日本はロシアといかに付き合うべきか
[問] 北海道の函館はロシアに近いので、関係構築の使命があるのではないかと思っております。プーチン大統領の来日も正式に決まっていませんが、ロシアとの付き合い方についてアドバイスをいただければと思います。
私は本論考の元になった法話を行った前日の夕方に函館に入ったのですが、夜になって"来た方"がいました。「誰だろうか」と思っていたら、珍しいことに、鳩山由紀夫氏の守護霊でした。なぜ函館に私が来るのが分かったのか、と少し不思議に思いました。
2009年に幸福実現党を立ち上げたときに鳩山氏は民主党の代表でしたから、あちこちで、よくすれ違ったことはあります。
2015年3月、クリミア半島を訪問した鳩山由紀夫氏(右)は、ロシア下院のナルイシキン議長(左)と会談した。写真:TASS/アフロ
鳩山氏の守護霊が私に訴えかけたのは、「民主党は間違っているというような批判をしていたけども、今の安倍政権の事態を見れば、非常に戦争が好きそうだ。国民の反発がすごく高まっていて、平和を求める声が上がっているではないか」ということでした。そして、「今、中国などと平和を保つには、民主党の政策をそのままやっていればよかった。私たちが間違ったわけではなかったのではないか」と言うのです。
さらには、「大川隆法先生が『ロシアと仲良くしなきゃいけない』とおっしゃるから、私は戦略的に大事だと思って、クリミアまで行って現地視察をした。確かにロシア人が80%はいたので、ロシアがクリミアを手放したくないのはよく分かる、と向こうで言ったら、『あいつは宇宙人だ』(会場笑)、『そのまま永久にとどまっておれ。日本に帰ってくるな』と言われて、ひどい目に遭っている」と言うのです。「この辺の説明をしてくれないか」というような感じで来られました。
2009年は民主党の全盛期で、全国で支持率を70%も取るなど、ものすごく力強かったのです。私が幸福実現党の総裁として全国を回っていると、鳩山さんは一日で5県も回ったりしていました。ヘリコプターも使って5県も回ったりするので、「なかなかついていけないな。5県は回れない。すごいな、精力的で頑張っているな」と思ったのです。しかし、その後はサーッといなくなってしまいました。
確かに、こちらが仲良くしようとしたり下手に出れば、それで喜ぶ方はいっぱいいるとは思いますし、善意を信じようと鳩山氏を支持した方は多いのだろうとは思います。しかし、現実世界は必ずしもそうはいかないことは多いです。
瀬戸内寂聴さんのような人が、「戦争の足音がする」「戦争反対だ」「いい戦争なんかない」などと国会前で訴えたことが、NHKのニュースや新聞で取り上げられております。しかし、「中国が南シナ海で海底の砂を集めて珊瑚礁を埋め立て、あっと言う間に建物を建てて軍事基地をつくっている」ということに対しては、何もおっしゃいません。
また、北朝鮮は核兵器を6基から8基ぐらい持っていて、来年には20基ぐらいまで増えるかもしれないし、近年中に、何十基も持つかもしれません。北朝鮮の金正恩氏にも「核兵器を使ってどうするつもりですか」などと叱ってくれたらいいのですが、政治家も、活動家も誰も叱らないのです。私は叱りますが、自民党だって叱りません。
国会で論戦していても、辺野古の珊瑚礁を埋め立ててジュゴンが逃げるということについては怒るけれども、中国がフィリピンの近くの珊瑚礁を埋め立てて、軍事基地をつくっていることに対しては誰も叱らない。叱るのは私だけです。
ですから、少し損だと思うことはあって、鳩山氏の守護霊もそれを言っていました。「あなた方が一生懸命やっても、得するのは安倍さんだ。あなた方が得することは何もないのだから、するだけ無駄ではないか」というのです。
そこで、「私たちは、将来についての大きな視野でやらなければならないことは、自分たちの利得にならないことでも言っている」と伝えました。目先の選挙で勝つとか、議席を取れるというだけの計算でやっているわけではないからです。また、安倍政権に対しても、「良いことは良いけれども、悪いことは悪い」と、是々非々の態度でやっていることも話しました。
