まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

大正の近代和風建築旧安田楠雄邸を訪れました

2009-07-23 20:15:11 | 建築まち巡礼東京 Tokyo

P1060474 P1060512

旧安田楠雄邸は大正8年竣工の木造2階建て近代和風建築です。親切な「建物応援団」の方の案内で昼休みに見学してきました。

全体的な雰囲気は写真でなかなか伝わりませんが、間口が狭く奥に深い雁行配置が特徴的です。玄関側(東)と奥の蔵側(西)の両面接道ということもあり中央部の座敷に向かって両側から格式の等高線が高くなってきます。中央部1階の残月の間、2階の客間が等高線の最高部となり、そこからの眺めに対応して南庭がつくられているようです。

P1060485 P1060488

デザイン、材料など見るべきものが多いのですが、私はとくに台所(上左写真)の斬新さに驚きました。昭和の初期にお嫁さん(最後の御当主安田幸子さん)が来たのを期に土間式だったものを当時の最新式キッチンの「鈴木式高等炊事台」に改装したものです。ただしトップライトは竣工時のものです。トップライトは明治時代から室内での高照度を必要とした写場(写真館)で多く用いられましたが、ここでは「近代的な明るい台所」をお嫁さんのためにつくったことと思われます。上右写真はガラスの丸棒の食器棚です。なかなかモダンです。建築におけるガラスは意外にも手吹きの時代が20世紀初めまで続いたのですが当然これも手吹きの製法だそうです。

 

P1060457 P1060514

安田邸は千駄木の団子坂上を北に入る細い道(地元で言う保健所どおり)に面しています。「細い道」とかきましたが、10年ぶりに訪れてみると、歩道も整備され地域センターも出来ていて、すっかり表情を一変していました。沿道の建築も変わってしまったようにも見えましたが上左写真のようなスパニッシュな雰囲気の住宅など以前と変わらぬものも多いようでした。須藤邸の屋敷構えも変わっていません。上右のようなちょっと野心的な造形もあります。なかなか良いと思いました。

以前団子坂上に事務所があったときには昼休みにこの道をよく通りました。また団子坂上を保健所どおりと反対の南に行くみちは藪下通りと呼ばれています。もう30数年前になりますが大学から根津神社を抜け車の来ない静かな藪下通りを通って鴎外図書館に通っていたことを思い出します。

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


建築家の意思が感じられる爽快さ

2009-07-21 21:51:59 | 建築まち巡礼東北北海道 Tohoku, Hokkaido

 

P1060447 P1060436

泉パークタウンの見学は続きます。

東北ブロックの幹事齋藤さんが用意してくれた最後の見学対象は原広司さん設計の図書館(宮城県立図書館)でした。

大きな伸びやかなスケールと小さな手作り的なスケールが不思議に並存する原さんらしい建築です。建築の大きなスケールで作られた人工の谷地形(上右写真)が川が流れる自然の谷筋に対応したものであることがよくわかります。

原氏の建物は写真になりやすいような気がします。それは、人がいて初めてその場が形成される中間的なスケールが見せ場になっていないことに関係しています。大きな構成とディテールは素人にも撮りやすいものです。人の居場所の集合であるべき図書館で中間的なスケールにもっと配慮すべきではないかなどという疑問も浮かびます。

しかし、丹念にクライアントの夢に付き合って積み上げられた、現代に求められる模範解答的な住宅地の景観を見てきた目には、あたりかまわず(?)建築家の意図がまっすぐに表現されたこの建築が大変爽快に感じられたことを白状しなければなりません。

Busshelter

最後に市内で見たバスシェルターです。緑のインフラがきちんとしているのでこういう「面白いかたち」がどんどん増えてもよいのではと思います。

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


泉パークタウンは緑豊かな環境を守っていました

2009-07-21 21:17:10 | 建築まち巡礼東北北海道 Tohoku, Hokkaido

都市環境デザイン会議の09年仙台総会に参加しました。

3日間にわたる日程のうち1日目を除き、2日目の総会、judi賞選考会、3日目のエクスカーションに参加しました。

judi賞の発表会はまさに多彩で充実した内容でした。地元大学の皆さんがそれぞれのやり方で地域の課題に取り組む姿勢にも好感が持てました。また地元東北ブロックの皆さんの「おもてなし空間の付加改造による街並み再生提案」など、プロの味が光る研究プロジェクトも多く見られました。

