スティーヴ・ハケットのライブCDが届いた。ジェネシスのカタログを再訪するシリーズで、今回は昨年行われた“Foxtrot”再現ツアーのライブ盤だ。“Foxtrot”は72年10月にリリースされたアルバム。この年のジェネシスは、新年から年末まで本国を中心に約220本のライブを行っており(凄っ)、その最中の夏にレコーディングをして秋にリリースするといった考えられないほどのハードワークぶりだ。このアルバムのハイライトはやはり20分にも及ぶ大作“Supper's Ready”だろう。10年前の来日時に、日本で初めて元バンドメンバーの演奏で聴くことができた。でも今回のライブ盤で注目したいのは“Can-Utility and Coastliners”だ。アルバムがリリースされる前からステージで演奏されていた曲だ。ジャケットの海岸線を暗示する歌詞、展開あり変拍子ありのジェネシス・エッセンスてんこ盛りの小品名曲だからだ。他にステージの演出では鳥居が投影されている。昨年の来日時に訪れた神社での印象がヒントになったようだ。時間をみて、映像も楽しみたい。
生誕100周年を迎えたマルセル・マルソーのドキュメンタリー映画を観た。遺志を継承しようとする彼の家族達を通して描かれていた。大戦の最中、意図せずアイデンティティーと向き合うことになり、マルソーとなった。父を亡くしながらもレジスタンスに身を投じ、多くの子ども達を国外に逃し救ったそうだ。証言を知るだけでも彼の背景を印象的に感じられる。同時に、創造のキャラクター『ビップ』を体現していく。性を越えたマイムは、この世のあらゆるものを表現出来ると話していた。大戦後、世界を駆け回り活躍する彼を目の当たりにした家族達の思いが数多く紹介され、それが彼を唯一無二なものにし、同時に家族達の葛藤の深さをも知ることに。彼のマイム作品を詳細に紹介するものではなかったが、描かれた映像の端々からは、観る側に彼についてのヒントを教えてくれているようだった。残念ながら彼の舞台を観る機会はなかったが、表現の後継者達が多く活躍しているので、いつかは公演を見に行ってみたい。戦火があちこちで起きてる今こそ、この映画からマルセル・マルソーの思いをひとりでも多くのひと達が感じ取ることができればいいなぁと思った。
あらためてご冥福をお祈りいたします。
(敬称略)
週末、ピーター・バラカンの『Music Film Festival 2023』に行ってきた。彼が選んだ40数本のミュージック映画を上映する催しだ。見たのは、“Once Were Brothers” 先月亡くなったロビー・ロバートソンが自身のことを語ったドキュメンタリー作品だ。三年前に公開されていたことを知らなかった。若くして始まった音楽活動のなかでも“The Band”前夜から、B・ディランとの出会い、ビッグ・ピンク、ツアーでの出来事等が語られているところが注目だった。劇中のクラプトン、ピーター・ガブリエル、スプリングスティーンらが語る逸話や、上映後行われた萩原健太とのトークショーで、当時実際に観たディランとのステージの話など興味がつきなかった。
(敬称略)