北方領土問題解決の糸口となりうる日ロ首脳会談開催
ウクライナ、そしてクリミア半島はモスクワの南に位置する。ウクライナがEUやNATOに加盟すると、ロシアにとっては国防上の脅威になる。
大川総裁は2012年3月、プーチン大統領就任直後に『守護霊インタヴュー ロシア・プーチン大統領と帝国の未来』(写真上)を収録。その後ロシアがクリミアを併合したことを受け、2014年4月、『プーチン大統領の新・守護霊メッセージ』(同下)を収録した。
日本政府は、「G7と同じ行動を取っていたほうが仲間外れにならないからいいだろう」とロシアと距離をとっています。しかし、これでは北方領土問題の解決が遠のいていく可能性は高いでしょう。
以前、プーチン大統領の守護霊霊言を収録した時にも、「北方領土を『返したい』という気持ちは持っている」と言っていました。プーチン氏はすごくやる気マンマンで、日本に来るつもりだったのに、クリミアの件でつまずいて日本に来られなくなっています。日本も欧州連合(EU)の機嫌を伺わなければいけないので、「日本の安倍首相と何回も会っていたのに、こんなことになっていいのか」というようなことを言っているわけです。
ロシアは、核ミサイルをウクライナ方面に向けて40基ぐらいそろえる、などと言っています。それで欧州各国はますます硬化して、アメリカも怒ってくるのでしょう。
ウクライナはまだ、EUにも北大西洋条約機構(NATO)にも参加していませんが、参加した場合、NATO側の軍事基地や戦車、アメリカのミサイルまでがザーッとロシアの南部に入ってくることになるので、それがロシアにとっては一番怖いことです。
先般、私もスターリンの霊言で少し言いましたが、ソ連がヒトラーに勝てたのはロシア南部を守ったからです。そうでなければ勝てていません。南部に反対側の勢力の軍事基地をつくられてしまったら、10分ぐらいで首都モスクワが壊滅する状況になります。本当は、ここが非常にもめているところなのです。この辺りは、日本には理解できない部分でしょう。
一応、安倍さんは分かっています。アメリカは日本に、「ロシアを干し上げる方に参加せよ」と言っているけれども、日本の立場としては北方領土もあるので、中国とロシアをくっつけるわけにはいきません。仲を割っておかなければいけないので、ロシアに対しては、厳しいことを言い過ぎることはできないと言っています。けれども路線が明確ではないので、非常に苦しい状態かとは思います。
外交と自衛は一体
EUやG7が必ずしも正しいとは言えない面もあります。私は、日本にはある程度の独自性があっていいと思います。
今、ロシアと中国が軍事同盟のようにくっつかれるのは、非常に具合が悪いことです。中国の軍事行動に対してアメリカが本当に動いてくれるか分からない状況であるにもかかわらず、ロシアまで相手になれば、核兵器の山と向かい合うことになるのでたまりません。
まだ日本の国会では、憲法9条改正への反対だけでなく、その関連法案をつくることにも反対の声が上がっています。これは、「どうなっても構わないのですか」と、国民投票をかけなければいけないような状況です。「それでは困る」というのであれば、やはり何らかの自衛策を持っていなければいけません。
安倍さんは今、非常に立場が悪く見えています。戦後70年近く続いたこともあって、「憲法を守る」と言っている人の方が正義のように聞こえるでしょう。
かたや中国は、「この島の珊瑚礁は自分の国のものだ。だから埋め立てて軍港をつくったり、空港をつくったりするのも主権内の問題だから関係ない」と言っています。すると、例えば「尖閣列島は中国に主権がある」と言えば、ある日突然、施設をつくるぐらいのことはやれる、ということです。そういうところを相手にしているので、多少は厳しい態度で接しなければいけない面もあるでしょう。それだけの努力はするべきだと思います。
今はEUの利害の調整をしていますし、しかもEUは中国ともつながっているので、難しい部分があります。ロシアを孤立させないよう、日本の独自外交ができるかどうかが非常に難しいのです。
