http://the-liberty.com/article.php?item_id=12427 幸福の科学出版
《本記事のポイント》
◎トランプ減税・インフラ投資で、好景気の「おすそ分け」が来る
◎トランプの産業政策を、日本が真似するようになる
◎両者に共通する哲学は「自助努力からの繁栄」
1月20日にドナルド・トランプ米大統領が就任します。本欄では「トランプ革命の波が、日本にやってくる」という趣旨のことを発信しています。ただ、「具体的に、どんな波がやってくるの?」という部分は、頭の中で整理できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、主に経済の観点から、トランプ氏の政策が、日本の経済にどう影響を与えるのかを整理していきます。
トランプ氏の政策が、日本に及ぼす効果は、主に2つに分けられます。編集部で勝手に命名するとすれば、一つ目が、「おすそ分け効果」、二つ目が「おれについて来い効果」です。
◎「おすそ分け効果」
一つ目の「おすそ分け効果」は、「豊かになったアメリカ人が、日本企業の製品をたくさん買う」効果です。
主な原因は、トランプ氏が掲げる「大減税」と「大規模なインフラ投資」。政府が、企業から吸い上げる税金を減らす上に、企業に鉄道や道路の建設をどんどん発注します。
するとアメリカの企業は、利益をどんどん増やします。増えた分のお金で、新しいビルを買ったり、従業員の給料を上げたり、新しい従業員を雇ったりします。こうして、アメリカ人全体の給料が増えていくのです。
豊かになったアメリカ人は、前よりも買い物の量を増やします。
その増えた分には、日本企業の製品も含まれます。こうして、日本企業も売り上げを伸ばすのです。これが「おすそ分け効果」です。
「おすそ分け効果」には、メカニズムがもう一つあります。やや複雑な話なので、斜め読みでもかまいません。
それは、「アメリカのドルの価値が高くなる」ことです。アメリカの景気が良くなるのならば、日本やヨーロッパなどを含む、海外のお金持ちや銀行は、こぞって、アメリカ企業の株を買おうとします。
しかし、アメリカ企業の株は、円やユーロでは買えません。いったん、ドルに換金する必要があります。つまり、世界の中で、ドルの需要が高まるわけです。すると、他の商品と同じく、ドルの価値も上がります。つまり、今まで1ドル=100円だったものが、1ドル=110円などになるわけです。
するとアメリカ人は、同じ100ドルで、10000円分の日本製品を買えていたものが、11000円分の日本製品を買うことができます。これでも日本企業は儲かるわけです。これはニュースなどでは「円安効果」などと言われています。
以上、2つのメカニズムにより「おすそ分け効果」が出てきます。この効果は、すでに目に見え始めています。
昨年は、株の大暴落で始まりましたが、2017年の株価は「1万9529円」という高値で始まりました。
日本の国内外のお金をたくさん持っている個人や銀行などが、「アメリカが好景気になれば、アメリカに商品を輸出している日本企業も儲かる」と考えて、それらの企業の株をたくさん買っているのです。
◎「おれについて来い効果」
トランプ氏の政策が、日本に及ぼす効果の2つ目は、「おれについて来い効果」です。これは、メディアはほとんど言っていません。大川隆法・幸福の科学総裁が、著書『繁栄への決断』で言及しています。
おれの"何"について行くのかというと、「企業の工場を国内に戻す」という貿易政策です。
トランプ氏は、国内の雇用を復活させるために、中国やメキシコなどに工場を移している企業に、工場を戻させるという公約をしています。
例えば、アップル社のiPhoneの組み立て工場は、人件費の安い中国にあります。トランプ氏は「中国から輸入された製品には45%の関税をかける」と言っています。もしそうなれば、アップル社は「工場をアメリカに戻そうかな」と考えざるを得ません。
こうした動きに呼応する形で、大手自動車メーカーのフォード社は3日、メキシコでの工場建設を中止すると発表しました。メキシコでせっかく安く車をつくっても、アメリカに輸入する際に何十パーセントもの関税をかけられたのでは、たまりません。そこで製造される予定だった電気自動車は、代わりに、ミシガン州で製造されることになります。
現時点では、「なんて横暴なんだ!」と、アメリカ国内でも批判が出ています。
しかし時間が経てば、アメリカに工場を戻す企業が増え始め、雇用も増えていくでしょう。この豊かになる実感の中で、「やっぱりアメリカ企業はアメリカで製品をつくって、自分達の愛するアメリカの繁栄に貢献するのは素晴らしいことだ」という世論が強くなっていく可能性があります。
泡沫候補だったトランプ氏が、1年で大統領になったくらいですから、世論に何が起こるか分かりません。
こうした政策への考え方は、海を渡った日本企業にも影響を及ぼします。
アメリカが製造業の国内回帰で繁栄を取り戻していく——。そんな様子を横で見ている政治家や言論人、情報に敏感な有権者の中で、「日本もあれをやろう」と言い出す人が増えていく可能性があります。
日本でも、例えば自動車メーカーの海外生産比率は、トヨタが54.6%、日産が78.2%、ホンダが84.9%です。もし、「日産が中国・広州の巨大工場を閉鎖し、福島県に新たな工場を建てます」といったニュースが増え始めれば、それこそ地方創生にもつながるでしょう。
それは、日本の製造業の大きな流れになるのか、政府が何らかの税制優遇などをするのかは分かりませんが……。
これが、トランプ氏の経済政策が、日本に与える「おれについて来い効果」です。
経済政策で成功例を見せられれば、世論なんてあっという間に変わってしまいます。アベノミクスの金融政策として採用された「インフレターゲット」も、最初は日本でも批判されていました。それが受け入れられた決め手の一つは、2012年にアメリカがインフレターゲットを導入したことでした。
◎経済のトランプ革命に共通する「自助努力の思想」
以上2つの効果には、根本にある思想において共通点があります。
トランプ氏の、「減税」などの政策の根底には、「オバマケアなどの福祉のためにお金を吸い上げるのではなく、企業に自由を与えて発展してもらう。そうでないと、弱者を助けられない」という考え方があります。
製造業の国内回帰」の根底には、「まずはアメリカ経済を建て直さないといけない。景気をよくしてから、他の国からものを買ってあげればいい」という考えがあります。
どちらも、「自助努力からの発展・繁栄」「自助努力の考えが、単なる利己主義になることなく、利他の思いへと変わっていくことが大切」(『繁栄への決断』)という思想です。
仏教における「利自即利他」の考えは、経済においても当てはまるようです。(馬場光太郎)
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