まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

景観の美しさには理由がありました

2022-06-29 14:33:06 | 建築・都市・あれこれ  Essay

京王多摩川に事務所を引っ越してからは、よく多摩川べりを散歩します。下のような風景が目の前に広がります。いいなあと漫然と見ていましたが、この風景を成り立たせているいくつかの要因があることに気づきました。

この風景のポイントを下のスケッチに書き出しました。

まず

①水量が多いこと、あるいは多く見えること

実は写真の左手、下流側すぐのところに二ケ領用水の取水堰があります。したがってこの辺りは、水がたまったようになっています、そのせいで、上の写真のように、滔々とした流れのように見えます。少し上流、あるいは下流に行くと、このような堂々とした「流れ」ではありません。

②対岸(川崎市)にマンションが見えず、緑の塊が見えること

これも偶然というか、極めてまれな景色です。このあたりの右岸の風景は川崎の市街地です。タワーマンション銀座の武蔵小杉も遠くに見えますが、多くのマンションが建っているのが「川崎らしい」風景です。このあたりだけ違うのは、大きな公園があるおかげです。左岸側から眺めるのにはラッキーです。

③手前、足元には広い緑が広がること

これは水流の関係でしょうが、このあたりでは左岸(私の立っている方)に広い、河川緑地が広がります。反対に川崎側は、大きな緑地がないので、水際からすぐに街が立ち上がり、さらにその向こうに多摩丘陵の長い稜線が見えます。これも私たちにとってはラッキーです。

④京王線の橋梁が、景観を引き締めているように見えること

京王線の橋梁はトラス橋(下路式、あるいはスルートラス橋)です。全体の透過性が高く、斜材の間から多摩丘陵が見えています。

以上のような恵まれた条件があることで、私の散歩も気持ちよく行われているのかなと思いました。

反対に川崎側からはどのように見えているのでしょうか。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko Takatani

architect/urban designer

 

 

 


磯崎新『日本の建築遺産12選 語りなおし日本建築史』新潮社2011

2022-06-26 20:14:38 | 建築・都市・あれこれ  Essay

事務所を文京区千石から調布市多摩川に移して、いろんなことが変わりましたが、その一つが本の扱い。広さが四分の一くらいになったので、なるべく本は増やさないようにしています。図書館がすぐ近くにあるので、気軽に利用しています。買わなくなったのですが、読む量は増えています。

磯崎さんの「語りなおし日本建築史」、大変刺激的な本です。建築=構築する力ととらえます。「非自然・人工の存在を構築しようとする意志といとなみ」=建築ということです。私には、大変しっくりきます。

ただ、本日書きたかったのは、磯崎さんの論のすばらしさではなく、この本の写真のすばらしさです。磯崎さんは構築する意思を「水平の構築」と「垂直の構築」に分けて論を進めますが、水平の構築の位置例として満を持して最後に代々木体育館を登場させます。

説明の写真が見事です。新潮社写真部の広瀬達郎という写真家です。面と面の接するラインの美しい曲線が、立体的に描き出されています。それは外部写真でも、内部写真でも同じです。汚いスケッチでは伝わらないでしょうが、面の切り替わりの端部、エッジラインの表現が実にうまいと思いました。

この写真によって、改めてこの空間をインテグレートして生み出した丹下先生の「構築する意思」のすごさを思い知ることになりました。今まで一体何を見ていたんだろうか・・・この年になっていつも思うことです。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko Takatani

architecture/urban design

 

 

 

 

 


吉阪隆正展で気づいたこと

2022-06-21 19:47:37 | 建築まち巡礼関東 Kanto

吉阪隆正さんの大規模な回顧展に行ってきました。U研OBのSさんのご厚意でチケットをいただいていました。まず驚いたのは、本当に多くの方が来られていたことです。吉阪さんという人物の影響力の大きさに、今更ながら圧倒される思いでした。

その発想力の自由さ、豊かさ、それから人を引き付ける力・・・改めて大きな存在だったことに思いを馳せました。今でもこんなに「ファン」がたくさんいるんだ、そのことに素直に感動です。

会場は東京都現代美術館。柳沢孝彦氏の設計です。久しぶりに来たので、少しだけぶらりと歩いてみました。今まで意識的に見ていませんでしたが、細長いホール空間という明快な背骨(スパイン)空間に個々の施設がぶら下がっているという構成です。その施設群の隙間には、それぞれ個性的な空間の趣きが垣間見えます。明快なスパインですが決して単調な空間体験を強いるわけではありません。

で、はっと気づいたのが、この体験あるいは空間の感覚は、先日訪れた上田市サントミューゼと同じだ、ということです。やはり柳沢孝彦氏の設計です。

下の写真は都現代美術館の平面。

それから下の写真は、上田市のサントミューゼの平面。

サントミューゼは円形ですが、明快な背骨(スパイン)空間に各施設がとりつき、それらの隙間が楽しいものでした(下の写真)。

材質やスケール感は違っても、基本となる大きな空間の組み立て方は共通しているということでしょう。‥という当たり前のことに、改めて気づいた次第。自分の中にも、好む「空間のかた」というのがあって、いつもスケッチに登場してきてしまいます。これじゃいかん、少しは進歩しろと思いつつも・・・いやまあこれが自分の好きな、身体に染み付いた「かた」なんだろう・・・とも感じます。建築の「かた」というのは文化的な蓄積の中に継承されているものですが、個人の中にもどうしようもなくあり続けるということなんでしょうか。

 

 


一休みして多摩川散歩

2022-06-17 20:47:33 | 建築・都市・あれこれ  Essay

文京区に事務所があったころは、設計作業の合間に、ふとぶらっと散歩に出るということはありませんでした。しかし、事務所が我が家の近くになって、しかも多摩川がすぐそばにあるという環境のせいでしょうか。少し疲れると川のほうにぶらりと歩いてみるようになりました。

いつものように、土手の上に上がってみると、(少し前の写真ですが)こどもの日・・・だったんですね・・・こいのぼりを見るまで全く意識をしていませんでした。

映画の町調布ということで上映イベント。

川の向こうに、よみうりランドの観覧車とジェットコースター(名前がついているのでしょうが、わかりません)が見えています。

日暮れ時の、鉄橋もいいものです。

ついでも電車も。

文京区の事務所やその周りにも愛着を持っていたのですが、やはり、一日中調布市内で過ごすようになると、自分の身近な環境に自然と興味が向かっていくのですね。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko Takatani

architect/urban designer

 

 

 


別所温泉をぶらり、まちあるき

2022-06-05 20:16:05 | 建築まち巡礼中部 Chubu

別所温泉・蚕都上田の最後のメモになります。柏屋別荘と倉澤蚕室を見た後は、別所温泉の建築巡りを楽しみました。お昼は、倉澤蚕室をダジャレ交じりで案内してくださったボランティアのかたの食堂(こちらが本業)で肉うどん。「肉」といっても馬肉なんですね。さすが信州。

別所温泉といえば安楽寺の三重塔ですね。

 

そして常楽寺。

 

 

北向き観音。ただしこれは本堂ではなく、お隣にあったお堂。懸造りのように見えます。近くに寄れないのが残念。

こちらはお風呂、外湯。別所温泉にいたにもかかわらず、夜は都市環境デザイン会議の酒豪の皆さん(北陸・東北ブロックですから)と深酒。温泉に入っていません。朝、シャワーを浴びるのが精いっぱいのところでした。時間があればひと風呂浴びたかったのですが。

別所温泉駅に到着。

この駅もいいですね。

上田との間にある足島神社。下之郷駅です。

廃線になりましたが、かつてはここが丸子電鉄との分岐点でした。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design