まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

やっと今井にきました

2011-07-18 23:38:02 | 建築まち巡礼近畿 Osaka, Kansai

今井を見ないといけない、早く見たいと思っていましたが、ようやく訪れることができました。

都市環境デザイン会議の総会が奈良であったため、最後のエクスカーションの日に、単独行動させてもらいました。

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ここの町屋は比較的間口が広く、2列6間が基本形になっています。通り土間も広いものが多いようです。中のまの奥側が納戸になっています。

中庭を挟んで蔵があります。中には蔵に前座敷が付いているものもあります(下写真)。正面が蔵の入り口、右側が床の間。天井の竿ぶちの方向性をみると蔵方向を上位の格においていることがわかります。

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今西家には急遽電話をして見学させてもらいました。伊藤ていじ先生が「発見」してくれたから今に残っている・・・。先生は国宝にしたいとずっと思っておられた・・・・・・。おうちの方のお話をうかがっていると、伊藤先生との信頼関係がこの町の保存に大きく貢献していることがよく実感できました。

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今更ながら伊藤ていじ先生の偉大さ、そして気さくにお話ししていただきた事を思い起こしました。


ならまちを歩く2

2011-07-18 23:20:24 | 建築まち巡礼近畿 Osaka, Kansai

続きです。

町家の敷地割を活かすという意味では、次のような試みも面白いと思いました。

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細い間口の中にインキュベーター施設として小さな店舗が並びます。

鉄骨造で小さな単位性と仮設性をうまく作っています。

一部はRCもあります。

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こういう試みはちょっと離れた場所にもあります。

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また別の場所には屋台村のようなものもあります。

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いろいろ新しい試みも必要なのです。

では下の写真のような事例はどう考えればよいでしょうか。

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周辺は上の写真のような町屋が多くあります。

それらとは関係なく自分のスタイルでまとめています。一人で歩いているときに気になっていたのですが、翌日案内してくれたKさんによると妹島和代さんの設計だそうです。

     

みんな「なら町家」ばかりになってしまうよりもこういうのもあってよいように思います。ただ、わたしがここに設計するチャンスを与えられたら、町屋が培ってきた空間の原則みたいなものにこだわることと思います。

    

たとえば、下のようのな外と内の関係の作り方や、空気や光の流れ方など、どうしても気になってしまいます。まあそれも設計のスタイルということでしょうか。

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ならまちを歩くその1

2011-07-18 22:51:12 | 建築まち巡礼近畿 Osaka, Kansai

都市環境デザイン会議の終了後、関西メンバーのCさんの計らいでならまちを歩きました。奈良まちづくりセンターのKさんが同行してくださいました。

世界遺産元興寺の境内跡地を中心に、1300年余りも栄枯盛衰を繰り返してきたまちが、ならまちです。

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4間前後の間口の町屋が多いようです。奥行きは60mほどもあるそうです。

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しかしこういう空き家もあります。

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しかし、空き家が出るのは必ずしも悪いことばかりではありません。

     

このように2件分敷地を使って今までにない商売をしている人もいます。今までにない空地と町屋のコンビネーションです。中心部の密度が下がることで新しい利用形態、新しい町屋の形態が生まれるように思います。

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また、一つの敷地割の中でもいろんな可能性があります。下の写真は町屋敷地を少しゆったり使ったショップです。

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中は奈良町屋の特徴をうまく活かしています。

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奈良での都市環境デザイン会議

2011-07-18 22:17:46 | 建築まち巡礼近畿 Osaka, Kansai

都市環境デザイン会議21回定例総会が奈良でありました。

久しぶりの奈良。旧JR奈良駅は案内所になっていました。

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朝のうちに東大寺や2月堂のあたり、奈良公園をさっとめぐってきました。

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街並みに配慮したカフェなどもできています。

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東大寺のあたりを歩くのは小学校の時以来かもしれません。

南大門の大きさには圧倒されます。

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日本の寺院は建築が大きくても自然と調和した雰囲気があります。建築の壮大さが単独で表現されることがないのです。下の写真は2月堂の舞台からの写真。

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2月堂下でうどんを食べて、都市環境デザイン会議総会に間に合うよう、ならまちセンターに急ぎます。途中、関野貞の物産陳列所に出会いました。関野は唐招提寺の大改修の折に小屋組みにトラスを導入したことで知られています。

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午後の関西ブロック主催のシンポジウムは大変刺激に満ちたものでした。関西ブロックのメンバーは被災地の復興のあり方を探るために都市形態、漁港とまちの関係などを分類しています。議論の前提が少しずつ整理されてくるように思いました。

     

復興に風景の再生と創造の視点が欠かせないとすれば、私たちの出番が間もなく来ることになるでしょう。


灯台とアインシュタイン塔

2011-07-15 21:04:07 | 建築・都市・あれこれ  Essay

庄内鶴岡の日本海沿岸部では美しい灯台に出会うことができます。

下の写真は、加茂にある荒崎灯台。

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全面モザイクタイル貼りです。タイル張りの灯台はめずらしいのかというと、意外に多いようです。赤灯台と白灯台をタイルで張り分けているのもあります。

     

ちなみに荒崎灯台は1952年12月竣工ですから、私と全くの同級生です。

      

上部の入り口壁はアシンメトリーな造形です。片側だけに壁があるのは海からの風雨・風雪を避けるという機能上の理由もあるでしょうが、私は中心軸に沿って対称形となることを嫌い、動きのある形を狙った意図的なデザインだと考えます。

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上の由良の灯台(1961年築)のように海の方向に重心が移動するような動的なデザインもあります。灯台と言うと直立する塔というイメージがありますが決して静的な中心性を表現しているのではなく、非対称で動きのあるデザインが多いということがいえます。

灯台を見てきて思い出すものがあります。下の写真は東京天文台(我が家のご近所です)のアインシュタイン塔。全方位に対して対称形である天球を観測するということから、中心軸のあるシンメトリカルなデザインが採用されてもよさそうですが、このようにアシンメトリカルな動きのあるデザインです。

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入り口の側壁は当時流行の表現主義的なラウンドコーナーになっていますが、基本的に非対称。崖下(左側)への方向性が感じられる動きのあるデザインです。ちなみに少し歩くと同時期(1930年)につくられた旧図書館があります(下の写真)。

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灯台、もしくは船のメタファーを感じます。由良灯台の丸い開口部や、外部階段を髣髴させます。

もちろん時系列的には、1930年の天文台の方が先です。

     

ところで、東京天文台のアインシュタイン塔はもちろんメンデルゾーンのアインシュタイン塔(1921、下の写真)にちなんだ名前です(写真はwikipediaの項目Einstein Towerからの引用です)。

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Einsteinturm_7443.jpg

Einsteinturm_7443

本家・表現主義建築の持っている「流れるような動きのあるデザイン」、この「流れ」の中に庄内鶴岡の灯台たちも位置していると考えたいのです。