まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

今日は高知泊・・少しぶらぶら

2020-03-31 22:00:48 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

 コロナウイルスの感染で夜出歩くのは自粛すべき・・・賛成です。一人で少しだけぶらぶら街を観測するのはいいでしょう・・・か。

 まずは百足屋。いつ建てられた建物かわかりませんが、デザイン的にはアールデコだと思います。昭和の初期に流行していますが、もう少し新しいかもしれません。

このロゴマークが出色。足袋屋さんだとのこと。すべてに足に履くとすると出かけるまでに時間がかかりますね。

すぐ近くにはオルブリッヒ。ウィーンです(セセッション会館、ウィーンのような!?)。

自由ですね。

こんな靴屋さんもあります。高知は足袋と靴がいいですね。

すぐ近くにはこんな商店街があります。

魚の棚商店街と書いてあります。

道の両側から下屋を出すことがお上から許されていた町の名残で日よけテントが出ているのだとのこと。なるほど・・・。

はりやまばし商店街。木製のアーケードが、確かコンペで選ばれた案だったように記憶します。

そろそろ散策を終えてホテルに帰りますが、追手筋に出ると、こんな風景が見えます。

これは県立図書館、オーテピアです。中にも入ってみました。中央部に収蔵庫を設けて建物の外周部に閲覧室を配置。メザニン階もうまく取り入れています。何よりも外周部の開放的な雰囲気と、縦ルーバーの存在感が面白い。秀作です。今度は昼間に見に来ます。

そういえば、今日のフライトでは前回のように紀伊半島などは雲のために全く見えませんでしたが、それでも富士山がさすがです。頂部だけ出てくれました。

ちょっと水墨画のような富士山でした。

高谷時彦 建築・都市デザイン

TOkihiko Takatani  architecture/urban design

 

 

 

 

 

 

 

 

 


本山町は石垣の美しい山岳集落

2020-03-31 20:40:08 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

 山岳都市というとイタリアを思い浮かべます。坂道や崖線に並ぶ石造りの建築群。都市は、人々の営みが集積する文化的な所産・・・時間が作る芸術作品・・・という感慨を覚えたことを思い出します。ペルージアやウルビノ・・・。

 しかし、日本にも実に美しい山岳集落があります。最近訪れるようになった高知県本山町。石積みの美しい山岳集落です。今日の打ち合わせが終わった後、ふと見上げた階段にひかれて少し登ってみます。桜もきれいです。

こんなのぼり道があります。小さな祠もあります。日本の場合は、植栽も組み込まれた柔らかな風景になっています。人のたゆまぬ手が作り出す風景です。

水路の何気ないコンクリートの手すりもいいですね。

緩やかに湾曲する擁壁もうまく風景に収まっています。

石石垣の上の立派な民家。今度じっくり見学したいものです。中門づくり?なんという形式でしょうか?

帰りがけには石積みの上の何か典型的な農家の春!

絵になりすぎています。

I love the beauty of historic hill towns in Italy. I realise that an urban form is an elaborate work of citizens for many many years.

I found Motoyama- Cho is also a very beautiful hill town. I'm happy to have a chance to visit this historic hill town with elaborate stone walls.

 

 

 

高谷時彦 建築/都市デザイン

Tokihiko Takatani  architect/urban design

 

 

 


研究室の片づけ終了

2020-03-24 15:04:53 | 建築・都市・あれこれ  Essay

今日は大学院高谷研究室の修了生に終了証をお渡しする日です。卒業式・修了式がなくなったため研究室で渡すという変則形式になってしまいました。

ただ、私の研究室はちょうど引っ越し完了の状態。若干さみしい。窓の外は春の雪です。

少し前まではこんな状態(池田さんの写真、お借りします)。

さみしい研究室ですが、最後の二人を送り出すことができて、ほっとしています。お役目御免と思うと寂しい面もありますが、ここからそれぞれ新しい環境で楽しく、充実した生活を送っていきたいものです。

I've just cleared my room! This is the last day of my profession in Koeki Graduate School. I will hand a master's certificate to each of my student directly this evening in this room as the formal graduation celemony was canselled due to new Corona-virus infection. Laboratory room became empty as it was 15 years ago when I started my university life in the graduate school of Koeki University in Tsuruoka City.

