ベテラン組の構成は、私より少し若い男性2人、若い女性2人、会長さんの5人です。
女性の1人は前日もこの沢を登ったとのことでした。
『この人も “連チャン” … しかも同じ沢… そんなに沢好き?』
明らかに昨日とは年齢層も気合いも違っていました。
車を止めた場所から5分ほど歩くと目の前に大きな滝が見えてきました。
高さは20mは超えていそうです。
『最初からこんな滝登るの?』
と、半ば慄きながら滝を見上げました。
ベテラン組の人たちもみな滝を見上げ何か話をしています。
滝壺に落ちる水の音が凄すぎて、どんな話をしているのか私の耳には届きません。
『この滝のどこを攻めるかルートを探しているんだ… 』
私の胸の高鳴りはますます大きくなっていきます。
そんな私の想像とは裏腹に、ベテラン組の人たちはしばらく言葉を交わした後、クルッと方向を変え、滝を背にして登山道のある方へ歩いて行ったのでした。
『そうだよなぁー、初心者にこんな滝登らせるわけないよなぁー… 』
私はホッと胸を撫で下ろしました。
沢登りは水の流れる沢の中を遡るものなのですが、全ての滝を登って行く訳ではありません。
登るルートが見つけられなかったり、滝を流れ落ちる水量や登るメンバーの技量によっては、一旦流れから離れて遠回りして滝の上に出ることもあります。
このことを “滝を巻く” と言うのです。
私たちは最初の大きな滝を巻き、滝の上に出たところから沢登りを始めました。
明らかに昨日の沢登りとはペースが違いますし、難易度も違いました。
ベテラン組の人たちは大きな岩を軽々と乗り越え、スイスイと傾斜のある沢を遡って行くのです。
トップは私より1歳若い男性です。
次は、昨日も沢登り研修でこの沢を登った女性、その後ろに私、もう一人の女性、会長と続き、最後はガッチリした体型の男性です。
ベテラン陣にしっかりガードされながら、昨日とはひと味違うランクアップした沢登りを体験させてもらうことになります。
<つづく>