東大の国際政治学者の藤原帰一氏は、最近の安保法制の問題に関して、ああだ、こうだと言っているものの、結局結論が出せずにいて、「実際は、安倍首相に外交上の実績がないことが問題だ」と述べています。憲法の問題ではなく、外交の問題を持ってきています。
でも、外交については随分頑張られたと思います。ただ、頑張ったけれども、まだ日本が戦後の積み残しの部分を相当引っ張っているために、解決できない問題が数多くあるということです。
北朝鮮は、さすがに国際的に許しがたいでしょうから、日本にも黙らせるぐらいの力は要ると思います。中国に関しても同様に、他国が領有を主張しているところに堂々と海底から砂を吸い上げて島をつくって、これ見よがしに軍事基地をつくることはあっていいのでしょうか。
こうしたところに声明を発表するだけでは、全然言うことを聞きません。やはり、黙々とある程度、自衛権を固めておくことで意見を聞かせることはできるので、外交と自衛力は一体ではないかと思います。法律的にだけ考えてはならないのであって、国際政治のなかで何ができるか、ということも考えなければいけないのです。
日本も国益に基づき外交を行うべき
あなたが言うように、ロシアとの関係の築き方は、クリミア問題も絡んできたので非常に難しいことになってはいます。ただ、他国が外交で言うようなことを、日本も言わなければいけません。「我が国の利益として、言うべきことはこういうことです」「ロシアは、ヨーロッパ諸国との関係を悪くしないように努力してください。誤解があるならば、その誤解を解くように努力してください」とお願いしなければなりません。
クリミアはもともと火薬庫のような難しい場所なので、直接日本がどうこうできる問題ではないところがあります。ただ、ロシアと仲良くなることでロシアを説得することもできる。西側の一国として説得もできるでしょう。日本は他の国に根回しして、日本の外交を認めさせることが大事です。
日ロはまだ平和条約を結べていませんし、経済関係の条約などもいろいろと必要だと思います。日ロ関係をもう一段発展させて、「中国のためにロシアが戦う、ということが起こらないような関係」をつくっておけば、日本の安全保障に非常にプラスとなります。
また、経済的にも北海道と極東ロシアとの関係を強くすることで、もう一つの安全なルートができます。今、ホルムズ海峡からの石油が入ってくるかどうかばかりを議論していますが、ロシアにも天然ガスやその他の資源がたくさんあります。世界で孤立しないために、ロシアにもパイプをつくっておくほうが安全です。
また、ロシアとの仲が良くなることで北朝鮮への牽制も効きます。北朝鮮はロシアが怖いはずです。背後に核大国がいるというのは怖いことです。日本とロシアの仲が良ければ、北朝鮮への抑止力にもなります。北朝鮮も、アメリカとロシアと両方から挟まれるとすごく嫌でしょう。そういう意味で、非常に賢く交渉する力が必要です。
神の声の発信地である日本
道を拓くチャンスをつかめ
それぞれは、やや矛盾していることのように見えるかもしれませんが、今、EUの国々には神の声が聞こえないので仕方がありません。神の声は今、日本を通して世界に届いているので、こちらを優先していただかざるを得ないと思います。
プーチン氏は悪く言われていますが、彼が親日家であることは間違いありません。そして、ロシア国民も親日的な態度をとっているので、「ウルトラC」を仕掛け、友好関係を深めるチャンスです。何とか道を拓きたいのですが、日本では政治家の頭がまだ少し古くて、アメリカの言うこと、あるいはEUの言うことを聞くことばかり考えています。けれども少し考え方を変えて、日本としての独自性を出してもいいのではないでしょうか。
衆院の憲法審査会に呼ばれた長谷部恭男・早稲田大学教授らが、「安保関連法案は憲法違反だ」と言っている背景には、「島一つぐらいのために、アメリカが戦ってくれるとは思えない」という気持ちがあるのでしょう。それであれば、日本自身の自衛力や、他の国との外交関係の強化等について努力すべきであると言っておきたいと思います。(了)