まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

映画のまち調布: 模型展示

2024-01-29 20:06:52 | 建築・都市・あれこれ  Essay

「映画のまち調布」では、シネマフェスティバルが開催中。ということで、図書館のある建物の1階ロビーに大きな模型がありました。初代ゴジラ以来、円谷監督作品の模型を作っておられた井上泰幸さんという方をフィーチャーしての展示です。

私の世代には懐かしい「初代ゴジラがまちであばれて壊した建物」なんだろうと思われます・・・と一度書きましたが修正します。後日展示パネルをよく読むと「ラドンが壊した福岡岩田屋本店(福岡市天神)でした。

 

1/20スケールの模型だと思います。井上さんはもうお亡くなりになっているので、別の方の作品でしょう。よくできています。岩田屋本店は1936年竣工、当時はやったアールデコスタイルが基本でしょうが、軒の優しい曲線ラインは表現主義的な雰囲気もあります。基壇部のダブルコラムなど少し様式建築の面影もあり、ゴシックの香りもうまく取り入れているように思います。新宿伊勢丹を彷彿させます。

 

私の事務所にも模型づくりの達人が何人か、いました。私たちが、設計のデザイン検討のためにつくる1/20スケールの模型はほとんど部分模型です。したがってもう少し詳細な部分まで表現しますが、こんなに大きな模型はつくたことがありません。でもわが事務所の達人たちも、時間さえあればこれに迫った全体模型を作るだろうな・・・などと考えながら、横を通り過ぎました。

そうすると、なんと横にも模型がありました。撮影用のセットとして模型を作る前に、全体の確認のためにつくるとのことです。このスケールでカメラアングルなどを検討するのでしょうか。

 

岩田屋の建築もそうですが、この模型たちも素晴らしく手の込んだものです。思いが伝わってきます。いい展示だなあと思いました。ただ・・・・

残念なことに模型が置かれている建物は、正直言って、単純な箱としか呼びようのないものです。この模型の建築のようにきちんと丹精を込めてデザインされていれば、もっと親しみをもてるものになっていたでしょう。もちろん、アールデコでやれというのではありません。モダニズムで結構ですが、考え抜かれた空間構成や、こだわりのあるディテールが欲しいですね。自戒を込めて・・・。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

設計計画高谷時彦事務所

 

 


超高密度都市空間に織り込まれた豊かな公共空間

2024-01-05 19:48:10 | 建築・都市・あれこれ  Essay

事務所を自宅から自転車でいける距離に移動して以来、都心に行く機会がめっきり減りました。以前は、事務所が文京区だったので、毎日新宿、市谷、神保町と、都心のど真ん中を通勤していたことになります・・・ということで昨年暮れに、久しぶりの有楽町。TDA(NPO景観デザイン機構)の忘年会です。会場が、東京国際フォーラムの隣だったので、少し早めに行って、例の大アトリウム見学。

なかなかの迫力です。

やっぱり、渡辺さんの構造はすごい。

昨年も多くの方々がなくなっていますが、この建物を設計したラファエル・ヴィニョーリも確かその一人です。

50代の作品です。大中小の巨大なホールを狭い敷地に詰め込むという、恐ろしく過密なプログラムでしたが、よくこれだけリッチな公共的な空間を提供できたものだと感心します。国際コンペで選ばれた案が実現したわけですが、選んだほう、審査員の槇さんの目の確かさにも、改めて感動です。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urbandesign