まち・ひと・くらし-けんちくの風景-

建築設計を通してまち・ひと・くらしを考えます。また目に映るまち・人・くらしの風景から建築のあるべき姿を考えています。

高松:あわただしい帰郷

2024-10-17 16:12:50 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

所用で、あわただしくふるさと高松を訪問。船で瀬戸内海をわたり、高松に帰るのが、私の第一希望ですが、なかなかそうはいきません。少なくとも瀬戸内海を渡って四国に戻りたいということで、いつもは列車利用です。しかし、今回は、急ぎ旅ということで、飛行機で高松入りしました。高松の南の方にある空港から、瀬戸内海を北に望みます。正面に女木島、東手に屋島、間に豊島や小豆島が見えます・・・この風景を見ると、「帰ってきたな」と実感します。

 

所用の合間に、通っていた高校の廻りの建築群を巡ってみました。まずは県庁。

 

丹下先生のマスターピース。何度見ても、飽きることがないですね。コンクリートの打ち放しの美しさは、同時に型枠の美しさでもあります。杉の小幅板で組まれた型枠自体が、神社仏閣の木組みのような精緻な美しさを持った一つの作品であったと聞きます。

 

いつも同じような写真を撮ってしまいます。

県庁の前は、文化会館。こちらは大江宏さんらしい、和の建築。流さんの彫刻も、昔からあったと思います。

少し南に歩くと芦原義信先生の旧県立図書館。スキップフロアの足元が抜けたような開放的な雰囲気が、新鮮でした。自習によく来てました。ここも確か打ち放し仕上げでしたが、塗装をされてしまったのが残念です。きれいな打ち放しを保つよりも、仕上げ塗材で覆う方が維持管理は安くなるのは分かるのですが・・・・。

商店街の方に向かうと百十四銀行本店。日建設計の名作だと思います。高層ビルで、この質感、なかなかありません。またぬるっとした面材、シャープな線材、リズム感のある構造要素等、巧みな組み合わせです。最近の高層建築でこれだけの、機能性を持った美しさを感じることはあまりないのは、私だけでしょうか。

 

すぐ近くには喫茶城の眼。県庁職員として、丹下先生に協力し、のちに瀬戸内民俗資料館やイサムノグチ邸などの名作をつくった建築家、山本忠司さんの作品と聞いています。これまで入ったことがなかったので、中をちょっとだけ見学。

お客さんが大勢いましたが、空いてるところは撮影OK。長くゆったりと滞在できる喫茶店です。石(スピーカーが彫り込んであります)や厚い板の使い方など骨太のデザインが、オリンピックアスリートでもあった山本忠司さんの大きくがっしりした体つきを思い出させます。県庁でも感じましたが、最近一世を風靡した感のある建築家による、ペタペタ貼り付けるだけの木の使い方とは遠いところにあるデザインです。

この後、そのまま歩いてホテルに向かいました。ホテルの前には再び丹下先生。

取り壊し予定と聞きます。何としても、のちの世代に継承してほしいものです。

次の日は(私にしては)朝早く起きて、海岸沿いに高松港まで散歩。朝日町の四国ドック、造船所。この風景は私の小学校時代とあまり変わっていないように思います。造船所の向こう側には国鉄や専売公社の官舎が立ち並び、同級生が大勢住んでいました。

この辺り(下写真)右手が東浜。ここから左手の北浜の方にぶらりと歩きます。

北浜の方に来ると、面白いお店が何軒もできています。

下写真は、建築模型がたくさん飾ってあるので、建築関係の事務所、スタジオ。この辺りのまちづくりに関わっているのでしょう。いいですね。

東を振り返ると、再び四国ドックが見えます(下写真)。その向こうに屋島。

 

 

西の方を見ると、高松港とJR高松駅方面です。高層建築のあたりが駅です。昔は列車がそのまま連絡船に乗っていたので、鉄道駅と港は、私にとっては同じ場所という認識でした。手前左が高松城。月見(着見)櫓が見えます。私が通っていたのが城内中学校・・・今はありません。

大変珍しい海に面した水城(海城)でした。着見櫓は海に面していました。明治以降の埋め立てにより、お城が海と離れてしまいました。それでも、以前は、上写真の右手が船着き場だったので、城と海が近いという雰囲気があったのですが、今は公園になったので、逆に海と少し離れた雰囲気です。今更、埋め立てた土地を海に戻すことはできないでしょう(不可能ではない?)が、上写真の車道を狭めて、緑を豊かにすることで、お城の緑が海に接続しているような空間づくりは十分可能です。

港に到着。

確か豊島に向かう船でした(上写真)。外国人観光客も乗り込んでいました。瀬戸内芸術祭の期間かどうか、把握していませんが、外国人観光客はたくさん見かけます。

ところで、後ろに見える高層建築・・・どうでしょうか、景観として。

古い話で恐縮ですが、私が大学のころまでは高松港に着くときに連絡船デッキから見える高層建築は、先ほどの県庁(丹下先生)と百十四銀行(日建設計)だけでした。そしてその向こうに栗林公園の山である紫雲山が見えていました。さらにその背後は阿讃山脈・・・昔話をしてもしょうがないですね。

 

