今回の視察では「現代の企業経営には経済的なものと文化的なもののバランスが求められる。どちらに偏ってもならない」という帯広信金増田理事長の言葉が印象に残りました。
その言葉を反芻しつつ、六花亭真駒内ホールを見学しました。
ここでは、営利と文化が巧みに共存しています。お菓子の店でありながらコンサートホール(月に一度開催)であること、という普通は両立できないことを実現しています。
お店は写真撮影を控えましたが、コンサートのホワイエともなる茶房の写真です。すっきりと整理された構造体の中に、入れ子上に壁と天井を挿入することで独立的でいて同時に周りの空間ともつながった雰囲気の場を作っています。
上の写真に見える縦ルーバーがお菓子の店の中にもあり、開放条件(店は開放的/ホールは閉鎖的)と音響条件(店はデッド/ホールはライブ)をコントロールをしています。窓回りには地元の素材であるタモがふんだんに使われています。
開口周りのデテールも大変繊細にデザインされています。構造もデザインときちんと呼応して大変心地よいスケールを作り出しています。肉厚FBによる方立もいいですね。
理事長がいっていた難しいバランスを建築的な意味で見事に解いた事例だといえます。
もちろんこの背景には経営者の方の理念があるはずですが、素晴らしい建築を通してその理念の一端に触れたような気がします。
ちなみにこの建物は、鶴岡まちなかキネマも2013年にいただきました日本建築学会作品選奨受賞作(2006年)です。大変学ぶところの多い建築でした。
帯広の二日目は、國井研究員のアレンジしてくれた
帯広信金増田理事長へのヒアリング。
豊かな農業生産力をもつ十勝エリアをベースとする北海道第2の信金。十勝の活性化につながる地域貢献活動に力を入れており、マスタープランのもと全員でとり組んでいるとのこと。そのことについての自覚が足りない職員には、羽黒修験の体験修業を義務付けようか・・・・とは理事長の言。
楽しくお話を伺った後は、北れんがギャラリー。
彫刻家や建築家を中心とした地域の人々(NPO法人:北のれんがを愛する人々、代表は彫刻家の相原正美さん。北の屋台にも印象的な作品がありました)の力で旧柏小学校の建物やれんが倉庫をイベントスペースや食事処として活用している。
中心のホール。1923年築の園舎も新しい用途に生まれ変わる予定です。
椅子にも園児が時間とともに作りこんできた歴史が刻まれています。簡単に作りだすことができないものです。