人々が、自然的な環境や風土の下で、力を合わせ、時間をかけて作り上げてきたまちの環境を、居心地よく、快適にくらす(住み・働き・憩う)ことのできるものにしていきたいと考えています。成熟の時代になり、歴史文化が感じられ、誇りに思えるまちの環境をつくっていくことは私たち建築設計や都市デザインに関わるものの基本的な使命です。
その心構えのもとで、どのように建築をとらえればよいのかという点については、『地域風景の構想』 にまとめてみました。ここでは都市デザインの可能性や課題、自分がどうかかわっていくのかなどを考えていこうと思います。主に地方都市をイメージしていることは、『地域風景の構想』と同様です。
私たちは建築や道路、あるいは公園、緑地などを含む、まちの物的な側面や、空間としての側面(人が作ったものという意味でBuilt Environmentとも呼びます)から、環境づくりに取り組みます。いうまでもありませんが、経済環境、社会環境あるいは心理的環境などの側面とは常に不可分な活動となります。このことは家(ハウス)という物的環境をつくるときに、家庭(ホーム)や家族、経済条件、暮らす人の価値観などを抜きにして考えられない(極端に言うと、私たちは、建築の設計図を通して、ハウスを設計していると同時にホームを構想しているのです)のと同様といえるでしょう。
とはいえ、私たちがまちの環境を考えるベースは、Built Environmentにあります。その視点から、これまでの都市やまちの作り方について、反省すべきところを挙げてみました。10項目くらいの反省点が次々に浮かびました。どれも当たり前のことですが、忘れてはいけないと思いました。メモしておきます。
その反省点を踏まえて、どういう方向に進むべきなのか、こちらも当たり前のことが多いかもしれませんが、自分の中で押さえておきたいと思い、書き出してみました。
<10の反省>
1.車をあまりにも優先してまちをつくってしまった
2.車の利便性に頼り、住まいの場所、お店や役所、病院などみんなの使う施設を郊外に移しすぎたを郊外に作りすぎた
3.スクラップアンドビルドで、歴史のないまち、らしさが感じられないまちを作ってしまった
4.どこででも手に入る製品で効率よくつくることで、地場の素材、地場の技術を失わせてしまった
5.不燃化、高度利用、高収益をめざしてコンクリートだらけの潤いのないまちにしてしまった
6.お年寄り、幼子、障がい者などを取り残したまちにしてしまった
7.命を維持する水や食料だけでなく建築で使う木材などの素材、また電気、ごみ、下水など生活の基本となるものとの距離のある暮らし方にしてしまった
8.まちを作り、維持することをお役所任せにしてしまった
9.地縁的なつながりを、前近代的なものとして排除し、みんなが集まったり、お祭りをする場所などをどんどんなくしていった
10.人の行為を生産、消費、娯楽というように切り分け、切り分けられた行為に対応した空間を作ろうとしてしまった
<10の心がけたいこと>
反省を踏まえて、何をすればいいのか、どこを向けばいいのか。ここでも10の項目が浮かびました。こちらも、わかりきったことばかりですが、書き留めておきます。
1.歩くことを大切にしたまち、歩けるまちに近づけていきたい
2.人が暮らしたくなるようなまちの環境を作りたい
3.利便性があり、文化的な出来事にあふれるまちとしたい
4.今あるものをきちんと受け継ぎながら、必要な修繕、改修、付加を行うようなまちづくりをしたい
5.暮らしの中に美しさがあり、そのまちらしい文化伝統が見える風景を作っていきたい
6.誰も取り残さない優しい環境を作りたい
7.農・魚・山村とつながり、食物とエネルギー、自然の循環の中にまちの生活を組み込みたい
8.自分たちがまちを作る場に主体的にかかわれるようにしたい
9.消費の場、労働の場という区分だけではなく人間のトータルな存在を受け入れる包容性のある空間を作りたい
10.機能だけでない、暮らしを基盤にした人と人のつながりを育てていきたい
上の項目は今後の議論の進展の中で逐次ブラッシュアップしていきたいと思います。
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