(上写真)舟は正面に見える女木島、男木島の東側を通り、豊島・小豆島方面に進んでいますね。

・・・ということで、散歩は終わります。

ホテルでの所用を終え、再び、高松空港。最後にまた瀬戸内海が見られたことがラッキーでした。

高谷時彦

建築・都市デザイン

Tokihiko TAKATANI

architecture/urban design

 


土佐市複合文化施設:のびやかで気持ちの良い内部空間

2021-04-18 00:27:41 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

土佐市複合文化施設。私たちも設計プロポーザルに参加しましたが、あえなく轟沈。

気持ちよい、さわやかで素直に楽しめる内部空間でした。吹き抜けと階段状のテラスが上昇感をうまく作り出しています。いい意味で、構造のモジュールが感じられない、不思議なずるずると繋がる空間が、新鮮でした。

状状

 

ホールが一体となっていることもあり、階高がかなりあるのが、いい方向に作用していると思います。

外部も面白い。

隣の学校側に圧迫感を与えないというのはコンペの条件でしたが、潔く、ホールのボリュームを出しています。とくに気になることもないようです。いろんな機能が詰め込まれたプログラムでしたが、うまく解いていると思いました。学ぶところが多い建築でした。

高谷時彦

建築/都市デザイン

After enjoying seeing my favorite works of architecture, I was driving a rent-a-car cautiously on my way to the designated parking building in the central district of Kochi city. I found a policeman on the sidewalk 50 meters away,  calling me to stop. What's happened? He ran to me and said that I commited a traffic violation!

I went through the crossing before the parking building carefully but without a stop before the white line or halt line on the road. I was compelled to pay 7000 yen as a penalty for violating traffic rules and lost the gold drivers licence awarded to me because I had not commited any traffic violations for more than 5 years. 

So many good memories today in Kochi, and one unfogettable lesson.  

Tokihiko Takatani

architect/urban designer

Tokyo Japan

  

 


鏡川沿いのまち並み

2021-04-18 00:16:27 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

高知の中心市街地は、ほぼ江戸時代の町割りの範囲となっています。この鏡川は中心市街地の南の境界となっていますが、城下としては外堀ということになると思います。大きめの邸宅が堤防に沿って並んでいます。

しかし、まちの中心部でも緑が豊かです。山内神社です。

次に土佐市の複合文化施設に向かうため、駐車場に向かいます。

これは、山内家下屋敷の長屋ですが、庇下を歩くという体験が、県立図書館を思い出させました。県立図書館もいい建物です。(障害物がなくて)建物に沿って自然に歩ければ、もっといいのですが。

 

 

高谷時彦

建築/都市デザイン

 


お城から竜馬の記念館へ:まちを歩く

2021-04-17 23:44:39 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

お城から、竜馬の生まれたまちに向かいます。そこに記念館があります。

お城の前には、自治会館。下の方はRC造。上部はCLTの木構造。面白いファサードとなっています。CLTにはいろいろな可能性がありそうです。高知では、木材の使用に積極的な取り組みがなされています。

 

街角の教会。

 

これは何とも潔い住宅です。駐車場と共存させるとこういう形態になるのですね。割り切った考えです。

 

こちらは、古いギャグですが、「笑うまちかど」。確か、南伸坊さんの本のタイトルでしたね。笑っているだけでなく、不思議な造形感覚です。面白い。思わず「くすりっ」となります。

ということで、竜馬の記念館へ。

中庭のある、心地よいスケール感が保たれた建物です。

 

2階も展示室です。

切妻の瓦屋根と、ボールト金属屋根も意外とあうもんですね。

高谷時彦

建築/都市デザイン

 

 


何十年ぶり?高知城

2021-04-17 22:52:44 | 建築まち巡礼四国 Shikoku

高知の朝市。一面にたまねぎの濃い香り。いいですね。

高知城に登ってみます。

 

野中兼山のお屋敷跡。つい立ち止まってしまいます。兼山の事績に興味があるわけではありません。藩のためにと仕事をやりすぎた彼の失脚後、家族は宿毛に蟄居を命じられました。兼山の死後数十年を経て解放される娘の婉を描いたのが小説『婉という女』。感情を丹念にたどりながら、じっくりと読ませる味わい深い小説です。岩下志麻さんが主演した映画を見ていないのが残念です。そして作者の大原富枝は本山町の出身。今、そこで小さな公共施設をつくっています。

追手門。力強いですね。

一つ一つの部材も立派です。

高知城では、城だけでなく城郭の全体構造が残っています。意外と優美な曲線が使われています。

水抜きの樋です。コルビュジエの造形を思い出します。

やはり優美です。もともとこうなんでしょうか。

天守閣の足元には本殿が残っています。この欄間、独特です。やはり優美さを感じます。

格式の高い書院造。

本丸、二の丸、三の丸の構造が分かりやすく模型展示されています。

 

朝市をやっていたあたり、東の方をのぞんでいます。右下に見える、歴史博物館に向かいましょう。

中を見るためではなく、腹ごしらえです。高知はモーニングセットが充実していると聞きましたがその通りでした。お城を見ながら、トーストとコーヒー。

高谷時彦

建築/都市デザイン