かすかもしれない」と思って遠ざけたり、低く抑えたり、その人の失敗などをわざとあげつらったりすることです。
確かに、そのようにして能力のある人を出世させないようにしたり、出世を遅らせたり、横槍(よこやり)を入れたりすれば、自分としては気持ちがいいというか、気が済むところもあるでしょう。「ライバルになって上がってくるかもしれない」とか、「逆転されて、自分の上に上がるかもしれない」とか思えば、そうしたくなる気持ちが出るのも分からなくもありません。
しかし、「会社全体、あるいは組織全体として見たら、その判断は正しいのか」という問題もあるわけです。
例えば、それは“自分の好き嫌い”でやっているのかもしれないけれども、自分よりも上の立場の人から見ても、「やっぱり、あの人には能力があるかもしれないけれども、周りから嫌われているのだから、しかたがない」と思うかもしれません。つまり、「その判断が自分よりも上の人に支持されるか、されないか」ということは、やはり大きいと思うのです。
そのように、自分自身の判断のほかにも、「組織全体としてプラスか、マイナスかという判断」、あるいは、「将来に対する判断」、「将来どうなるかということに対する判断」等もあるわけです。
さまざまな組織において、「おとなしいタイプの人、自分の言うことをきく人ばかりを引き上げていく」という傾向はよく見られます。会社でもあれば、役所でもあるし、大学関係の研究者のなかなどでもあるものです。
どうしても、「よく言うことをきいて、黙(だま)っている人を上げていく」という傾向が出ることは出ますが、それが妥当(だとう)とされる場合と、そうでない場合とがあるだろうと思います。
こういうところを本能のままにやりすぎると、「大人気(おとなげ)ない」という言い方になるでしょう。このあたりは難しいところかと思います。――この章は終りです。
---owari---
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