Izumiparktown02 Izumiparktown01

 

次の日には住宅地開発の成功モデルとされる泉パークタウンを訪れました。

上の写真にあるように大変緑豊かな住環境が実現しています。案内してくれた三菱地所の方によると上左写真の歩行者通路を含む右側は移管済みの公道、左はそれぞれの画地に付帯した緑地の連続したもので管理組合が維持管理をしているとのこと。共有ではなく敷地の面する個人が間口分を所有しています。フランクロイドのまちオークパーク(下写真)で見た住宅地と風景やシステム(個人が管理する道路的スペース)が似ています。

上右の写真は、泉パークタウンの中でももっとも景観がよいとされる地区の風景です。ここには500㎡最低宅地制限がついています。本家のオークパークではないですが、ライト風をモチーフにしたような住宅が並んでいます。この町にはハウスメーカーの注文住宅がよく似合います。豪華さを演出するためのノーハウを知り尽くした注文住宅のプロにとっては腕のふるいがいがある町のように思えます。しかし、「住宅の外観はシンプルで出来るだけさりげなくありたい、住む人の気品が時とともに自然な表情を作ってくれるはず」と信じているような建築家にとっては大変難しい敷地かもしれません。

P1040594 P1040618

 

 

 

整備された公共空間、地区計画の存在、住民の街並み景観に対する意識の高さ、このコミュニティにふさわしい住宅のスタイルなど、美しい住宅地景観をみながら大いに考えさせられました。

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


湯の浜の円形共同浴場

2009-07-12 16:26:44 | 建築・都市・あれこれ  Essay

 

 

Yunohamaonsen_2 P1060290

 

荘内日報によると湯の浜温泉の上区浴場が建て替えの予定です。

新聞に出ていた外観が面白く、大学院生のTさんの車で由良に向かう途中に見学してきました(上左写真)。

1958年に竣工した建物ですが、円形の平面に、男女浴室(1階)、レストハウス(2階、今はサッシが取り払われて屋外になっている)、展望台(屋上)という機能がうまく収められています。更衣室や浴室(それからトイレ:上右写真)にはハイサイドから光が取り入れられ、円形の平面とあいまって大変印象深い空間となっています。RC造でいろんなことを試みていた時代のもので、マッシュルーム状の柱頭と無梁版の構造には設計した方の心意気を感じます。

この温泉を見ていると二つの建築を思い出しました。

ひとつは、上の山温泉の湯町共同浴場。こちらもRC造としては古いものでしたが、やはりハイサイドからの光が強く印象に残りました。湯の浜と同じく年配のなじみ客が、ゆうゆうと前屈運動などをしており、ゆっくりとした時間が流れていました。

もうひとつは、鶴岡公園の猿の園舎です(下左写真)。これはいつ建てられたものでしょうか。8角形の平面で、猿の上に鳩舎(?)を重ねたところがユニークです。1階はRCラーメン構造ですが2階は放射状の垂木を軒桁が受け、それを力腕木、方杖のようなものが支えています(下右写真)。少なくとも小屋組から上は木造に見えます。面白い構造の発想です。だれが設計したのでしょうか。

Saruennsha_2 P1060381

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani


由良のまちづくり

2009-07-10 16:10:17 | 建築・都市・あれこれ  Essay

 

鶴岡市由良でまちづくりのお手伝いをしています。

 

 

Yuramikaeshi Yuraworkshop

 

 

東北公益文科大学大学院・公益総合研究所では鶴岡市、由良町まちづくり協議会と協働で由良町のまちづくり計画作成に着手しました。

由良は日本海に面した港町で新鮮なおいしさでブランドとなっている「由良のたら」や夕日と砂浜の美しい白山島などで有名です。夏は鶴岡や内陸方面からの海水浴でにぎわいます。

 

Yurasazae Yurakodomo

 

先週の土曜日(7月4日)にはまちの皆さんと打ち合わせをした後浜辺で夕日を眺めながらバーベキューを囲みました。とれたてのサザエの味は格別です。ご馳走様でした。

 

 

記事一覧 設計計画高谷時彦事務所へ

高谷時彦記 Tokihiko Takatani