コロナで、長らく訪問を控えていましたが、久しぶりにふるさと高松に向かいます。学生時代から変わりませんが、いつも瀬戸内海を見ると、「帰ってきたなあ」という気持ちになります。
瀬戸大橋の構造物の合間から見る瀬戸内海ですが、島の上では、一瞬ですが、見晴らしがよいところもあります。小さな富士山型の大槌、小槌島もきれいに映っていました。あの向こうに高松のみなとがあります。
かつては、岡山県側の宇野から連絡船に乗って、直接高松のみなとに帰っていました。下の写真のように、海に近い、低いところからところから、まちや島々を眺めていたわけです。
さて、陸地につくと、車窓は下写真のような風景となります。穏やかで優しい風土を表していますね。
高松での用事を済ませて、東京へとんぼ返り。坂出駅で、20分ほど余裕があったので、坂出人工土地へ急ぎました。大高正人さんの60年代末の作品です。以前よりメンテナンスが良くなった印象です。
あと、10分しかないと思いながら、人工「土地」の上へ。残念ながら、ホールのほうまで行く時間はありません。私は、大高正人さんの都市・建築に対する姿勢に共感するものがあります。この建物も、チャレンジングで好感を持ちます。コルビュジエ的な造形もいいと思います。ただ、今の感覚からすると、コンクリートの存在感が、住む環境としては強すぎるかもしれません。今の良さを残しながらうまくリノベーションすることもできるのではないでしょうか。
60年代から70年代にかけては、コミュニティの存在を前提としつつ、高密度に居住する方法を建築的に解決する方法が模索された時代だと思います。同時期に、ロンドンのバービカンエステイトもできています。こちらも坂出人工土地と同じで、コンサートホールなどの文化施設を複合しています。
下写真のハノーバーのイーメツェンテュルムも同じような課題への挑戦だと思います。どちらも、コンクリートの可能性を追求したデザインですが、後者を案内してくれたランドスケープアーキテクトが、”Too much concreet!"といっていたのを思い出します。確かに、私も今の感覚では、その意見に賛成です。バービカンも大規模なリノベーションがなされるというニュースがありましたが、坂出人工土地も、大高さんの作られた骨格が大変美しいので、リノベーションにより、さらに住む人にやさしい、心地よい風景が生まれるのではないかと期待します。
・・・と思いながら、急いで駅に向かう途中に遭遇した住戸。玄関を自分なりに改造しています。リノベーションですね。自分のうちという意識が強く働いたのでしょう。こういう思いも包み込むようなリノベーションもあり得るような気がします。
いい建築は、いろんな形で受け継がれていく可能性を持っている、ということでしょう。
高谷時彦
建築・都市デザイン
Tokihiko Takatani
architecture/urban design