幸福の科学の大川隆法氏が亡くなったそうだ。享年66歳の若さだったとのこと。彼は徳島県出身で東大法学部卒のエリート会社員であったが、有名人の霊言などの書籍を販売、各地に幸福の科学の会館を作り、幸福実現党という政党も作った。しかし、前妻とは離婚し、その子供達とも仲が悪くなり、百歳まで生きるという目標も達成できなかった。彼もまた、学歴社会の中で青年時代を送ったことは、なにか、オウム真理教の教祖であった麻原氏とも共通するような時代背景を持っていたと思われる。
今のこの時代に生きる我々は、自分達の生きている社会背景に少なからず影響されており、敗戦後の貧しい時代から高度経済成長の時代があって、冷戦の終結とバブル経済の崩壊、雇用の流動化、失われた30年の経済停滞期があった。この間、学歴格差社会は着々と進行し、一方では、都市への人口と産業の移動があり、戦後の出生率の高かった第一次ベビーブームがあり、高度経済成長期終盤に第二次ベビーブームがあったが、バブル崩壊の後、若者の就職難の時代があって第三次ベビーブームは、ついに到来しなかった。それが、いよいよ現在に至って、未曽有の少子高齢化の時代に至ることとなった。世界の中で、日本は少子高齢化の進んでいる第一の国となっており、このままでは、人口の減少が原因で衰退した国として後世の歴史に刻まれる可能性が高くなってきた。しかも、政府は異次元の少子化対策をするとは言っているが、過去のエンゼルプランなどの失敗した政策の焼き直しでしかないように見えてならない。どうしようもなくなったら、保守層が嫌っている移民政策に方向転換せざるを得ないような気もするが、その時になって、外国人は衰退しつつある国に移民としてやってきてくれるだろうか。そんな都合の良いようにはならない。
我が国の衰退化の兆候として、治安が急速に悪化しつつある気配がする。ルフィの一味だけではなく、振り込め詐欺から発展して、安易に強盗事件を起こしているグループがおり、通信手段としてSNSを利用して闇バイトを募ったり、富裕な高齢者の裏名簿を利用したりしている。これには、20年前から続く特殊詐欺事件で大本を検挙出来なかった警察捜査の限界があって、犯行グループの組織化、手口の高度化を招いてしまったことが大きい。既に外国に拠点を設けて国際化する犯罪グループに、どう対処するかという問題もある。いずれは、盗聴、潜入捜査、おとり捜査など、かってから議論のある捜査手法も取らざる得なくなるのは目に見えているのではなかろうか。既に、各県警においては、インターネット時代に対応するために、サイバー対策担当部門を集約し、専門捜査員を増員する動きもあるが、いたちごっこになるのような気もする。
私は、全員切腹すべきといわれた高齢者の一員ではあるが、今起こっている各種の問題は、高齢者が全員いなくなれば済むという問題ではなく、我が国の戦前から続く社会構造や国民意識の問題も大きい。終身雇用・縦割り行政については是正の方向にあるようにも見えるが、キャリア官僚制度も含め、受験競争の根本的な是正も必要であるだろう。若者のうち多数を占めるのは、エリート層ではない人々であり、非正規雇用や奨学金の返済に苦しんでいるのも、その人達ではなかろうか。今の時代は、子供の教育費などを考えた時、若者が結婚して子供を設けるという選択肢が困難となっているのではなかろうか。与党も、野党も、国民も、今、我が国は衰亡の危機に直面しているという認識を持って、社会制度も含む抜本的な改革を考えるべきだろう。