あなたは負け犬というのを、見たことがあるか。
二匹の犬が喧嘩(けんか)をすると、噛(か)み合ったあとに勝負がつく。
負けた犬はまるで白旗よろしく尻尾(しっぽ)を股(また)の間に挟(はさ)んで、
耳をたれ、きゃいんきゃいんと逃げていく。
そして、あるとき勝ち犬と路上でばったりと出会うと
またしても、尻尾を股に挟んで、目を伏(ふ)せて、
助けてと、哀願(あいがん)するように、道をよけていく。
何も勝つことばかりが人生ではない。
闘い続けることのみが美学でもない。
負けのなかにも人生の真実がある、知恵もあるだろう。
しかし、負け犬というものは、実際に受けた傷以上に、
心の傷が深く、痛みが長引くようだ。
肉体的痛み以上の損失に甘んじているのだ。
人生には全勝も全敗もないのだ。
必ず、何勝何敗かになる。
心のなかに、負け犬の入れ墨(ずみ)を彫(ほ)るのは、よしたほうがよい。
棺桶(かんおけ)の蓋(ふた)が閉じられるときに、勝敗を数えても遅くはないのだ。
---owari---
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