●8月16日、「内川再発見プロジェクトⅡ―明治の芝居小屋から―」が行われ、多くの市民がかつての芝居小屋で映画にまつわるイベントを愉しみました。内川再発見プロジェクトは鶴岡市の中心を流れる内川の魅力を「再発見」することを目的としたイベントで、東北公益文科大学大学院生や学部生、そして多くの市民の協働による実行委員会が主催しています。残念なことに前日15日に行われる予定であった内川での舟遊びは集中豪雨のため中止となりましたが、明治時代若木座という芝居小屋であった鶴岡魚市場を会場にした映画と音楽の催しには、多くの市民が集い楽しい時間を共有しました。
●「いつもそこに映画館があった」というトークイベントでは、山形を拠点に活動するシネマパーソナリティ荒井幸博さんの司会進行で、鶴岡出身の映画監督冨樫森さん、酒田出身の活動弁士佐々木亜希子さん、そして映画とともに育った団塊世代の本学渋川智明教授が映画談義に花を咲かせました。このほか、本学和太鼓ウインドの会の太鼓演奏やギター・オカリナなどによる映画音楽演奏、日本バーテンダー協会のカクテル酒房、冨樫監督作品のポスター展示、手描き映画看板の展示、高谷研究室院生によるまちづくり研究パネルの展示など、多彩なプログラムが歴史的建造物の風格ある空間の中で実行されました。
●内川再発見プロジェクトは公益総合研究所・公益ビジネス研究プロジェクト※の一環として、内川及びその沿道を「賑わい」のある市民の生活空間として再生し、中心部全体の魅力向上に繋げていくことを狙いとしています。しかし、「賑わい」を作り出すとしても、まったく新しいものを他からもってくるというのでは、各地にあるテーマパークと同じで地域に長く定着するものにはなりません。地域に埋もれている過去を発掘し、そしてそこにあるすばらしい歴史文化資産(今回の場合はかつて明治の芝居小屋があった鶴岡魚市場)を市民とともに「再発見」し活用していくことの中に、市街地再生・活性化の確実な道筋があるとわたしたちは考えています。長い時間の中で作り出され人々の記憶のよすがとなってきた歴史文化資産を継承し、それに新しい意味を加えていくという文化的な営為こそ、鶴岡らしいまちづくりの方法です。その一プロセスである内川再発見プロジェクトが、多くの市民の参加を得て成功裏に行われたことをここに報告するものです。
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高谷時彦記 Tokihiko Takatani
※文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業・社会連携研究推進事業