Tokihiko Takatani  architect/urban design

高谷時彦

設計計画高谷時彦事務所

東北公益文科大学大学院

 

 

 


熊野卒業旅行拾遺その2

2020-03-22 16:22:52 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

卒業旅行で庄内から一路、熊野、新宮を訪れた話をしましたが、その1週間後、中辺路から訪れた熊野本宮を今度は上空から飛行機で眺める機会がありました。好天に恵まれたある日、羽田から高知に向かいました。

富士山もきれいに見えます。

とすると、紀伊半島がはっきり見え、熊野川の蛇行が目に入ります。ちょうど下の写真の砂州の中、緑が浮いているところが旧熊野本宮のあった場所です。地上から訪れると次の写真のように見えます。

明治時代に大洪水があり、今の山の上に写ったそうですがそれまでは熊野川の砂州の上にあったのです。

前回の話の続きになります。

辻原登さんの『許されざる者』の主人公槇(大石誠之助)は(小説では描かれていませんが)大逆事件で死刑となります。ここでいう大逆事件はいわゆる幸徳秋水事件ということですが、この時私が飛行機で向かっていたのが高知。幸徳秋水の故郷です。まちを歩いていても掲示があります。

高知も秋水や中江兆民、板垣退助など多くの思想家や文化人を輩出したところです。高知「も」というのは、庄内が石原莞爾、大川周明、清川八郎などの思想家や文化人が多く出ている文化的な濃い空気の場所だからです。庄内、熊野(新宮)、高知・・・何か不思議なつながりを感じます・・・・・。ちなみに辻原登さんは鶴岡松ケ岡(明治初期の庄内藩士による開墾地。私も指定文化財の開墾士住宅=新徴屋敷を地区の案内所にするお手伝いをしました)のことも小説に書いておられます。


熊野卒業旅行拾遺

2020-03-22 15:26:22 | 建築まち巡礼大学院 Research Tour

今年で東北公益文科大学大学院でのお役目は終了。最終講義のことは前回のブログにも書きました。

従って、今年の修了生の皆さんとの卒業旅行は最後のものになります。

いつもは、受託研究の調査も兼ねているのですが、今年は受託研究もなく、純粋の卒業旅行となりました。修了生の方々がアレンジしてくれたコースは熊野三社巡り。私たちの研究室では出羽三山羽黒修験の里手向集落のまち並み修景にこの10年ほど携わってきたので、本当にありがたい企画でした。

この写真は中辺路を経由して最初に到達した熊野本宮。

熊野は出羽三山と並ぶ修験の聖地。修験の開祖役行者が開いた山といわれています。やはり修験の聖地には独特の空気感が漂っています。

とはいえ、根っからの世俗人間である私は、最後に訪れた新宮市、速玉神社の境内にあった佐藤春夫記念館に目を奪われます。1927築で東京から移設された、この記念館を設計したのは大石七分、西村伊作の実の弟です。アールヌーボとアールデコの混ざり合ったような、昭和初期の雰囲気、手触りして楽しい小作品です。

 

 

西村伊作が和歌山の山林地主であることは『大正夢の設計家』という本で知っていましたが、新宮が故郷だとはその時まで思い至りませんでした。新宮は中上健次の小説に出てくるのでその面影をたどりたいという気持ちはありましたが、この時点で私の頭の中から中上健次は消え去りました。

私は、最近の最終講義の中でも過去を振り返る中で、東北公益文科大学大学院で声をかけてくださるまで多くの大学の建築科で教えていたという話をしました。実はその時に触れませんでしたが、一番最初に教えたのは、文化学院でした。そうです、西村伊作の創設した学校です。

西村伊作の叔父の大石誠之助を主人公とした小説が『許されざる者』です。

活劇風の要素もあるエンターテインメント性あふれる大変面白い小説ですが、西村伊作さんも当然登場します。作者は文化学院の出身?である辻原登さん。辻原登さんも和歌山のご出身とは知りませんでした。以前たまたま鶴岡のまちなかキネマをご案内する機会がありましたが、「建築家」には非常に興味を持っていますとおっしゃっていたことが思い出されます。

さて、卒業旅行の最後の立ち寄り地は、本州最南端の潮岬。辻原登さんの小説の中で主人公の槇(大石誠之助)は「ここはいいね。おそらく潮岬の台地は世界でいちばん人間が満ち足りた気分になれる場所だ」といいます。甥の勉(西村伊作)は「だれもが安らかな気持ちで死んでいける土地かも・・・・」と応じます。

私は、こういう水平線を見ると三島由紀夫の『午後の曳航』や『豊饒の海』の何巻目かに描かれていた、水平線から船が現れるのをじっと観測するウォッチャーの記述を思い出します。潮岬灯台も観れるとさらにうれしかったのですが、またの機会に訪れたいものです。

こんな機会を下さった修了生の皆さん有難うございました。